かいえ
2025-02-04 19:48:15
7527文字
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【蘭武】蘭ちゃんの自称元カノ&女だった奴らがいるクラブにタケミチを連れて行きタケミチが可愛いと女達に

「蘭ちゃんの自称元カノ&女だった奴らがいるクラブにタケミチを連れて行きタケミチが可愛いと女達にマウント取りに行く遊び」
モブ視点
7,517文字
字書きが○○をやるボタンの「一番ライトな性癖のSSを書く」というお題から作られたもので、後日「イルミが消えたら」(https://www.pixiv.net/artworks/112487022) のベースになったお話に、4,200文字加筆修正したもの

 地下鉄六本木駅の3番出口から地上に出て、外苑東通りを東に進むと、夜空をバックにイルミネーションで彩られた東京タワーが真正面に見える。車道の真ん中にあるように見えて圧巻な光景だが、外苑東通りはこの先T字路になっていて、東京タワー手前で桜田通りに合流してしまう。従って、今歩いている道は東京タワーまで続いておらず、けれども、その奥に東京タワーが建っているので、道路の真ん中に建っているように見えるという訳だ。最初にこの光景を見た時は、東京タワーの下を道路が走っているのだろうかと勘違いしたものだった。今夜の東京タワーのイルミネーションは、先週までとは違いオレンジ色の冬仕様で、いつの間にか夏が終わっていた事を知った。東京タワーのイルミネーションは、日付が変わる時にライトダウンするのだけれど、その瞬間を一緒に見る事が出来た恋人同士は「永遠に結ばれる」という、ロマンチックな都市伝説があったりする。初めて六本木に来た日に、以前付き合っていた彼女と見た思い出だ。
 オレが行こうとしているクラブは、外苑東通りから狭い路地を右折して、少し歩いたところにある。最初にこのクラブに来たきっかけは、件の元彼女が「行ってみたい」と、クラブ初心者のオレを誘ったからだ。そのクラブは、あまり街灯の無い、薄暗い路地裏の雑居ビルの地下にあって、知る人ぞ知るというマイナー感が漂っているところだ。いかにもディープな人間が集う場所にしか見えず、普通の感覚の人間なら足を踏み入れず回れ右するに違いなかった。
 地下にあるこのクラブに入るには、手摺も何も無い薄暗い急な階段を下らなければならない。入り口には体躯の良い外国人がたむろしている事も多いので、常連でもない女性が一人で来るには、随分勇気がいる店構えをしていただ。
 普段はもっと軽めのクラブで遊ぶ彼女は、自分の知らないダークな世界を垣間見たいと冒険したい気持ちになっていたのだと思う。 そういう次第で、彼女は一度このクラブに来ただけで満足したようで、もう一度一緒に行こうとは誘って来なかった。そして、そんな彼女とは反対に、オレはこのダークで少しの危険を孕んだ空間に身を置く事を、楽しいと思ってしまったのだった。 それは、親に内緒でやってはいけない事をする、まさに子供の火遊びのような感覚だった。そして、その背徳感から背筋はちりちりとし、普段の生活では感じる事の出来ない非日常は興奮を掻き立てた。もしかしたらそれは、そちら側ではないのにそちら側にいる自分に、酔い痴れていたかったからこその行動だったのかも知れない。ずっと、親の敷いたレールを疑問も覚えず進んできた。親の望む偏差値の高い大学に入り、人に羨まれるような企業に勤務し、何一つはみ出す事のない人生。この先、既にどうやって生きていけば良いか人生設計出来ている自分を、酷くつまらないと感じたのだ。このクラブで得られる刺激は、他のどこにも無い唯一無二のものであった。 こうして、このクラブには度々通うようになった。ここを知るきっかけをくれた彼女と別れた後も、オレは月に二回のペースで足を運んでいた。そして、会えば挨拶したり一緒に飲んだりするようなダチができ常連のはしくれになった頃、このクラブに絶対的支配者が君臨している事を知った。「灰谷兄弟」とという、この辺りではかなり有名らしい、六本木のカリスマと呼ばれる二人の兄弟だ。兄が灰谷蘭、弟の方が灰谷竜胆といい、大抵二人で行動しているので、周囲は彼らの事を「灰谷兄弟」と呼んだ。
