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井見
2025-02-07 22:49:18
1877文字
Public
真Ⅲ二次
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明けない夜を
ヨヨギ公園でクイーンメイブ(ピクシー)と一緒にいる主人公のワンショット。
2022年の11月くらいに書いたらしいです。
くるくると、妖精たちは踊り狂っている。
彼らの頭上に輝くのは満月ではなく、光をたっぷりと蓄えたカグツチだ。夜の帳の代わりに砂の天井が覆っていても、彼らは気にも留めない。
うふふふ。あははは。
大小様々な円の、とりわけ大きな円の中心では、妖精の王と女王が主役を為していた。
「参加はしない?」
聞いてみる。隣にいるのは、ずっと前に妖精だった彼女だ。
「しないわ。
ねえ、なにが楽しいのかしら。
わからなくなっちゃった」
「
……
わからなくなって、悲しい?」
一緒に旅を始めてから、彼女は少し上位の妖精になった。それからなんとなくずっとそのままだったが、彼女は突然変異して、妖精の衣を脱ぎ捨てていた。
ただの無印の妖精だった頃より、今の彼女はずっと強く、逞しい。人と同じ、あるいはそれよりも大きい体。人ではない異形の色。勝手に僕は親近感を抱く。これが彼女の望んだ姿なのか、あるいは僕の望んだ姿なのか、それはわからなかった。
「不思議なの。
あんなに戻りたかった公園なのに、なんだかもう、本当にどうでもいいんだもの。
みんながおかしくなっちゃっても、ふうん、って、それくらいだった。
悪魔も変わるのね」
このヨヨギ公園は妖精達の縄張りだ。僕の最初の仲魔になった彼女も、ヨヨギ公園に行きたがっていた。今思えば、妖精たちの輪に戻りたかったのだろうか。
「そういえば
……
どうしてあの時、一人で病院にいたんだ。
あの病院には、妖精は他に一人もいなかった」
「あれ
……
言わなかった?
あたし、置いてかれたの。みんなで病院まで追いかけっこをして、かくれんぼをして
……
でも、あたしすっかり忘れて
……
カハクちゃんたちと遊ぶのが楽しくなって
……
。
気づいたら、誰もいなくなっちゃった」
ピクシー
……
ハイピクシー、いや、クイーンメイブはそう言って、くるりと空で一回転した。ふわふわの髪の毛が体に沿って流れて、常に赤く輝いている瞳を綺麗に隠していた。僕にはそんなひらひらと動くものがないから、少し羨ましいなあと思った。
彼女をぼうっと見上げていると、羽音がすぐ側まで近づいてきていた。
「どうしておどらないの?」
あははは。と笑いながら、ピクシーの一人が話しかけてくる。不意を打たれた。今の僕には脅威にはならないが、少し身構えた。
「おどろう。おどろう!」
あは。あはは。
笑い声とともに、またピクシーは妖精たちの輪へ舞い戻る。
どうやら彼らは僕たちに関心があるわけではなかった。ただ闇雲に、辺りにいる者に語りかけ、招き寄せていた。木々へ、街灯へ、鉄骨へ。見境は無かった。溢れる衝動に身を任せていた。カグツチが一番眩しい時、悪魔たちはこうなった。
「あなたと一緒にいなければ、今頃あたし、あそこで踊っていたわね」
「それか、僕を何度も飛ばしていたかも」
「それで、お互い気づかずに、あなたはあたしを殺していたかも?」
「ありえる」
「ありえるわね」
彼女はくすくすと笑った。仮面のように表情は隠され、姿も声も力もなにもかも変わってしまっても、笑い方だけは同じだった。彼女はよく笑った。仕方ないわねと言いながら、また怪我したのと言いながら、まだまだ強くなるのね、と言いながら。
「
……
ねえ、踊りましょう!」
突然彼女は跳ねるように言うと、浮かんだ体で、僕の手を取り引き上げた。僕の足も浮きそうになって、思わず彼女の腕を掴んでしまった。
「大丈夫。妖精じゃなくたっていいの、ダンスなんて簡単よ。
くるくる回るの。それだけよ。
前も後ろも、右も左も、上下だってわからなくなるくらい!」
確かに簡単なことだった。
僕の体がぶんぶん回った。彼女の体もぶんぶん回った。回されていた? 僕らは回った。カグツチの光が頭上にあって、足元にあった。
「ああ
……
うふふ、楽しいわ
……
。
あなたと踊るのは、楽しいのね
……
」
彼女はうっとりとした声で言う。大きな体は、僕の体を回すのに十分だった。妖精のままではできなかっただろう。もしかしたら、彼女は踊るために大きくなったのかもしれなかった。なんて、そんなことはないか。
彼女の回転は次第にゆっくりになって、僕もゆっくりと止まった。悪魔の体でもさすがに目は回るらしく、僕はふらりと足がもつれて、また彼女の腕をぎゅっと握った。彼女も僕の腕をぎゅっと握り返した。彼女の目も回ったのかもしれなかった。
「もう少しだけ。もう少しだけよ」
そんな彼女の囁きが聞こえた気がした。
「夜が明けるまで
……
」
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