ほしのまなつ
2024-09-19 23:13:46
1450文字
Public :ドルパロ
 

🥞🎩3️⃣/スキャンダルをかすめとる

パパ、ちょっと怒る






「一郎くん、やったな……

声が硬い。
これは悪い方の『やった』だ。
飛び込んできた父の表情に、いつものやわらかさがない。

「えっ、なに?? 悪魔くん?? なんかしたの? パパの目が座って――
――次週の週刊誌だ、すっぱ抜かれた。だからあれほど気をつけろと」
「??? こないだの打ち上げのやつはスタッフさんもいたのにヘンに切り取られただけだったよね? またなんか……悪魔くん?」

レッスン室の床にふたりで座り込んで、ちょうどクールダウンしていたところだ。
汗ばむおでこはそのまま、前髪をぺたりとはりつけ視線だけあげている一郎の表情は読めない。

………

「おい、なんか言えよ……まさか心当たりあるの?? さいあく」
……ちがう」
「ちがう? じゃあ説明しろよ。ちゃんと、ここで!」

問い詰めるような口調になったのは仕方ない。
捏造前提で撮るほうが悪いのは当然だけど、だから気をつけような、と約束したばかりなのに。

「違うんだよ、3世」
「パパは見たの? 写真? 動画?」
――写真だ。盗撮だな……3世もそこ、座りなさい」
「??? 座ってるよパパ」

あ、これパパも混乱してる。
体育すわりのまま、膝をゆらして『ぱぱ?』ってもう一度声をかける。
そんな3世の姿をみる表情は、なんとも言えない。
疲れと、呆れと……なんだろう? もう一度、一郎へと向けられた目がやはり座っている。

――電車移動中をすっぱ抜かれた。きみたちふたりだ……あーこれもみ消せるか?
それとも親愛で乗り切……れるか? 3世は国民の孫が定着してるしなぁ」

「えっ? え??」

「フード深くかぶってるけどなぁ、一郎くんだって見る人が見れば分かるし……3世はシルエットがモロに3世だから」

最後らへんはほぼ独り言だ。
電車移動? した。
一郎は黒いパーカーで、3世も同じく黒いキャップ。あれは平日の白昼だった。
車内はひとがまばらで、窓から差し込む夏の日差しを遮るようにうつむく一郎の、淡い髪色とおなじまつげがきらきらしていて、すごく綺麗だったのを覚えている。
『帰ったらさ、ホットケーキにバニラのっけようぜ』ってひそめた声で提案したら、フードの中に収められていた丸いあたまを返事のかわりに揺らしたりして。
電車の小さな揺れとともに、ふたりの身体がおなじ方向にかたむく。
遠くのレッスンスタジオは移動がちょっと面倒だけれど、一郎とすごすあの時間が3世はすきだ。

「え、ほんとなに???」
「君が……
「おれ?」

ようやく口をひらいた一郎だが、めずらしく歯切れが悪い。
首をかたむけて様子をうかがっていると、わずかに眉間にシワがよってしまっている。
なんなんだ、いったい。

――きみが、よく寝ていて……僕がいるのに、となりの知らないヤツに寄りかかろうとするからこっちに戻した。
そしたら、ふにゃふにゃになってる顔で『なぁに?』ってぼくに笑いかけてきたんだぞ。……ムリだった」

「まって、なにしたの??」





【~数時間後~】

――あれ、ワザだろ? そんなに余裕がないのか?』
『今度やったら許さないよ』
『3世もだ。メフィストだろう? お前は。外で隙をみせるな』
……等々、かの第一使徒の顔で詰められ、ふたりは大人しく床の上に正座するハメになるのだった。

※追記:ふたりの車内チュウ写真は、しずかに激怒するパパに代わって伯父さんが無事もみ消しました。