 詳しくは知らないが、このクラブどころか、六本木全体が彼らの支配下という話だった。クラブに遊びに来た灰谷兄弟を見た事があるが、大人っぽい雰囲気は纏ってはいたが、それでもオレよりも随分年下に見えた。頑張ってもの二十代前半にしか見えない彼らが、結構昔から六本木の裏社会を牛耳っているという話は眉唾物だった。もし本当だったら、彼らは小学生くらいで天下を取ったという事になるからだ。いくらなんでも、小学生が大人相手にそんな事は出来やしないというのがオレの見解で、きっと噂に尾ひれがついて盛られた結果なのだろうと思っていた。
 だが、灰谷兄弟はカリスマと呼ばれるだけの事はあって、二人とも随分個性的なファッションをしていた。灰谷兄は、長い髪を黒と金に交互に染め分け、前髪は作らず二本の三つ編みにしている。身長が180センチもある男がする髪型では到底無く、絶対容姿に自信が無ければ出来ない髪型だった。足は嫌味なくらい長くて、立っている姿はファッションモデルのようで、均整の取れたプロポーションをしていた。対して灰谷弟は、金髪に水色のメッシュを入れ、襟首が隠れるくらいの髪をウルフカットにしていた。金縁の丸い眼鏡はクセがあって、これもまた、容姿が優れているからお洒落に見えるというアイテムだった。身長は兄より低いが、兄より鍛えられた体躯なのは、服の上からでも分かった。ジム通いしている同僚と同じ空気を感じたのだ。こんな夜遊びしている不健康な集団に身を置いて、ストイックに自分の身体を鍛えるようなタイプなのだと驚いた。
二人とも他人から自分がどう見られるかを熟知して、ファッションを楽しんでいるように見えた。それだけでも、あの若さで到達しているとするなら大したものだった。
 兄と弟の雰囲気は違うが、容姿は双子のように似ていた。似ていないのは眉毛の形くらいで、それ以外は瓜二つと言って良い。瞳も少し色が違うが同じ紫色の、一度見たら忘れられないような印象的な瞳をしている。
 そんな二人がいる場所は、正に別次元にしか見えず、自分が同じ空間にいる事が、不思議に思えるくらいだった。
 灰谷兄弟は一見クールそうに見えるが、実は好戦的らしく、気に入らない相手は再起不能になるくらい叩きのめすという。特に兄の蘭は皆に恐れられていて、中学生の頃に人を殺して、少年院に入ったとか入らなかったとか。見た目の麗しさとは裏腹に、聞こえてくる噂は反社一歩手前の恐ろしい逸話ばかりだった。その全てが本当だとは自分も信じてはいないのだけれど、灰谷兄弟に目を付けられたくない人間は、なるべく彼らに係わらないようにし、遠くからそっと彼らを盗み見ているのが関の山だった。そんな危険な灰谷兄弟を見てはいけないと思うのに、いつも目が勝手に彼らの姿を追ってしまうのだ。。灰谷兄弟にはそういう人を惹きつける魅力があった。灰谷兄弟がフロアに足を踏み入れた瞬間、クラブ内は独特の空気になり、誰もがその姿を目で追う。この淀んだ不健康な空気の中を緩く漂う様に歩く灰谷兄弟は、その場にいる全ての人間の視線を奪っていく存在だった。そして女たちは、無謀にも彼らの視界に入ろうと我先に歩み寄り、何とか一瞬でも視線を奪えないかと鬼気迫る勢いになる。見つめられるわけでもなく、ただ視線の通り道に自分がいたというだけで歓喜する女達は、こうして抜けられない沼に足を入れるように、灰谷兄弟にはまっていくのだった。しかも、嬉々として。
