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yossy
2025-02-09 23:20:17
2341文字
Public
自創作
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都会の海、カトレアの花束
月城さん誕生日記念SS
日が暮れる前の夕刻。立春を過ぎて段々と明るい時間が長くなってくる。
それでも凍えるような風が強く吹き抜け、いくら着込んだとしても顔に当たる風が冷たくて体温は徐々に下がっていく。
大海君から誘いを受け、最近オープンしたというレストランの前で待ち合わせをする。
丁度二人とも休みだったし、誕生日のお祝いをしたいからということだった。
先に入って待っていてもいいわよね。店内に入ろうと歩を進めようとすると走ってくる大海君が見えた。
「すみません、準備に手間取ってしまって」
「凍えるところだったわよ」
「本当にすみません
…
」
「ほら、早く入るわよ」
慌てる大海君を引っ張るように先に入店する。
白と青を基調としたデザインの地中海レストラン。綺麗な海の写真や絵画、貝殻の蝋燭、ところどころに海に関するインテリアが置かれており、都会にいながら海辺のレストランに来たような気持ちになる。
室内は暖かく室温が調整され、強張った体が段々と解れる。
窓際の少し奥まった席に案内される。
休日とはいえ夕食時より早く入店したからか、店内はそれほど混み合っておらず、穏やかなBGMが耳に入ってくる。
席に着くとメニュー表が置かれており、開くと沢山の料理名が並んでいる。
「このお店、メニューの数が豊富で、おまかせコースもあるんですけど、どれにしましょうか?」
「そうね
…
」
じっくり悩んでからベルを押して店員に料理を注文する。前菜とメインの料理、おすすめのワインと食後のスイーツを店員に告げると、メニュー表を回収して下がっていく。
「なんか、こういったレストラン慣れてないので、緊張しますね
…
」
「そんなに緊張しないで、リラックスしていいのよ」
「そうですね
…
ちょっと深呼吸しますね」
すーはーと大きく息を吸う大海君に、少し頬を緩める。
暫くすると前菜が運ばれてくる。
私はフグとホタテのカルパッチョ、大海君はアジのブルスケッタがテーブルに並ぶ。
白ワインもグラスに注がれ、テーブルが賑やかになる。
グラスを持って二人で小さく掲げる。
「お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」
「じゃあ、乾杯」
「乾杯」
一口飲むとフルーツの甘みと香りを感じる。滑らかな口当たりに息が抜ける。
「美味しいわね」
「はい、飲みやすいですね」
「それじゃあいただきましょうか」
「はい、いただきます」
カルパッチョは新鮮で歯切れも良く、シンプルながら満足感が高い。
「月城さん、ブルスケッタも美味しいので一口どうですか?」
「じゃあ、いただくわ」
一つ受け取り口に運ぶ。カリッとしたバケットとにんにくとアジの旨みが口いっぱいに広がる。食感が楽しく、ついついお酒が進んでしまう。
「美味しいわね」
「はい、これならいくつでも食べられそうです」
「まだ前菜よ?」
「そ、そうでした
…
」
あっという間に完食すると、メインが運ばれてくる。
金目鯛のアクアパッツァと魚介のパエリア。ふわりと潮の香りが鼻を抜けて、食欲が自然と湧いてくる。
食べやすいように切り分け、口に運ぶ。シンプルながら金目鯛の凝縮された旨味が口の中で弾ける。あさりやトマトで食感も楽しく、一緒に運ばれてきたバケットとも相性がいい。
大海君も美味しそうにパエリアを頬張っていた。
メインも食べ終え、ゆっくりとワインを口にする。大海君が店員に声をかけ、デザートのお願いをする。すこしそわそわとした素振りを見せる。
「何?」
「え!いや、なんでもないですよ」
「白白しいわよ」
「あー
…
顔に出てましたか?」
「髪を触ったり、周りを見たりしているから。落ち着きないように見えたの」
「
…
やっぱりサプライズ向いてないかもしれないですね」
すると笑顔の店員がやってくる。
…
手元に大きな花束が抱えて。
大海君が受け取って、近づいてくる。
「改めて、お誕生日おめでとうございます」
「
…
ありがとう」
周りのお客さんから拍手を送られる。少し照れくさい。
お店のご好意で、そばに花束を置く場所を確保してもらい、そこに置かせてもらう。
白やピンク、紫を基調とした色とりどりの花束の中に、フリルのような花弁に包まれた見慣れない花を見つける。
「お花屋さんと相談をして、今日の記念になる花束を作ってもらったんです。
カトレアというお花で、香りも良かったのでメインにしてみたんです」
確かに上品な香りが漂ってくる。
「初めて、こういうサプライズをしたので
…
緊張したぁ
…
」
「もう少しポーカーフェイスを覚えなさい」
「すいません、次はもう少し驚いてもらえるよう頑張りますね」
「でも、嬉しかったわ。ありがとう」
「どういたしまして」
二人で微笑む。
その後食後のデザートのティラミスを楽しんでからレストランを後にした。
外を出るとすっかり日も暮れ、街灯に照らされた街が目に入る。少し酔いが回っているのかふわふわとした感覚がする。
「ご馳走様」
「月城さんのお口に合ったなら何よりです」
強い風が吹き抜け、体を震わせる。
「タクシー呼びますね」
「送らないの?」
「明日早いですし、月城さんのお宅に無理に上がるのは嫌なので」
「意気地なし」
「意気地なし!?月城さんが嫌がることはしたくないだけですよ」
大海君がスマホを操作するとあっという間にタクシーが到着し、乗るように促される。
「それじゃ、おやすみなさい」
「
…
おやすみなさい」
車のドアが閉まり、発車する。
家に到着し、支払いをしようとすると配車時に大海君の支払いになっていたようで、払う間も無く車が去ってしまった。
…
こういうところはスマートなのよね。
花束に顔を埋めると石鹸のような優しい香りが広がった。
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