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awase
2025-02-04 03:06:52
3115文字
Public
ボルト
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誕生の日
大黒天を解除しないカワキにモヤモヤサスケ
BRT軸の4年後捏造
ナルサス過去形のナルト←サスケ
海のはるか向こうには別の国があって、そこでは神に祈りを捧げるのよ。
神、とは?
サスケは腰に携えた刀の柄を撫でる。忍の国ではあまり馴染みのない言葉だ。神への祈りで解決できることがこの世にひとつでもあるのなら、これまで耐え忍んできたすべてがバカらしい。それとも忍者が特別神に見放された人間だとでもいうのだろうか。
エイダの千里眼は暇つぶしに海を越える。
火の国風の国と分かれた国境が、星の単位で見ればひとつの国であること。海の向こうには別の言語と人種があること。いずれ簡単に行き来できるようになる、海の向こうではそれを飛行機と呼ぶ。と話したのは、未来を見ることができる居士だった。
すべてに関心がなく、どうでもよい。望みは全て木の葉隠れの元にあり、願いはいつも友と家族の元に行き着く。この命が終わる前に海の向こうへ行ける日がきたとしても、自分が渡ることはないだろう。そんな暇があるのなら、娘の黒曜の瞳と、妻の春の息吹のような色の瞳と、友の青空の瞳を眺めることに時間を使いたい。
「今日はまた面白いシーンを見たわ。こうやって指を組んで、朝にお祈りするの。なにを願えばいいのかしら?カワキと付き合えますように、とか?」
「恵比寿様に願え、そんなもんは。あれも善行と暮らしの神だろ」
「そうなの?じゃあ、会ってみたい。エビスさまに」
ふん、とサスケは踵を返す。エイダのおしゃべりに付き合うシカマルに小娘の世話を任せ、カワキの元へ向かう。日課だ。
同じく後ろをついてきたボルトが、サスケへの不躾な視線から守るように周囲を威圧するように振る舞うのもいつものこと。全能が解除されても人々の記憶は戻らない、そのため、ボルトは未だにナルトの息子として周知されきってはいない。
サスケと瓜二つの動きをするボルトに対し、サラダの双子の兄と勘違いした人間までいて、ではこの頬の2本線はなんなんだ、と思うが、思いすぎてもう考えるのを諦めた。暗にサクラを侮辱されているような気がしていちいち腹を立てていたが、いつまでも律儀に怒り続けるサスケに対し、ヒナタが起きるまではわたしが産んだってことでもいっか、その方がもう面倒じゃないでしょ。と、試験管の中で受精卵を揺らしながらサクラが笑いながら言っていたので、仕方なくその怒りを納めた。
いずれDNAは選別され人工的な体外受精も認められるはず、という医療の分野に知識をつけ始めたサクラにそのあたりの倫理的な話しは感情論だと一蹴されている。つまりそれほどの時が流れたのに、ナルトは未だこの世界に戻ってきていない。
木の葉の外れに建設された収容施設にカワキとエイダは閉じ込められている。
といっても、好きに出入りできるエイダは自由気ままに飛び回り、カワキだけが自主的にその場に留まっているのだ。理由は聞き飽きたのでもう聞きたくない。まだ七代目を出したくない、だからこの場にオレもいる。というものだ。ナルトを解放しない理由について口を割らないが、来月ボルトは二十歳を迎える。その4日後にはサラダも二十歳の成人を迎える、その感慨深さをよく知るサスケは同じ子を持つ父として、どうにかその日までにカワキを説得できないかと考えていた。
「何回来ても無駄だぜ。オレの気は変わってない」
ボルトの飛雷神でカワキの元まで飛ぶと、無機質なモニターに囲まれた部屋の中でカワキが言った。
「そうか。では、また明日来る」
「明日も気が変わらないだろうな。だからもう来んな」
