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吾妻
2025-02-08 16:11:54
2035文字
Public
アークナイツ
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with YOU
テキ博♀。お誕生日お祝いに……。グローバル未実装ですがお誕生日祝いボイスの話
幸運にも、ドクターの手によって包装が解かれた『プレゼント』には傷一つ付いてなかった。
箱から取り出されてテーブルの上に乗せられたのは、シンプルな形状のボトル。透明度の高いボトルの内側は、琥珀色の液体で満たされている。
よかった。やっぱり値が張ったぶん、それなりに頑丈みたいで安心した。
「君がくれた大事なプレゼントを私が傷つけるわけがないだろう?」
胸を撫で下ろしている俺を見て、ドクターが悪戯っぽく笑う。その得意げな顔、可愛いから好きなんだけど、今日ばかりは小悪魔の笑みに見えちゃうよ。
「ドクターのことは信じてるけど
……
万が一ってこともあるから」
なにしろ先程のドクターは、かなり遠慮なくプレゼントの入った箱を揺らしていたんだから。彼女に悪意があるとは思わないけど、中身が中身だけに気が気じゃなかった。
プレゼントは値段じゃないとは言うけど、やっぱりドクターに渡すならそれなりのものを選びたくて、だからこそ、ちゃんと飲んでもらう前に台無しになってしまうのは嫌だった。
「良い酒が入っているんだ、力加減は心得ているさ」
「
……
だったらいいけど
――
って、ドクターは中身に気づいてたの? いつから?」
確かに意外性のあるセレクトではないけど、バレバレだったんだとしたらちょっと恥ずかしいかな。得意げに『何が入ってるか当ててみて?』なんて言ったばかりだし。
ドクターは組み合わせた指の上に顎を乗せて俺の方を見上げると、上機嫌に口を開いた。
「確信したのは箱を手に取った時だけど、初めからなんとなくそんな気がしてたんだ。次に君が何かを贈ってくれるなら、〝上等なテキーラ〟じゃないかって」
「
……
」
努めて平静を装ったつもりだけど、多分俺の顔には『どうして?』と書いてあったと思う。これまでの人生で培ってきたポーカーフェイスが、ドクターの前ではあまり機能しないのだ。あんまりいいことじゃないな、と思いつつも、自然体で振る舞えるのも悪くない気がして、そんな自分に気づくたびに複雑な気分になる。
ドクターは俺の煩悶すらも見透かした様子で目を細めて、テーブルに置かれたボトルを指先でつついた。
「以前、君とドッソレスの酒について話をしただろ。そのとき君は、『今度いいお酒を見繕ってあげる』と言っていた。その約束を忘れるはずないと思ったんだ。君は相手をもてなす際に下手なサプライズをする方じゃない。堅実に相手のニーズに応えるタイプだからね」
一から十まで全て彼女の言う通りで、余計に恥ずかしくなった。俺ってそんなにわかりやすいかな。今まで言われたことないけど。
「エルネスト」
照れ臭さに身悶えしていると、お呼びが掛かった。
「なに?」
呼ばれると、律儀に返事をしてしまう。我ながら、忠犬仕草が染み付いてしまったものだ。これも別に悪くはないけど。
ドクターはもう一度、ボトルをつつく。
「前にも言った通り、私はお酒の飲み方に明るくないんだ」
「うん」
「君に教えて欲しいんだけど、今晩の予定は?」
「えっ」
思わず間の抜けた声が出た。いや、教えるのは別に構わないし、ショット以外の飲み方もたくさん知ってはいるけど。
「それ、値段を抜きにしても本当にいいお酒だから、誰かをもてなすときに使ったりしてもいいと思うよ。何も急いで飲まなくても」
正直、期待していなかったといえば嘘になる。
銘柄を選ぶ際に、値段や品質に加えて、自分の好みが入ってしまったのも認める。でも、そのお酒はもうドクターにあげたものだから、好きなときに好きな相手と飲んでほしい。
するとドクターはあからさまにムッとした顔で、
「私が、今日、君と、飲みたいと言ってるんだけど」
と、唇を尖らせる。
「
……
」
俺だって察しの良さにはそれなりに自信があるから、わかる。わかってしまう。
彼女が、誕生日の夜に一緒に飲みたいと誘ってくれているということが。
それはなんて、魅惑的なお誘いだろう。
しばらく見つめ合うだけの沈黙があって。
根負けしたのは俺のほう。
気づけば、ふにゃりと顔が緩んで、情けない笑みを浮かべてしまった。
それに合わせて、ドクターの表情もゆっくりと緩む。先程と同じく少し意地の悪い笑みを口の端に浮かべて、人差し指でテキーラのボトルをつーっと撫でた。
「〝テキーラ〟の飲み方を教えてくれるんだろう?」
その言い方はずるいよね。ドクターって本当にここぞと言う時の言葉の破壊力を知っている。
ぎゅうっと胸を締め付ける疼きを押さえつつ、なんとか体面を保って爽やかな笑顔を浮かべる努力をした。
「いいよ。じゃあ今夜、ドクターの部屋に行くね」
「待ってるよ」
できる限り甘い声で言い返したんだけど、楽しみで仕方ないって顔でドクターがさらに返してくるから。
「
…………
ずるいよ、ドクター」
とうとう本音が隠せずに、口から情けない声が出た。
【終わり】
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