Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ぽふむん
2025-02-08 22:19:50
3617文字
Public
ワンドロ
Clear cache
私お姉ちゃんだから
#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「ライバル」をお借りしてます。
カナエ姉さんのことをいろいろライバル視していて、幼い時は色々やらかしていたしのぶちゃん。
カナエ姉さんは、その度にぐっと我慢を強いられているうちにいつの間にやら「大人に求められた理想のお姉ちゃん」を演じていました。ひょんなことからしまい込んだ心の不満が出てしまいます。
その心の毒を引きずり出したのは当然……
自分でこんな話を出力しておきながら、考え込んでしまいまぁまぁ時間かかりました💦
漆黒の闇夜の中、鋭い爪がしのぶの肩をかすめた。
かろうじて避けたから、肉を切られることは無かった。
白いベスト状の羽織だけが破けたのみ。
持っていた手提灯の火は消えてしまったので、辺りは真っ暗だ。
必死で目を凝らし、敵の鬼の場所を確認することに努めた。
気配を感じなくては
……
そこだ!
しのぶは隠し持っていた、毒を塗り込めたナイフを投げた。
当たった。
(どうだ)
呻き声が聞こえた。
この毒は鬼の動きを鈍らせる程度のものに過ぎない。
でも十分だ。
そうして時間さえ稼げばいい。
時間さえ稼げば、闇に目が慣れる。
もう少し有利に戦える。
応援も来るはずだ。
目論み通り。闇に少しづつ目が慣れ、鬼が視認出来るようになってきた。
腰まで伸ばした黒髪の女
まだ鬼にされたばかりで、人は食っていない。
雑魚
……
と言いたいが、そんな雑魚鬼にしては早い。
強い。
しのぶを残し、数名いた他の隊士を殲滅するほどに。
なぜ?
いや、考えている時間は無い。
雑魚は雑魚だ。
しのぶが身構えたその時
ぐぁああああ!
女の鬼は雄叫びをあげた。
飢餓状態で正気を失っているのだろう。
倒れている隊士の遺骸にかじりつく姿がうっすら見えた。
まだ正式に隊士となり日が浅いとは言え、数えきれない程見た光景だ。
「やめなさい!」
しのぶは叫ぶが、鬼の女は歯牙にもかけず、隊士を噛みちぎった。
動けなかった。
それは、闇に慣れた目が信じたくない光景を映したから。
鬼の女が纏うは翅脈柄の羽織
黒い隊服
隊士を食らっているのは
……
警らしていたしのぶ一行に襲いかかり、しのぶ以外全滅させたのは
「うそよ
……
そんな
……
嘘。ね
……
えさ
……
」
鬼の女は
……
胡蝶カナエ
「う
……
そよ」
そばの木の枝に人が腰掛けていた。
人
……
じゃない
人ならば、この光景に怯えるはず。
なのに、平然としていたから。
よく見れば、その木は一本丸々凍りついている。
冷たいはずなのに、そこに座っていた。
今まで唸り声しかあげなかった「カナエ」が口を開く。
信じられない言葉を吐く
「ワタシは
……
あなたが
……
大嫌い
……
しのぶ
……
あなたが
……
だい
……
嫌い」
(え
……
な
……
に?ねえさ
……
ん)
「大事にしてた着物を汚した
……
お気に入りだったお人形の腕を引きちぎり
……
」
なんのことか一瞬理解出来なかったが、思い出した。
幼少期のことだ。
新しく仕立ててもらったという着物を自分も着てみたくて。
お姉さんっぽい着物が羨ましくて。
たった三つしか変わらないのに お姉さんらしい姉を真似すれば、自分もお姉さんになれると思ったから。
ほんの少し引っ張っただけ。
人形も、貸して欲しくて
……
黙って拝借したのは悪かったかもしれないが。
取り合いになり
あんまり力ずくで奪い取ろうとするものだから
取れた
不可抗力じゃないか。
「な
……
そんな小さな時の話。母さんが仲裁してくれて
……
ごめんねで話もついた
……
」
しのぶは戸惑った。
ほんの些細な姉妹喧嘩。
毎回母さんが仲裁してくれて、姉さんが謝ってくれて。全部なんでも譲ってくれたじゃないか。
「そうよ
……
私はぜーんぜん納得してなかったのに
……
なんでも『お姉ちゃんだから許してあげなさい』と言いくるめられて
……
お姉ちゃんだから
……
しのぶは小さいから
……
お姉ちゃんだから」
樹上から声がする。
「鬼化が進むとね 、人の時しまい込んでいた負の記憶が拡大する子がいるんだぁ。その子もそういうタイプみたいだね」
そう言って笑っている。
この男
……
この男がカナエを鬼にしたんだ。
しのぶは樹上を見上げるが、人影以外見えない。
顔が視認出来ない。
カナエは続ける。
「いいな、いいな、いいなぁ!!しのぶはなーんでも、何をしても許される。小さいからって」
ぐるる
唸りながらも、しのぶを襲おうとしない。
おそらく人としての理性と、鬼の血が戦っているのだろう。
男の笑い声が聞こえる。
「柱は抵抗力が本当に高いね。興味深い」
腹が立つ。
本当に鬼と言うやつは腹が立つ。
歯噛みするしのぶに、カナエは唸り声混じりに語る。
「なんでよぉ
……
私はお姉ちゃんだから!お姉ちゃんだから
……
なーんでも我慢しなくちゃ。いつかあなたに持たせる予定の嫁入り道具!持参金!女手一つで!