 そういう訳で、灰谷兄弟がクラブにいる日といない日では、フロアの女たちの数が明らかに違う。従って、灰谷兄弟が来る日は、どこからか情報を得た灰谷兄弟狙いの女たちが、続々とこのクラブに集まってくるからだ。そうなると、野郎共もそのおこぼれに預かろうと、同様にこのクラブに終結するので、結果的にフロアは大盛況になるという流れだった。今夜も同様で、宵の口からこのフロアの人間は増え続けていた。退勤後にまっすぐ来たからいつもの席をキープできたが、残業していたら店内に入れなかったかもしれない。そんな風に感じてしまうくらい、今夜はいつもより人の数が格段に多かった。
「なんか、今夜は特に混雑してますね。イベでもありましたっけ?」
 この店で知り合った自称プロデューサーのイツキさんに尋ねてみる。イツキさんは頭の上にアイヴァンのベージュフレームのサングラスを載せて、上着は柄物のシャツを着て、カーディガンを背中に羽織り、両袖の部分を胸の前で結んだ、所謂ディレクター巻きファッションで、業界人風を装っている。イツキさんを表現するにあたり「自称」とか、「風」とか言ってしまうのには訳がある。以前、入手困難なコンサートのチケットを自分ならコネで取れると豪語し、そのアーティストとは楽屋に挨拶に行く程仲が良いと話し「観たいなら取ってあげましょうか?」と言われた事があった為、有難いと思い頼んだら、ただの立見席だったという過去があったからだ。もちろん、ステージの近くの良い席を取って貰えるとは思っていなかったのだけれど、アーティストとは楽屋に挨拶に行く程仲が良いと聞いていたら、少しは良い席かと期待してしまうだろう。そして、立ち見席なのに通常のチケット代金を支払った事は、苦い思い出となって自分の中に残っている。世の中では、こういう経験を勉強代と称するので、自分もそう思って不問にした。それでも、このクラブに来てイツキさんと変わらず会話をするのは、実生活では絶対出会わない、いい加減なイツキさんの事をそれなに気に入っているからだった。それに、イツキさんは自分の仕事仲間ではないし、親戚付き合い必至な血縁でもない。ただ、クラブに来た時だけ話す相手だ。イツキさんが、別にちゃんとしてなくても、社会人としては怪しげに感じたとしても、オレには何の問題も無かった。自分が気をつければ済む事なのだ。何も考えず適当な会話をするという、ただそれだけの事が、息苦しく感じている私生活に於いては、ほっと癒される時間なのだ。
「灰谷兄弟が来るみたいですよ」
 イツキさんはスマホでSNSを確認してそう言った。
「それにしても人が多くないですか?」
「ああ、久しぶりだからですよ。前は週に何回か来ていたのに、最近はずっと来てなかったから、灰谷兄弟目当ての女たちが大集合しているみたいですね」
「そうなんだ」
 毎日このクラブに来ているらしいイツキさんはかなりの情報通だ。週2通いのオレとは、持っている情報量が格段に違った。それにかなり前からこの店の常連らしく、六本木界隈の話を良く知っていた。オレの灰谷兄弟情報のほとんどは、イツキさんからに拠るものだ。
「他のクラブに鞍替えでもしたんですか?」
「いや、そうじゃなくて、六本木のどのクラブにも全く顔を出さなかったんですよ。だから、また、サツに掴まったんじゃないかって噂されていたくらいで」
 イツキさんが「また」というのは、以前教えて貰った「少年院に入っていた」話を正としているからだ。けれども、灰谷兄弟が最近クラブに顔を出していないというのは、本当のようだった。女たちの人数がえぐ過ぎるのだ。
