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ぶんどき
2025-02-03 19:34:09
1185文字
Public
依頼
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ノックアウト宣言
ハロウィンと悪戯の話。
skebリクエストありがとうございました!
「内柳さーん!『Trick so Treat』です!」
今日の営業時間を終え、閉店作業をしている最中のことだった。走ってきた心虹は元気に両手を差し出す。今日は10月31日、ハロウィンの日だ。彼女の性質からしてどちらかを選ばせてくれるということはないと思ったが──まあそれでもいいか。この日のために作っておいたガトーショコラを彼女に渡す。味は文句ない出来だと思う。
「はい、心虹ちゃん。どうぞ」
「わー! 美味しそう
……
! ありがとうございます!」
彼女はそれを嬉しそうに受け取ると、「じゃあ次は私から!」と言ってキッチンに慌ただしく走って行った。ほどなくしてキッチンから戻ってきた彼女はカクテルグラスを手に持っていた。その中には薄黄色の液体が注がれている。
「はい、どうぞ!」
「一応聞くけど、これは?」
「お菓子の『お礼』のカクテルです。飲んでみてください!」
そう言って彼女は悪戯っぽく笑った。
「
……
ありがとう、いただくよ」
グラスに口をつけ、カクテルを飲む。一口でかなり強いアルコール度数だとわかった。ふわりと鼻に抜けるハーブの香りが心地良い。少し飲んだだけなのに、くらりと酩酊感がやってくる。──ああ、これはまずいな。なるほど彼女の『Trick』とはこれのことか。
次第に思考力も低下し、普段内に秘めているようなことさえ口走りそうになってしまう。例えばそう、
「どうですか、内柳さん?」
心虹が顔を覗き込んでくる。酔いが回り、顔が熱い。咄嗟にカウンターに突っ伏せば彼女が「内柳さん!?」と心配そうに声をかけてきた。彼女を安心させるように顔を上げ、頬を緩める。
「
……
心虹ちゃん、僕はね、」
「は、はい」
「君が知らない誰かについていってしまいそうになると、焦るんだ」
「へ
……
?」
唐突な告白に彼女はぽかんと口を開ける。
「それは、庇護欲
……
とも言うかもしれない、もちろん、君に危険な目に遭って欲しくないから
……
。でも、それだけじゃなくて、僕だけの心虹ちゃんじゃなくなってしまう気がして
……
」
ぽつり、ぽつりと、独り言のように零す。本人が目の前にいるというのに。
「
……
それって、もしかして
……
やきもち、ですか
……
?」
こくりと頷き肯定を示す。大の大人が、こんな年下の女の子に。ああ、自分は一体何を言っているのだろう。
「
……
内柳さんに作ったカクテル、『ノックアウト』というんです。昔、ボクシングの世界大会の祝勝会で作られたのが由来、らしいです」
「そうなんだ
……
?」
「悪戯のつもりが、私の方がノックアウトされてしまいました!
……
なーんて」
ふふ、と彼女は少し照れくさそうに微笑んだ。それを言うなら、こんなことをぺらぺらと話してしまった自分の負けのような気もするが。
──まあ、その柔らかい笑顔が見られただけでも、良しとしよう。
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