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やこ
2025-02-11 11:00:00
4151文字
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pkmn夢
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ダイゴさんと幼馴染の話
□□
□□
□□
□□
□□
□□
【1】
「え、ダイゴくんカロス地方に行くの?」
「うん。来週、家の都合で」
「へぇ、良いなぁ海外」
休みの日にダイゴくんちに遊びに行って彼の部屋の高そうなソファで動画でも観ながらダラダラしていたら、「来週は居ないからね」なんて事を呆れた声で言われて思わず顔を上げた。
高いソファというのは座り心地がいいものだと思っていたのだが、革がピンと張られたダイゴくんちのソファは微妙に居心地が悪くて寝転がると身体中がバキバキと痛くなる。固いのは手持ちのポケモンと、あとその実は頑固な性格だけで充分だろうという言葉は、メタグロスが頭に乗っけて持って来てくれた紅茶と一緒に飲み込んだ。機嫌を損ねると部屋に入れてもらえなくなるかもしれないし、お茶もお菓子も出てこなくなるかもしれない。
「私、いつかこのお店に行ってみたいんだよねー」
代わりに、ちょうど眺めていた動画を指差しながら言う。カロス地方の人気店と銘打たれたその動画では、高級ブティックのドレスや三つ星レストランのフルコースがテンポよく紹介されている。庶民には手が出ない値段のものばかりだったが、そこまでとは言わずとも、人生一度くらいはカロス地方へ旅行しておしゃれなカフェでスイーツを食べたり綺麗な街並みを歩いてみたりしたいところだ。
「
□□
も来るかい?」
「
……
え、良いの!? 邪魔にならない?」
「大丈夫だよ、ついでだからね」
「(ついで?)行く!」
さすが、持つべきものは仲のいい御曹司の友達である。何かよく分からない言葉が聞こえた気もしたが、願ってもないダイゴくんの提案に、私は二つ返事で頷いたのだ。
【2】
「ここのレストランに行きたいから、その家の用事とやらが終わったら付き合って欲しいな」
飛行機の中で隣に座るダイゴくんに、旅行雑誌のとあるページを指さしながら言ったら、彼は妙に機嫌良く頷いた。
「うんうん、予約しておくよ」
「わあい、さすがダイゴくん!」
用事のついでとはいえ、ダイゴくんも海外旅行が楽しみなのかもしれない。案外、素直な一面も持ち合わせているじゃないか。
『この飛行機はおよそ20分で空港に着陸いたします
――
』
「ほら、もうすぐ着くから」
そんなことを考えていたら飛行機のアナウンスが流れて、周りの乗客も手荷物を片付けたりシートベルトを締め直したりと機内が慌ただしくなった。窓から外を覗くと既に陸地が見えてきていて、遠くの方に異国の街が確認できる。
「うわー。あ、あれなんだろ。でっかい公園みたいなのもある
……
」
「先にホテルに行くからね」
「帰りにあそこ寄れるかなー」
あっという間に飛行機が離陸して、ダイゴくんに急かされながら飛行機を降りる。
「ほら、とりあえずこっちだよ」
「あー、あっちの店から何かいい匂いが
……
」
「はいはい、後でね」
そんなこんなで、空港からホテルまで移動している間も、旅行雑誌を隅々まで読み返したり流れる街並みを眺めるのに忙しくて、私はダイゴくんの言う用事とやらをあんまり深く考えていなかったのだ。
「はい、じゃあこれ」
「うん? ああ、高級レストランだからドレスコード的な?」
だから、ホテルに荷物を預けてから休憩する間もなくブティックに連れて行かれて、なにやら上品なフォーマルドレスを渡されてようやく少しだけ不思議に思った。
……
あれ、ところでこれもう買ったの? 私お金持ってないよ? しかし、私のそんな疑問はあっさりと無視されてしまう。
「じゃあ、ボクもちょっと準備してくるから。店員さんの言うこと聞いて、しばらくここでじっとしててね」
「え、あ、ここエステ? 今日は妙に至れり尽くせりだね?」
そして、次に放り込まれた高そうなお店でマッサージやらエステやらが始まって、あまりの気持ちよさにその思考も四散する。縁に果物が刺さったドリンクまで出てきた。なんだここ天国かな。
エステが終わったと思ったら今度は先ほど渡されたドレスに着替えさせられてヘアセットやらメイクやらを施される。これで私もおしゃれなカロスっ子の仲間入りである。
「あれ、でももう着替えるの? ちょっとはやくない?」
これが終わったら、ダイゴくんが家の用事とやらを済ませてる間に、移動中に見えた雑貨屋さんと、あと雑誌に載っていた近くのカフェにも行きたいんだけど。
夜はレストランに行くから買い食いはなるべく我慢して、そうだ、家族や友達にもお土産を
――
……
。
【3】
「
……
って、思ってたんだけどなー」
「何か言った?」
気が付いたら、私はなぜかダイゴくんと一緒に、なにやら大勢の紳士淑女が集まるパーティー会場に立っていた。会場の隣には庭園が併設されているらしく、大きな窓から、美しい花々に囲まれてポケモンバトルに興じるジェントルマンの姿が見える。見たことのない水ポケモンの技が決まって、その水しぶきが太陽の光を浴びてキラキラと輝いた。ううん