 こうして、クラブは謎のハイテンションで灰谷兄弟を迎え入れた。灰谷兄弟の使いっぱしりの「兵隊」と呼ばれる男たちが先導して、灰谷兄弟はクラブに入って来た。その際、ドッと歓声まで上がったのは、このクラブに集まった人々が、どれだけ灰谷兄弟を待ちわびていたか分かるというものだ。それに続く黄色い歓声は、芸能人や海外スターが来店したのかと思うほどの、正に王の帰還のような熱狂的な歓迎であった。
 自分が灰谷兄弟の立場だったら、こんな風にざわついて四方八方から視線が飛んで来たら、とても落ち着かないと思う。それなのに、灰谷兄弟は驚きもせず、当たり前のような顔をして店内を移動していた。見られる事に慣れ過ぎている。
 灰谷兄弟が行く方向に黄色い声も移動していく。けれども、それは、徐々に戸惑いの騒めきに変化した。何故なら、灰谷兄弟に挟まれるように見知らぬ少年がいたからだ。金髪のくせ毛で、服装はノーブランドのTシャツに、七分丈のカーゴパンツという中学生のような格好で、六本木のクラブではかなり浮いて見える。そのまま一人で外を歩いたら、絶対補導されそうな中坊臭があった。
 初めて見る顔だったので、イツキさんに誰だか聞いてみたが、イツキさんも知らないという。そして、イツキさんだけでは無くて、ここいる大勢の人間も知らないようだった。フロアのあちらこちらで「あれは誰?」「あの子何者?」と、女たちのひそひそ声が上がっていたので、どうやら今夜が初登場の人物ようだ。灰谷兄弟のその少年への扱いは、兵隊への態度とは違い、身内にするような感じだった。もしかして灰谷兄弟は実は三兄弟で、あの少年は末の弟なのかもと思ったが、少年は二人にまるで似ていなかった。少年は背も低く華奢で、本当に成長途中の少年という身体つきで、未成年にしか見えない。灰谷兄と灰谷弟は背、格好は違っても、顔や醸し出しているオーラは同じものだ。けれども、その少年からは、そういったオーラの類は全く出ておらず、どこにでもいそうな平凡な少年にしか見えなかった。そういう訳で、兄弟では無さそうだとオレは結論付けた。少年の肩を馴れ馴れしく抱き寄せている灰谷兄は酷く上機嫌で、そんな姿を見た事が無いオレは唖然とするしかない。灰谷弟は表情豊かなタイプであったが、灰谷兄は無表情な事が多かった。笑ったとしても、どこか冷たさのある、本当は笑っていないように見える男だった。しかも、あんな風に自分から誰かを抱き寄せている姿など、見た事が無かったから余計に驚いてしまう。大抵女の方から灰谷兄に蔓のように絡まり付いていて、灰谷兄は好きにさせているというか、無関心でいるという感じだったのだ。自分に群がっている女に、全く興味が無いという強者だけが許される傲慢な態度で、平然としているのがオレの知っている灰谷兄だった。そういう次第で、フロアの女たちは皆、嫉妬に狂った表情を浮かべている。例え少年だとしても、灰谷兄が親しくしている相手というのは、女たちのやっかみの対象になるようだ。灰谷兄が自ら肩を抱き寄せている人物への視線は、もはや殺人でも起きそうなレベルになっていた。たかが肩を抱いて歩くだけで殺意が生まれる灰谷兄への想いが重過ぎて怖い。そんなギリギリの緊張感の中、一人の女が大胆にも灰谷兄の横に歩み寄り、いつものように腕に絡まり付こうとしていた。けれども、今夜の灰谷兄はそれを許すつもりが無かったようで「触んじゃねぇ、ドブス」と、低い声を出し空いている方の手で、女を無造作に突き飛ばした。女は「きゃっ」と甲高い悲鳴を上げ、凄い勢いで尻もちをついた。そして、床に座り込んだまま、信じられないと言った表情を浮かべて灰谷兄を見上げた。灰谷兄が明確に女の手を拒否したのは初めての事だったから、そんなひどい扱いを受けて驚くのは当たり前だった。