カワキの大黒天に干渉はできない。輪廻眼を失ったサスケに時空間へ干渉する術はなく、それはボルトも同様だった。アマドやエイダもナルトの位置を正確には把握できない。つまり、ナルトの世界においてカワキがすべてを支配しているということになる。たったふたりだけを閉じ込めた小さな世界の神となったらしいカワキは、その地位を誰かに譲ることをしたくないらしい。
「最近、大黒天の中の拘束を解いてみた」
カワキがなんともないような口調で切り出した新規情報に、サスケは目を見開いた。ボルトも同じく身を乗り出し、近づくとスケルトンに変わる室内の壁に手を当てて中のカワキを覗き込んだ。
「エイダが言うには、あんたの奥さんが人工受精の研究を進めてるらしいじゃねえか」
「だとしたら、なんだ」
「拘束を解いて好きに行動しだした七代目と夫人は呑気だぜ。時空間に閉じ込められてることも忘れちまったかのように、毎日ふたりで仲良くやってる」
「
………
」
「何年かぶりに目覚めたら世界にふたりきりだったんだ。さぞ楽しいだろうな。人類のいちばんはじめの日を見てるって気分にさせてくれるよ」
「趣味の悪ぃ話しはやめろ。何が言いたい?」
「オレはあの世界で本当に生まれ変わる」
隣のボルトが舌打ちをし、スケルトンの壁を叩く。衝撃はすべて吸収され音も鳴らない仕様だ。
「夫人が身籠った3人目にオレのDNAを組み込んでもらう算段だ。転生っていうのか?ボルトの弟になるのは癪だが、そん時はあんたがボルトを養子にもらってくれ」
「カワキ。妄想が行き過ぎるとキメェぞ」
「なんとでも言えよ。オレがこの大黒天の中で産まれたら、正真正銘七代目の最初の子どもだ」
「それがキメェって話しをしてんだよ!んなことしなくても、お前はうちの養子になる!それでいいだろうが!」
「テメーの顔に言われるとイラつくんだよ、ボルト。黙ってろ」
カワキが硬い長方形の椅子から立ち上がる。
好きに行動させないよう、一定範囲動くと電流が流れる仕組みだがあらゆる部分を改造されているカワキにその手の拘束は意味をなさない。火の国へのパフォーマンスでしかないということだ。
「お前にはわかんねえだろうよ。自分の細胞全部入れ替えちまいたいって気持ちがよ」
「
……
」
「うちはサスケ、あんたにもわかんねえよな。大事そうにしてるその目、血筋ってやつだろ。育ちと生まれにプライドがある人間の振る舞い全部が、オレにとっては鬱陶しいんだよ」
憎しみでもなんでもない、ただ自分自身への深い嫌悪を浮かべた顔で言うカワキが特別制の強化ガラスの前まで歩み出る。
つくづく時代が流れたものだと思う。
人智を超えた力が忍術を凌駕し数年、彼らは万能を手にした気でいる。うちは一族への畏怖も軽蔑も時が忘れさせたのだ。
目の前に現れたカワキの瞳を覗き込むと、足元が覚束なくなる。この収容施設もカワキを拘束するために設計されているだけで、十数年前のサスケの反逆を忘れたかのように脆い。千鳥を流した草薙剣でガラスを突き刺せば、簡単にヒビが入り割れた。施設内に警報が鳴り響くが、どうということはない。カワキを一目見た時にこうしておくべきだった。割れたグラスが戻らないように、ヒビ割れた人間はその人格の不足を自分で埋めることができない。かつての自分がそうだったのだからと目を瞑ったことが間違いだった。
カワキの腹を割けばナルトが再びこの世界に現れるのだろうか。
大黒天という小さな世界で記憶すら曖昧にされたナルトは、次こそ自分を選ぶだろうか。
サスケの手を掴み止めるボルトを突き飛ばし、カワキへと覆い被さる。
どうかそうであってくれと願った。
こうやって指を組みお祈りするの。その片腕はもうないのだから、この祈りはきっとどの神も叶えない。だとしたら、それを同時に失ったナルトしか叶えられないのだ。もう隣で生きたいと、それだけでよかったのだと誤魔化さない。すべてが剥ぎ取られたのだとしたら、今度こそふたりで逃げると決めた。
end.
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