……
バトルまでも優雅だ。いや、そんなことを考えている場合ではない。
「家の用事ってこれだったの!」
慌てて隣に立つダイゴくんに詰め寄る。どうやら、デボンコーポレーションの海外支店の創立記念パーティーに、お父さんの代わりに出ることになっていたらしい。あっさりと、そう白状された。
「私までパーティーに出るなんて聞いてない!」
「だって言ったら来ないだろう?」
「来ないよ! 私関係ないもん!」
ダイゴくんがまたあっさりとそう言ったものだから、私は思わず声を上げた。
「ダイゴ様、本日はご足労いただきありがとうございます」
「ああ、ご無沙汰しています」
いかにも仕事のできそうな紳士がダイゴくんに挨拶にきて眩暈がしてくる。私は無関係な一般人なのだ。場違いにも程がある。
どうにか今からでも外に出られないだろうか。こんなに大勢の人がいるのだから、しれっと会場を後にしてもバレないと思う。
「おや、そちらのお嬢さんは?」
「ボクの婚約者です。今日は良い機会なので皆さんにご挨拶をと」
「ん?」
思わず片眉を上げてダイゴくんの顔を見上げた。なんか今、気のせいじゃなく変なセリフが聞こえた。
しかし、私の渾身の訝しげな視線を無視して頭上で話が続く。
「ああ、それは素晴らしいことで」
「ねぇ
……
ダイゴく
……
」
「
□□
、支店長にご挨拶を」
「あっ、初めまして。
□□
と申します。ご招待ありがとうございます」
「これはこれは。この度はおめでとうございます」
「あ、これはご丁寧に
……
」
急に話を振られて、慌てて深々とお辞儀をしてしまった。
周りの何人かにも今の会話が聞こえていたらしく、あちこちから祝福の言葉が飛んでくる。
しまった、一気に注目の的である。しかも完全に訂正するタイミングを失った。
「それでは、挨拶がございますので私はこれで。後ほどお呼びしますので壇上でお言葉をいただけましたら
……
」
しばらく呆然としていたら、そう言って支店長が去って行ったので、私は軋む首を上げてどうにかダイゴくんに顔を向けた。
「ねぇダイゴく
……
ダイゴさん?」
「どうした?」
私の様子に、ダイゴくんが不思議そうに首を傾げる。いや、なんでそっちが不思議そうなんだ。
「婚約なんて聞いてないけど!」
「だって言ったら来ないだろう?」
「来ないよ! 私聞いてないもん!」
「でも今聞いたよね」
「!?」
ダイゴくんがまたあっさりとそう言って、私は目を丸くした。
だって、私とダイゴくんは、昔、偶然学校で同じクラスだっただけの、所謂ただの腐れ縁のはずなのだ。毎週のように家に遊びに行っても、全然そんな雰囲気にならなかったし。
……
そう思って、随分と昔に諦めてしまっていたのだ。
「ダイゴくんはもっと
……
それこそ、どこかの大企業の社長令嬢か、ポケモンバトルが強いトレーナーの女の人と政略結婚すると思ってた」
「どこの世界の話だよ」
「
……
自覚ないの?」
それでなくともホウエンチャンピオン。女の子なんて選びたい放題のはずだ。少なくとも、一般庶民の私とは住む世界が違うと思っていた。
「そんな大層な物じゃないよ。ボクだって好きな人と結婚するさ」
私の言葉に、「漫画の読みすぎだ」とダイゴくんが笑って言った。なんとなく納得がいかない気がしたが否定する言葉が出てこなくて、私は何も言えなかった。
その代わりに、別の質問を投げかける。我ながら往生際が悪いと思ったが、だって、まだ心の準備ができていないのだ。
「
……
じゃあ、ちゃんと好きな人を連れて来たら良いのに」
「あのね、好きな人って
□□
の事なんだけど」
「!?」
しかし、私の最後の逃げ道は、どうやらあっけなく塞がれてしまったらしい。
「普通、好きでもない男の部屋に来ないだろう。というか、ボクだって好きでもない子を毎週家に呼ばないよ」
ダイゴくんが呆れた声で言ったが、呆れたいのはこっちである。
「一応聞くけど、私の意見は?」
「え、だって
□□
もボクの事好きだろう?」
「すごい自信!」
おそるおそる尋ねてみたが、ダイゴくんの当然といった態度に、さっきとは別の意味で眩暈がしてきた。
顔に熱が集まって、多分、私はもう耳まで真っ赤になっている。
「でも、だって、ずっと友達だと思って諦めてたから、そんな急に言われても
……
」
「ボクが一番、
□□
を幸せにしてあげられるよ?」
「!?」
ダメ押しされた。またもや当然のようにいうものだから、段々とその通りな気がしてくる。
「あとは、そうだな
……
。婚約指輪には、ボクの秘蔵の、最高級の宝石を使おうか」
「!?
……
あ、いやそれはどっちでもいいかな」
「あれ? そうかい?」
「それより、部屋に柔らかいソファー置いていい?」
「ソファー? 後でレストランに行く前に店を覗いてみようか?」
ダイゴくんと顔を見合わせて苦笑する。置いてけぼりにされていた思考が、ようやく現実に追いついた。
「他に断る理由はあるかな」
「
……
ないかも
……
?」
あれ、この間読んだ漫画みたいだ。
そう思ったが、やっぱり黙っておくことにした。
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