「蘭君、何してんの? 女の人が転んじゃってるよ?」
 女に気がついた少年が蘭に問いかける。その声は無邪気で若く、やはり中学生なのかもしれなかった。少年は何事かと、灰谷兄と女を交互に見ている。少年には死角になっていて、灰谷兄がした行為を見ていなかったようだ。ただ、転んで床の上に座り込んでいる女の方を見て、灰谷兄がした事ではないかと思っている様子だ。
「そんなもん見なくてイイよ。今夜はオレだけ見てろって言ったよな?」
 周囲の女たちが全員息を飲んだ。あの灰谷兄が、自ら口説いているのだから当然だ。それは、本当に誰も見た事が無い信じられない光景だった。灰谷兄は話しかけながら、さりげなく少年から女が見えないように向きを変えてしまった。
「兄貴、VIPルームに行こうぜ」
 周囲の異様な空気に気が付いたのは、灰谷弟の方だった。
「そうだな」
 灰谷兄も面倒事になる予感がしたのだろう。弟の提案に直ぐに乗った。
「ねぇ、蘭君。VIPルームってなんですか?」
 少年が素朴な声を上げると、灰谷兄の垂れた目尻が更に垂れたように見えた。まるで少年の事が可愛くて仕方が無いと言っているように。
「そんな事も知らねぇんだ。マジでカワイイな、タケミチは♡」
 灰谷兄はそう言って、タケミチと呼んだ少年のくせ毛に唇を落としたから、今度は周囲の女たちから、断末魔の悲鳴が上がった。
「蘭君! 何するんっスか? こんなところで止めてください!」
 少年は真っ赤になって、灰谷兄から距離を置こうとして失敗した。「アァ? やだけど?」と、灰谷兄がもっと少年を引き寄せてしまったからだ。少年はびっくりして、更に顔を真っ赤にさせていた。少年が恥ずかしさで狼狽する姿は、微笑ましくもあり可愛いらしいものだった。すると、少年の顔が、段々愛らしく見えてくるから不思議だった。
 最初、平凡な容姿だと思った少年は、良く見れば可愛らしい顔つきをしている事に、オレは気が付いてしまったのだ。青い大きな瞳がフロアライトに照らされて、サファイヤのように輝いていて目が離せなくなる。
「だから、そういうのはVIPルームでしろよ」と、灰谷弟が心底呆れた声を出し「ああ? なんでだよ?」と、灰谷兄が即座に苛立った声を出す。
 その時、何故か、灰谷兄と目が合った。
 そんな事が、自分の人生に起こるなんて信じられなかったけれど、今、この瞬間、オレの瞳には、灰谷兄の姿しか映っていなかったし、灰谷兄の瞳にはオレしか映っていなかったのだ。灰谷兄の瞳はまさしく魔性だった。まるで甘く煮溶かしたスミレのような色をしている。絶対、毒があるのに、分かっていて手を出してしまう、そんな危険な香りがするくせに、砂糖菓子のように甘そうなのだ。そんな蕩けるような瞳からオレは視線を外す事が出来ないでいた。
 それは長いようで、多分、数秒間の事だった。灰谷兄はオレから視線を外さないまま、目をすっと細めて口角を上げて微笑んだから、オレの心臓はドクンと跳ねた。それから、徐に右手を自分の鎖骨あたりに持って来て、指を真っ直ぐ伸ばして手刀を作ると、そのまま喉元で手を横に動かした。一連の動作が、あまりにも滑らかで、且つ美しくて見惚れてしまったのだけれど、その仕草の意味する事は「首を切るぞ」または「殺すぞ」という動きであると、徐々に認識して蒼ざめてしまった。 オレがこっそりと灰谷兄の横に居る少年を盗み見していたのがバレたのだ。つまり、オレのお気に入りを見るなら殺すというメッセージなのだと理解して、まだ命が惜しいオレは、無理やり灰谷兄から視線を外して、イツキさんに話しかける事にした。まるで、何事も無かった事にしたくて。
 灰谷兄弟と少年はフロアの奥のVIPルームに消え、フロアに残されたのは、女たちの怨嗟の声だけだった。