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三毛田
2025-02-07 20:28:21
1092文字
Public
1000字2
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96 096. 小さな背中を抱き留めて
96日目
その後キスをする
小さな指先が、水面に触れる。
そしてそれは、龍へと変貌し宙を舞う。
「あ」
だけど、すぐに形を保てなくなり元の水へ。そして一部は床に。
さっとモップにその水を吸わせれば、証拠隠滅。
「練習すれば、大丈夫。長い時間龍を顕現させられるから」
「ほんとう?」
ちょっとだけ泣きそうな顔。
「ああ、もちろん」
でも、俺が頷くと少しホッとした表情へと変化し。
「そっか。お兄さん、名前は?」
今聞くのか! とか、本当に分からないんだ。とか。色々言いたいことはあったのに、大きな光を帯びた翠の美しさとあどけなさに言葉を飲み込む。
「俺は、穹。ナナシビトだ」
「ナナシビト? 初めて聞いた
……
」
翠の混ざった長い髪を指先で弄び、それからこちらを見上げて。
「君は?」
「
……
丹恒。俺は、丹恒」
「うん。丹恒は丹恒だ」
肯定してもらえたのが嬉しかったのか、服の裾を握り、唇をモゴモゴ動かしている。
可愛い。
可愛すぎて部屋に連れ込んで、いつも以上に愛でたくなるほど。
「穹」
パムの鋭い声に、抱きしめようとした手を引っ込める。
「おやつ食べる?」
「いいの?」
「よいのじゃ」
「じゃあ、食べる」
問いかけた俺じゃなくて、パムを見たのは。きっと、パムから美味しそうな匂いがしているからだろう。
ソファーに座るには背が低いから、持ち上げて膝に乗せる。
パムの用意が終わるまで、その小さな背中を抱き留め。
「車掌さん、今日のおやつはな」
ガコンと結構いい音がして。次いでビシャッと続く。
「「あっ」」
なのが、片付けそびれたバケツを引っくり返して、床をびしょ濡れにさせた。
「穹!」
俺たちの声に、バケツをそこに置いたのが誰か気づいたようで、なのは俺を呼ぶ。
「ごめん。俺が悪い」
「水、集める?」
「ううん」
「でも、床濡れてる」
「うーん
……
出来る?」
「やってみる」
「なの、バケツ起こしておいて」
「もう。何でウチが
……
」
ブツブツ言いながらも起こしてくれるあたり、かなり甘い。
それから、丹恒を膝から下ろして。
「集まれ」
バケツの上に手のひらをかざす。と、床に散らばっていた水が戻っていく。
「これでいいか?」
全ての水が戻ると、恐る恐る俺たちを見て。
「もちろん!」
「わっ。ん、んんっ」
抱き上げて、勢いのままキスをする。
「こら、穹!」
なのとパムが怒っているのが聞こえるが、無視。
「おっと」
重みが変わり、慌てて抱え直す。
「お前はっ」
「おかえり、丹恒」
「あの奇物はどうした」
「ヘルタに渡したから、大丈夫」
「そうか」
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