喩鶴結雨
2025-02-03 10:07:38
1004文字
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薔薇園に棲まう魔女


昔々、ある所に
ちっぽけな世界に住む、臆病で寂しがりやの魔女が居ました。
魔女は森の高い木に止まり、魔法で作った分身を使っていつも外界の子供達と、遊んでいました。

ちっぽけな世界で戦争が起きました。
魔女は戦争に参加することはありませんでしたが、彼女の棲家とも呼べる憩いの場所にはあの美しい緑が失くなってしまいました。
当然身を隠せる木なんて一本も生えていません。
臆病な魔女は悲しくて寂しくて涙を流します。
いつしか魔女は、ちっぽけな世界に降り積もる雪で埋もれ、凍ってしまいました。

ちっぽけな世界のある所に、一羽の蝶が居ました。
蝶は寒さにも負けず、一生懸命飛びます。
蝶はある物を探していました。
それは、花の種です。

「闇雲に飛ぶのはやめなさい」
蝶を止めたのは一人の老人でした。
老人は袋を蝶に持たせます。
その袋の中には、たくさんの花の種がありました。
「きっと役に立つでしょう」
蝶はぶっきらぼうにお礼を言って、魔女の元へ向かいました。

蝶は浮遊する少女に頼んで、魔女の周りに種を蒔きます。
すると、みるみると種が芽吹き、その正体を表しました。
「これは、薔薇でしょうか?」
浮遊する少女は立派な花弁を見て、そう口にしました。

咲いていたのは赤、紫、青の薔薇。
薔薇と一緒に魔女は目を覚まします。

それからというもの、魔女は大工に頼んで薔薇に囲まれた家を建て、薔薇園に住むことにしました。
外界の子供達と遊ぶ時は、やっぱり分身を使って、遠くから遊んでいました。
魔女は薔薇園から出ることはなくなりました。

ある時、外界の人間が一匹の黒い子犬を連れて来ました。
やさぐれたような顔をした子犬を、魔女はとても気に入りました。
人間は子犬を「誤解されやすいけど優しいやつだ」と紹介しましたが、魔女には可愛らしい子犬にしか見えませんでした。

魔女は初めて、遠くからではなく、近くで子犬に触れてみたいと思いました。
魔女は直接子犬に会いに行きました。
怖さなんか忘れて、薔薇園を飛び出したのです。
魔女はたくさん子犬と遊びました。
子犬の鋭い爪や牙も、魔女にとっては怖くありません。
だって、子犬が魔女を傷付けることはないと信じているのですから。

子犬は魔女の信頼を裏切ることはなく、優しく、ふわふわとした前脚で魔女と遊びます。

魔女と子犬はすぐに恋に落ちて、結ばれましたとさ。