三毛田
2025-02-08 22:12:50
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97 097. 走り出すこの想い

96日目
自覚したら、止まれない

97 097. 走り出すこの想い
 好きだって自覚したのは、彼が隣のクラスの女子に告白されているのを見てしまったから。
 それまであったのは、漠然とした好き。多分、友人としての〝好き〟よりもちょっとだけ大きなもの。
 彼が親友と言って憚らないのは、俺だけという仄かな優越感。
 それだけだったはずなのに。
「丹恒、穹いた? 丹恒?」
 呆然と彼らを見つめることしか出来ない俺を、三月は心配そうな声で呼ぶ。
「丹恒!」
 穹は、こちらに気づくと笑顔になり。そして、相手に断りを入れると嬉しそうに俺の元へ来て。
 それを嬉しく思う反面、ふと気づいた彼に告白をしていたらしき相手から向けられる、恨みがましい表情。
 そして睨みつけられ、少しだけ怖くなった。
「穹。用事はいいの?」
「終えた。というか、断ってもしつこかったから、切り上げた。二人の姿が見えたから」
「恨まれても知らないよ?」
「断ってもしつこいほうが悪いだろ? それに」
「それに?」
 不思議そうに穹の言葉を繰り返す三月。
「丹恒より優先させるものなんて、今の俺にはないからな!」
「ちょっと。たまには、ウチとの用事を優先してくれたっていいじゃん!」
「丹恒が最優先。越えられない壁、なの。だから」
「もう!」
 むすっと頬を膨らませる三月のそれを、笑いながら指先でつついて。
「でも、今日はゲーセン寄りたいんだ」
「どうして?」
「銀河打者の新しいグッズが、今日入荷なんだ! お兄さんに教えてもらった」
 ニンマリ笑って、俺の手を取る。
「丹恒は、付き合ってくれるよな?」
「ああ。どうせ取れなくて、俺に泣きついてくるんだ。なら、一緒に行った方が早い」
「たんこ~?」
 むすっとしたように頬を膨らませる。すると今度は、三月がその頬をつついて。
 それから三人で連れ立って、最寄りのゲームセンターへ。
「やった! 丹恒、ありがとう」
「それはよかった」
 穹が小銭を入れ、俺が操作。そして、二回で取れた抱きかかえるくらい大きなぬいぐるみ。よほど嬉しいのか袋に入れず、頬ずりして。
「丹恒、ウチ、お菓子欲しい」
 と三月に言われ、仕方なくお菓子の機械も操作。
「ありがと!」
 彼女もまた嬉しそうにするので、こちらも嬉しくなる。
 そして帰路につき、三月と別れてそれから穹との分かれ道。
「丹恒」
「どうした」
「俺、お前が好きだよ」
……
「じゃ、また明日」
 何ともないような表情で、手を振って。
 その姿が見えなくなってから、走り出す。
 好き。穹が、俺を好き。
 頬が熱い。
 俺も好きだと、返せなかった。