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望月 鏡翠
2025-02-07 23:23:34
923文字
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日課
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#1620 「果物」「七色」「団扇」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
昔、祖母の家は私にとっての非日常だった。
古い家は、電気をつけていてもどことなく暗い。戸建ての家は、マンションの上階に住んでいると全く馴染みがないような虫と遭遇することになる。土埃で光量の弱まった玄関に蜘蛛の巣が張っている様などは、不気味だった。
大人になって一人で暮らすようになれば、生活と仕事を両立しながら一戸建ての掃除まで丁寧に行うのは難しいということがわかる。
しかし、祖母の家に行っていた頃の私がそんな社会経験と生活の感覚を持ち合わせているわけがない。私にとって、そこはまだ人が住んでいる幽霊屋敷のような場所だった。
廊下は暗く飴色になっていた。祖母の一つ前の世代から暮らしている。古民家と行って差し支えのない家だ。風呂場を含めた水回りだけリノベーションをしたらしく、私の実家よりも新しかった。
古い家の中で、そこだけが不釣り合いなほどにピカピカで明るくて、真新しかった。それもまた非日常感を強めていた。
お風呂が新しくて嬉しいという理由で、私は祖母の家にいくのを楽しんでいた。排水溝の髪の毛を片づけなさいとか、うるさいことをとやかく言われないことも嬉しかった。
きっと祖母も母に対しては、その手の小言を言っていたはずだ。私が母に言われるような小言を、きっと言われていただろう。私は孫の特権で、新しい浴室とドラム式洗濯機の恩恵だけを受けに行っていた。
祖母の家でもう一つ好きなところがあった。
常に季節の果物が置いてあるところだ。秋になったら、色とりどりの実りを見ることができた。竹で編んだ籠で食卓の真ん中に置いてある。その中には、スーパーではみないようなものもあった。
例えば、アケビや熟したザクロ、カリンや、胡桃、ヤマボウシの実といったものたちだ。
食べていいものもあれば、調理しなければ食べられないものもある。毒がないというだけで、食べたところでそこまでおいしくもないものもある。食べてもおいしくないものは、ただ飾りにするために置いてあるらしい。
庭になっていたものだからいいの、と祖母は行っていた。
そうして秋になると七色が詰められる籠の隣には、大抵夏の忘れ物の団扇が置いたままにされていた。
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