こんな稼業をして稼いでるのに!なのにあんたはあんなゴミみたいに!」
何を言って
……
呆然と立ち尽くすしのぶの脳裏に浮かぶ光景
そうだ
カナヲの事だ
「あれはカナヲを
……
」
「あれっぽっちでぇ?鳥のヒナか座敷猫でも買ったつもり?」
そうだ
……
姉さんはいつものように、ふわふわ笑ってたけど
あとからみんなに窘められた。
人買いに売られた娘を買い取るには、あれでは少なすぎと。
確かに気の毒な光景だっただろう。
見るに堪えない光景で、思わず手が出てしまったことは否定はしない。
だが、人買いに娘を売る親は、とんでもない額の借金をしている。
買い手は、それを肩代わりして払うのみならず、ある程度の生活資金を親に払っている。
そして、仲介業者である人買いの取り分として渡す金。
今後のカナヲのための教育費、稼ぐであろう金も見込んでいたはず。
それをあんなはした金で
はした金と言うのは失礼か。
あれはしのぶの為に、必死で貯めていた金の一部なのだから。
人の為に使うほどの余剰金なんてない。
まだいくらかかるか見当もつかない。
でも、いつか嫁に出るであろうしのぶが、親無しと侮られないようにある程度の持参金は持たせたい。
しのぶに惨めな思いをさせない為に使っていたもの。
そう諭されたが、しのぶは理解しなかった。
出来なかった。
「本当はね、コブ付きでもいいから嫁に来てくれという殿方もいた。
でもあんたが壊した。だから
……
鬼殺隊に入ったのよ」
鬼殺隊入隊前の事??
「せっかくしのぶを一緒に育ててくれる 。しのぶがお嫁に行くまで面倒見てくれるって言ってくれていたのに」
(アレだ
……
父さん母さんが死んで
……
姉さんまで奪われると思ったから)
両親の四十九日が済んだばかりなのに、カナエに声をかけてきた男がいた。
(あれは守ってあげたんじゃない。私達はずうっと一緒)
相手の男に飛び蹴りを食らわせ、前歯を折っただけ。
眼鏡を割っただけ。
さらに、馬乗りになりやたらめったら殴りつけてやっただけ。
泥団子を口にねじ込んだだけじゃないか
なのに、相手の母親が激怒して
……
「何言って
……
あんな母親依存の
……
」
そこまでしのぶが言った時
ぐああああああ
凄まじい雄叫びと共にカナエだったはずの鬼女はしのぶに飛び掛り馬乗りになった。
そこでカナエの動きが止まる。
「だ
……
め
……
食ってはダメ
……
し
……
の
……
ぶ
……
手のかかる子
……
だけど、私はお姉ちゃん」
涼やかな声が樹上からする
「やさしいねぇ。ちゃぁんと「お姉ちゃん」の役目を果たそうとして」
嘲笑うような、甘いアルトの声。
しのぶはその声の主を睨みつけ、そして釘付けになる。
なんだろう
キレイ
体が熱い。
どくん
……
どくん
心臓が早鐘のように鳴る。
憎い
あの優しかった姉をこんなふうにしたあの鬼が
憎い
「ほら、肉親の肉は栄養が
……
半分とは言え肉親だよ」
男の言葉に耳を疑う。
どういう??
「たすけ
……
ころし
……
て。嫌だ
……
しのぶを殺したくない
……
しのぶを食う
……
前に
……
して
……
ころして」
必死に鬼化に抗うカナエの瞳から、大粒の涙があふれ しのぶの頬に落ちる
「かわいそうに
……
仕方ない。面白い観察対象だったけど二人揃って救済してあげる
……
と
……
あっやばい。もう日が昇る。じゃぁね」
食べそこなっちゃった。そう呟きながら男は去っていく。
そして
ぎゃああああああああ
日が昇る
希望の光であり
姉を失った光。
カナエは灰となり 残ったのは髪飾りと着ていた隊服と羽織。
そして
ほんの二、三本引き抜いて懐に隠した遺髪のみ。
後日
死亡届けの為取り寄せた戸籍で
しのぶの母は後妻だったことを知る。
カナエを産んだと同時に前妻は亡くなり
……
そういう事か。
(姉さんが死ななければ
……
こんな事知らなくて済んだのに)
知りたくないことを知ってしまった。
この時代、こんなことはままあることと知っていたのに、どこか他人事と思っていた
お前がいなければ、こんな事知らずに済んだ。
(私は姉さん程強くは無い)
こんな事受け入れるほど
……
墓の中に持っていくほど強くない。
知らなくていい真実を見せつけた鬼。
お前だけは
私が殺す
私の弱さという名の毒
受け止めろ
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内