lifelongyouth
2024-06-23 03:13:38
2737文字
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光が死んだ夏5巻感想


ヒカルに襲われ、ああ自分は今まで”光の姿”に随分助けられていたんだなと気づくよしきのところ、我々はどんな中身だろうが慣れ親しんだものの見た目をしていれば懐に入れてしまいがちだし、中身が変わらずとも醜く恐ろしい見た目になった途端に怖いし拒絶したくなるのだよなと思い序盤から転げ回りたくなった

見た目って外側の部分ではあるのだが、漫画で言うシリーズものの表紙、好きなお菓子のパッケージなどのようにそれも含めて好きな部分、知っている部分なわけで、それが損なわれた瞬間に「これは自分が好きで親しいと感じている相手ではない」と認識してしまう自分がいるのは分かる 分かるんだけどなんか切ないな……

それが悪いことではないのだが、同時に慣れ親しんだものに変化が加わってどこかの段階で「これはわたしの知ってる〇〇じゃない」と思ってしまう自分に冷たさなんかも感じてしまいいたたまれない気持ちになる  否応なしに。

大事なのは中身!!!とよく言うが、中身と向き合うためにはまず外身がコミュニケーションできる状態であるという前提が保たれていることが大事なんだよなというのを改めて思い知らされたシーンだった。


ちょうど上記場面を目撃してしまった朝子に正体がバレたヒカルが、光の死を悼む彼女の姿を見て「光はこうやって誰かに悲しんでもらうべきだったんだ、自分がいる限り誰もこうやって悲しまないんだ」と気づくところ、ヒカルがいることで”弔われず悲しまれない光”の側面をみつけるのは体をシェアしてるヒカルというのがなんとも悲しかったな。

ヒカルは光のことを邪険に扱ってるわけじゃないし感じ方が基本人に寄り添う方面にはたらく子だなと思ってるので余計しんどい部分がありそう

あと光がヒカルではないと分かっているのが(一部例外を除き)よしきだけということで、よしきだけが光の死に対する悲しみを抱えこむ状態になっているということに思い至る今回のヒカルの気づき、ヒカル→よしきへの大切さがすごく伝わってきた。

もし自分がいなければ、光の死に対する悲しみはよしきだけじゃなくて仲良しのみんなでシェアして、一緒に抱えることによって今よりは苦しくなかったんじゃないか?という洞察があまりに思いやりすぎて……

寂しいシーンではあるのだが、光じゃないヒカルもよしきのことが大好きなのだとわかるシーンだった



あとよしきが珍しく父としゃべって「父さんは光の父親が死んだ時どう思った?」と聞いて「この村の良いところが一つも無くなったと思った」と返されてウワ〜いっしょだ……と思うところ、父親もよしきもかわいくてシリアスシーンなのに思わずわらってしまった

「そのひとがいることが自分の住んでるところで唯一良いところ」と思える相手に出会えること、その感情を抱けることの両方に祝福を贈りたい すてきだ……

上記やり取りをへて自分は父親に似てるんだと嫌になるよしきの心の中を読んだように父親が「お前は俺に似てないよ、父さんより立派な人間になるよ」と続けるのも愛があってよかった

ふだんそんなにしゃべらなくても子どもの未来に対して明るい言葉をかけられる親、親じゃなくてもなんでも良いけどそういう大人になりたいもんだよなあ



そして、最初に挙げたような外側の違いだけじゃなくて、中身の違いを強調する話が後半海辺のシーンで出てくるのもバランスが良くてめちゃくちゃすきだった

・光はこうだけど俺(ヒカル)はこう
・考えてることや好きなものは全然違うけど、光関係なく自分はよしきのことが好き
・光がよしきを好きだからじゃなくて、自分が0から抱いた自分だけのよしきを大切に思っているという告白 

ヒカルがよしきに抱いてるのは友情でも恋愛でもない別の気持ちかもしれないけど、よしきを大切に思っていますよというのがすごく伝わってきた

ヒカル→よしきへの感情、友情でも恋愛でも、全く別の違う関係性でも、なんの言葉で示されても良かったのだが、このシーンに関しては”独立した気持ち”、既存のものとは別個のそれという意味でもこの関係性、というのが確定しない状態でシェアされたのが気持ちのオリジナル性を強調しているようでよかったな〜と


俺はお前が好きなんだよ〜という話をしたあとに、これ以上迷惑かけないためにも自分は山(もといた場所)に戻るんだ、何だそれ嫌だよやめろ、でもそれしか方法ないじゃん……と涙目になる2人のところに「何かを犠牲にすれば何かを助けられるというのは思い込み甚だしいね」と介入してくる田中ウケた 笑って入ってくるところじゃない でもそれはそう

この村では一度特例で叶った事案はあるものの、首を捧げることによって自分の望んだものを手に入れようとしてうまくいかなかった過去もあるわけで、それを中盤で昔話よろしく描写した後にラストでこれをぶっ込んでくるの、輝かしすぎるだろ 因習キャンセル、ぜひ前向きにしていきたい

こういう、「これしか方法ないから……」というシーンで全く別の考えを持った人間が登場する展開が大好物すぎるのよな まだまだ話が続くようだし次巻以降の因習キャンセル展開に期待したい



巻末の特別編で図書館へ行ったよしきとヒカルのシーンで、童話を見て人間の気持ちを学ぼうとするヒカルに対して「前は自分がヒカルに何でも自分が教えてやらないとと思っていた自分」を振り返るよしきはめちゃくちゃ自戒になった

「怪物を人間にあてはめるんじゃなくて、怪物は怪物、人間は人間のまま、何が違くて何が同じなのかちゃんと知らないと」と思うヒカルに対して、よしきは心の中で「ヒカルが未熟だと思って人間の価値観に当てはめようとしていた自分は傲慢だ」と反省し、おれももっとヒカルのこと知らないとな〜〜ってなるよしき

こういう人とのやりとりで自分の無意識な傲慢さであったり、行動の振り返りや修正をできるのも、そういう相手がいるのもありがたいよなぁ。

この話はヒカルが人間たちに馴染もうと頑張る側面がたくさん出てくる話なのでつい向こうが馴染めばいい、馴染ませようと思ってしまいがちなのだけど、合わせる・同じにする以外でも相手と共存する方法はいくらでもあるわけで。

その第一歩がヒカルをヒカルとして知ることなんだというよしきの視点がすごく勉強になったし大事にしたいな〜と再認識させられた

この話はヒカルもよしきもお互いのことが大事ゆえに大事にする仕方や方法をたえず更新していく話でめちゃくちゃ学びになるんだよなあ この作品を通して養われたり自覚する自分、再認識することがたくさんありありがたい