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桐子
2025-02-11 02:01:10
2502文字
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美しい傷13(父水♀️)
「いたぞ!」
「捕まえろ!」
曲がり角の向こうから声がしたかと思うと、男が二人飛び出してきた。手には拳銃を持っている。水木はできるだけ仏壇の部屋から遠くへ離れるために、廊下を駆けだした。
「待て!」
後ろから追ってくる足音が聞こえる。水木は必死に走り、曲がり角を曲がった。しかし、その先は行き止まりだった。
「なんだ、女か」
男たちは拍子抜けしたように銃を下ろしながらそう言うと、じりじりと近づいてきた。水木は後ずさったが、すぐに背中が壁にぶつかってしまった。
「組長の情婦《イロ》か? それにしちゃあ、色気が足りねえな」
「お嬢ちゃん、あんたこの家の跡継ぎのガキ知らねえか? 黄色いちゃんちゃんこを着てる、小学生だとよ」
やはり彼らは鬼太郎を拐う、あるいは殺すつもりなのだ。
「知らねえな」
水木はぐっと顔を上げ、男たちを睨み付けた。こんな奴らに鬼太郎を渡すわけにはいかない。男たちは顔を見合わせて、水木を値踏みするように見た。
「嘘はいけねえなあ」
男の一人が水木の顎を掴んで上向かせた。
「俺は優しいからよ、素直に言えば許してやるぜ」
「だから知らねえって言ってんだろ!」
水木が男の手を振り払おうとすると、もう一人の男が銃を太股へ押し当てた。冷たく硬い感触に、体が強ばった。
「それなら、思い出すまで身体に聞くしかねえよなあ」
男は下卑た笑いを浮かべ、水木の着物の裾に手をかけた。白い太股があらわになり、男の手が太股を撫で回した。
「おい、時間がねえんだぞ」
「わかってるよ」
男は水木の浴衣の帯をほどいた。はらりと浴衣がはだけ、水木は慌てて前をかき合わせた。しかし、男の手がそれを阻む。
「や、やめろ!」
水木は逃れようと暴れた。しかし、もう一人の男が太股に銃口を突きつけた。
バシュッ
空気の抜けるような音と共に、太股に衝撃が走る。
「っ、あ゛、
……
ッ!!」
熱い。骨まで焼き切れそうな痛みに、水木は悲鳴を上げてその場にくずおれた。撃たれたのだと分かったのは、ぬるりとした液体が太股をつたう感触があったからだ。
痛い。痛い。悲鳴を上げてしまいそうなのを、奥歯を噛んで必死に耐えた。もし鬼太郎が水木の悲鳴を聞いて、仏壇から飛び出してきたらどうする。
「おい、あんまり撃つなよ。お楽しみの前に死んじまう」
男は仲間をたしなめると、水木の浴衣の袷を乱暴に開いた。
「うわっ、なんだこりゃ」
男たちの目に映ったのは、左肩から胸元にかけて残る無惨な火傷の跡だった。
「きったねえ傷だなあ。せっかくいい身体してるのに、もったいねえ」
「こんなん、金もらってもヤりたくねぇわ。まず勃たねえよ」
男たちがげらげらと笑い声を上げる。
これは父と母が水木を守ってくれた証だ。何も知らずに馬鹿にされ、悔しさと痛みで涙がにじんだ。でも、こんな男たちの前で死んでも泣きたくない。
「
……
なんだ、その目は」
二人のうち一人が、水木の顔を見て笑うのをやめた。
「傷もんのくせに一丁前に抵抗しようってか? いいぜ、たっぷり可愛がってやる」
男はそう言うと、革靴で水木の胸を踏みつけた。
「がッ、あ゛
……
っ」
胸を圧迫され、上手く息ができなくなる。男はさらに体重をかけるように水木の胸に足を乗せたまま、ぐりぐりと踏みにじった。
「っ、ぐぅ
……
ッ!」
「ほら、泣いてみろって。可愛く泣けたら、チンポぶちこんでやるぜ」
もう一人の男が、ズボンの前をくつろげ始める。冗談じゃない。こんな奴らに犯されるなんて死んだ方がましだ。しかし、抵抗しようにも太股を撃たれた体はまともに動かない。
ーーーーどうせ初めてでもないし、抵抗するなんて無意味だ。今更こんな奴らに犯されるくらい、どうってことないじゃないか。
水木は抵抗を諦め、目を閉じた。太股はそこが心臓であるように、どくどくと脈打っている。段々指先が冷えて、頭がぼんやりとしてきた。
「お、いいねえ。女は素直なのが一番だぜ」
男の手が水木の太股を撫で回した。その感触にぞっとしたが、振りほどく気力はない。水木は無感情に、自らの足を開かせようとする男を見上げた。
「ヤったら殺しとけ。俺はあっちを見てくる」
「おう」
遠くから聞こえてきたやりとりに、水木はハッとした。駄目だ、行かせてはならない。あちらには鬼太郎がいる。
水木は渾身の力を振り絞って、腹筋を使い跳ね起きると、自分の上に覆い被さる男に向かって頭突きをした。
「ぐあっ!」
男が痛みで悶え、水木の上から飛び退いた。その隙に起き上がろうとしたが、太股に激痛が走った。
「このアマ
……
!」
少し離れた所にいた男は、水木に銃を向けると、再び引き金を引いた。バシュッという音がして、今度は腹に激痛が走る。
「ああ゛っ
……
!!」
今度は声を殺すことができなかった。水木は悲鳴を上げてのたうった。撃たれた腹から熱い液体がどくどくと流れ出る感触がある。
「てめぇ」
頭突きをされた男は鼻血を流しながら、血走った目で水木を見た。
「優しくしてやりゃあ調子に乗りやがって!」
バチン、と頬を張られた。口の中が切れたらしく、血の味がする。それでも水木は男たちの気をこちらへ向けるため、荒い呼吸の合間に言った。
「無能だな。こんな傷物の女一人に手こずって、さすがは落ち目の裏鬼道会だ」
掠れた声ではあったが、水木ははっきりと男たちに告げた。
「なんだと!」
逆上した男は、再び水木を殴った。狙い通り、完全に頭に血が昇っているようだ。鬼太郎を殺すより先に、水木の始末をつけようと躍起になっている。
1秒でも2秒でもいい、こちらへ意識を向けさせるのだ。それだけ鬼太郎は長く生きていられる。
「ぶち殺す! 殺したあとに犯してやる!!」
「おい、いい加減に
……
」
その時だった。パァン! という破裂音とともに、水木に銃を向けていた男の一人が吹き飛んだ。
「ぐあっ!」
「誰だ!」
もう一人も慌てて銃を構えたが、水木から視線を外して背後の廊下へ向けた瞬間、腕を撃たれて廊下に倒れた。
「そこまでじゃ」
そこにいたのは、会合へ行ったはずの親分だった。
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