ぽふむん
2025-02-01 21:50:25
1732文字
Public ワンドロ
 

愛妻のペット

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負

「豆まき」「愛妻」
鬼化if
しのぶちゃんのペットにされてしまった玉壺がいます
去年の節分ネタの続きのつもりです

「鬼はーそとー」

バシィ


しのぶは次々と大量の豆を、渾身の力を込めて投げつける。


節分の豆まきの、儀式とも児戯ともつかぬようなやさしい投げ方では無い。
本気の、全力の投球フォーム。


当たる度に「的」が悲鳴をあげる。
ジャラジャラ、ざざざざざ
豆が肉体にぶつかり、その豆が床に散らばる。

その的は珍妙な生物
いや、鬼

人魚のような全身。
小さな手が筋肉質な上半身から複数本生えている。
下半身は魚というより海蛇のよう。
古事記に見る太古の夫婦神の第一子でありながら、不具の子であったため、葦の舟に乗せ流されたという蛭子神とはこのような姿なのだろうか。

ただ1つ違うだろうと思われるのは 本来目があるべき所に二つの口。
額と顎に目があるということ。

目には『 上弦』『 伍 』それぞれがバツで消されている。

この奇妙な生き物……いや、鬼だ。
鬼狩りに斬られ、ほうほうの体で逃れてきたは良いが、鬼舞辻の勘気にふれてしまった。
が、長年の功労により殺されはせず、地位の剥奪だけで済んだ。

かつての上弦の伍
玉壺

今その体は藤の蔓で縛られ、天井から吊るされている。
その蔓はしのぶの左手から伸びている。
しのぶの両目にはそれぞれ
『 上弦 』『 伍 』

妖しく、力強く輝く紫水晶

地位を追われた者と、その空座に着いた者
かつての上弦の伍は新上弦の伍に食われることはなく、愛玩動物として飼われている。
今しのぶは、その愛玩動物と遊んでいる(つもり)。

「あはぁ❤特製の毒に浸した後乾燥させた毒豆ですぅ。お味はいかが❤」

玉壺のこめかみに青筋が浮び上がる。
上官の寵姫。愛妻のイタズラに、ついに玉壺の堪忍袋の尾が切れた

「このちんくしゃのクソチビアマぁあ!!おとなしくしておれば!!………ひょっ!!」
血鬼術を放とうとした刹那
しのぶの背後に立った者の姿を認め玉壺は固まった。

「玉壺……しのぶちゃんはかわいいだろう?それに、俺の妻に何をするつもりだったんだい?」
貴重品を守るように、恭しくしのぶを後ろから包み込んだ美しい大男は玉壺を睨みつけている。

「あ、どぉまぁ❤おかえりなさぁい。
待ちくたびれて、退屈だったんだもの。ぎょこたんと遊んでたの」

体をふんわりと背後から抱きしめられ、嬉しそうにしのぶもふんわりと微笑んだ。

遊んでいただけでは無いだろう。先程まで、明らかに悪意に満ちた瞳、表情をしていたのだから。

(こんの、売女……悪女が)
玉壺が心の中で悪態をつくと、藤の蔓がぎゅうぅっと絞め上がり、珍妙な悲鳴をあげることとなった。

「どうしたんだい?しのぶちゃん。弱いものいじめはダメだろう?」
しゃがんで、しのぶと目線の高さを合わせてやる。

「違います!!本当にお遊びのようなものよ。
ついでに新しい術のお稽古を手伝って貰ってたのよ」

(嘘つけぇ!)
またもや玉壺が心の中でツッコミを入れる。

鬼の情報共有能力で、真実を知っている童磨はニヤニヤ笑っている。

「いやぁ、今日は良い夜だ。それにしても……あぁこれは片付けが大変だねぇ」
童磨は、床に散らばった豆を見渡した。

「ごめんなさい。ちゃんとお片付けしますね」
「あぁ、いいよ……玉壺……しのぶちゃんをからかって怒らせた罰。ちゃんと片付けしてね」

(ひょっ!!!童磨殿の鬼!悪魔!!この豆は毒!!触れな……)
「ぎょぉ~っこ 、お片付け。さ、しのぶちゃん。稽古なら俺が相手してあげるよ。鬼ごっこがいいかい?それとも投扇興?金毘羅船船?……ふふふ」
しのぶが甘えたように童磨にしなだれかかってくる。
これは、腹ぺこの証拠。
わかっているくせに、童磨は少し焦らした。

「稀血風呂がいいですぅ。それとぉ、美味しいごはん。お腹ぺこぺこ」
風呂で食事したいと言っている。
「ふふふ……しのぶちゃんの助平……良いよ、おいで」
着物の上から、しのぶの腰に自分の腰を押付け擦り上げた。

「早くぅ…………我慢出来ない……お腹すいたぁ」

その光景を玉壺はゲンナリと見つめる。

(売女……とカモ……うぎゃー)

氷の藤豆が散弾銃のように玉壺の体を貫いた。