lifelongyouth
2024-03-07 23:30:49
3062文字
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望月の烏感想①

とりあえず①としたが②以降はあるかもしれないしないかもしれない

望月の烏の雪斎、厄介ツンデレおじさんみたいで可愛いなと思いながら読んでいた

澄生との問答のシーン、内容云々以前にほかの烏が相手だったらぜったいこんな風に取り合わないでしょと半笑いになってしまった

澄生とお話しできてよかったね……

話が平行線でかみ合わないのは会話する前からわかっていたことで、それでも時間を割いて対話するの、まぎれもなく「話したい」という雪斎の意思だよなと。

しかもだいたいそういう雪斎のことは治真がしっかり見抜いてるんですよね

『楽園の烏』の時も、治真は自分からは澄生に声をかけに行かない雪斎をちゃんと理解しており、声を掛けるべきまっとうな理由を用意してやり、雪斎がそれに「しかたなく乗ってやる」の体で声かけができるよう場を調整してくれるという 治真はほんとうにシゴデキマンだね



それと、望月でも雪斎の大事な人の守り方は変わってないんだな〜あいかわらずだな〜〜と感じた

澄生のことを側室にと雪斎が言い出したのがあまりに想定通りすぎて生暖かい笑いが漏れてしまった 籠の鳥方式の守り方、いまも変わってないんだねえ

奈月彦にも危険だし傷ついてほしくなくて、真の金烏の座を降りてほしいと言ったし、

紫苑の宮にも一緒に逃げてほしいと言ったし、

今回もそれ相応の処罰を与えなければいけないし、下手したら殺すことも視野に入れなければいけない場面で、ぜったいに殺したくないので「凪彦や、あの子を側室にしておくれ」だし「あの子の幸せなどどうでもいい(彼女を守ることより大切なことなどない)」なんだなと。

澄生の幸せなんてどうでもいいって意味ではなく、「あの子の思い描いている、あの子が考える幸せなどどうでも良いので、頼むから自分が考えているようなしあわせの中に閉じこめて守らせてくれ」でしかないからな。めちゃ甘待遇・特別扱いでしかない。


あと凪彦のことも雪斎なりに、澄生とはべつの籠を用意して安全な場所に保管しようとしているのだなとわかったのも良かった

雪斎から見た凪彦、めっちゃやりづらいだろうな……なまじ奈月彦に考え方や優しさが似てる分よけいに関わりたくないし、腹が立つみたいなところありそう

赤の他人読者の私ですら「あ〜奈月彦に似てんな」と思うわけなので、リアルに話してる雪斎がそう思わないわけがないんだよな。

奈月彦の時はめちゃくちゃ近づきすぎて、好きすぎてダメになってしまったようなところもあるので、今回の主には丁寧に接すれど距離は取ってくスタイルなのかなと思った。

望月を読むまでは、追憶で奈月彦が死んで、雪哉のやることなすことに一緒に責任をとってくれたり、雪哉の行為を私欲ではなく「やりたくないけどやった」みたいなことを言ってくれる存在がいなくなってしまいさてどうしたものかと萎れていたけれど、抱っこ事件や悪い噂を聞いても凪彦が、

「私は、雪斎は山内を心より大切にしているものと知っている。私が雪斎の敵になることはないよ」

な〜んて言ってくれちゃうものだから世の中捨てたもんじゃないなァ!?!!?と元気を取り戻した 

凪彦、めちゃくちゃバランサー的な考えを持った子なので雪斎に都合のいい君主になるかどうかは分からんけど、少なくとも雪斎にとっても思いやりを持った君主であることに変わりはないなと知れてよかった

凪彦、生まれてきてくれてありがとうね




いやしかし、「澄生はこういう子なのになんで分からないんだよ!!」と奈月彦みたいな考えをしてる小僧に言われ「澄生のことはお前よりよく知っとるわ!!!!」と足払いする雪斎、大人気なくてめちゃくちゃよかった

澄生マウントが耐え難いという以上に凪彦に言われるのがたまらなかったのもあると思う

雪斎、図星つかれたり相手を押さえつけようとする時、ムキになってる時はタメ口混ざんの、余裕のなさが出てていいよね 

あと、

――そなたはもしや、兄上ともう一度お会いしたいと思っているのか?」
「真の金烏の記憶があろうがなかろうが、もはやどうでもいい。必要なのは、山内の綻びを繕う力のほうだ」

の会話も良かったよね。
雪斎が素直に「はいそうです。私は奈月彦に会いたくて会いたくてしかたありません」なんて言うはずがないし、紫苑の宮について話している時も一瞬タメ口になってるようにここでも敬語抜けてるので、ああ彼の中で「とてもじゃないが平静を装っていられない」部分なのかもなと思った

どうでも良いはずないんだよ。
雪斎は2度も”真の金烏”に主を奪われているわけなので。だってさ、きっと山内の誰よりも”真の金烏”という存在に苦しめられ傷つけられたのが雪斎だからさ……

『烏は主を選ばない』で自分を欲しいと思うなら、真の金烏という立場を捨ててくれと言って自分ではなく真の金烏を選ばれ、

『追憶の烏』では奈月彦を失うだけではなく、自分はいつの間にか奈月彦ではなく真の金烏の力に首を垂れることになってしまったのだと気づかされる。

これでなんとも思ってないしどうでもいいは嘘なんですよ。


あと表向き雪斎に封じ込められた凪彦、みたいな感じだったけど、蛍が明鏡院とつながっていて、なおかつ澄生も長束とつながっていることを思えば、舞台と役者がととのえば凪彦が表立って手腕を振るう機会がありそうだとうかがえるラストにまとまっていてよかった



それと戸籍について話してる「あの頃から信用されていなかったのだ」のシーン。あからさますぎて私は逆に次巻以降の重要ポイントなんじゃないの?と思ってしまった

「信頼」「信用」というワードにほかの選択肢の存在をかき消されてしまってはいないか?
そこに収まるはずだった者や目的が他に存在するのではないか?

追憶遺言シーンも選ぶ選ばない、信頼されてない、奈月彦自身を見ていなかった の下りによって遺言の意図がスルーされてしまったように感じたので……

これは個人的な意見だが、雪哉が「信頼」「信用」で片付けようとしたことは実は全く別の意図を持った重要なポイントたちなのではと考えている。

『楽園の烏』でも、雪斎は「何をおいても、安原はじめの信頼を勝ち取るのだ」と頼斗に命じた際、はじめ自身からの信頼を勝ち取れば良いと考え、

「人の真価は、困難な時にこそ現れるもんだ。困難の中で、それを仕方ないと諦めずに、ちょっとでも楽園に近付けようとする、そういう輝かしいものを俺は見たいんだよ」

と考えるはじめくんの望むものについて考えを巡らせ戦略を練ることはしなかった。信頼を得るために相手に沿った問題の解き方(意図の解釈)をしないから、論点がずれる。

雪斎は他の人の意見に左右されることなく、自分が正しいと思ったことに盲目的になるからこそ成果を出せている部分があり、それが彼の事業の成功を下支えしている。

盲目的というのは、それしか見えない、ではなく「それだけを見る」ことに集中できるという意味で、決して悪い意味ではない。むしろすばらしい点でもあると思う。

だがしかし、盲目的であるからこそ、”見えていない部分”というのを読者側が強く意識しなければならないなと感じている。これは別に雪斎に限ったことではないが。

これから先どのような展開が待ち受けているかは分からんけれども、場整えはおそらく今巻で終わったはずなので、その辺も次巻以降でわかっていけばいいなと思っている。