猫澤
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 今日は、やけに世界が青い。

「司くん。帰ろうか」
「ああ」
HR後 ぼんやりと窓を眺めていた司に声をかける類
「何を見ていたんだい?」
「ん?」
「外。熱心に見つめていただろう?」
熱心に そうだっただろうか
「特にこれといった理由はないのだが……
「おや。とすると、僕はヤキモチ妬き損かな」
「む……ヤキモチ?」
「そうとも。いったい未来のスターの視線を独り占めしてるのはどこの誰なんだろうってね」
ふふ
……ばか言え。そんなの、お前以外にあるものか」
「おやおや……
なんだその顔は うれしそうとも、意外そうとも、愛想のようにも
「一応確認するが、オレ達付き合っているんだよな?」
「そうだねえ。昨晩、君が僕の気持ちを受け入れてくれたこの記憶が夢でなければね」
「奇遇だな。なんとオレも同じ記憶を持っている。きっとえむと寧々も覚えていると思うぞ」
「集団幻覚だったという可能性もあるかもしれない」
「何故そんなにも幻にしたがる⁉︎」

……だって、うれしすぎるじゃないか。君と相思相愛なんて」

「うれしすぎるのか」
「そうだよ」
ほんのりと赤らむ頬 つられてじわりと熱がはしる
「なるほど……だから今日は随分としおらしかったんだな」
「しおらしい?」
「いや、こっちの話だ」
爆発のない神高 先生もクラスメイトもなにかあったのかと心配していた
熱でもあるんじゃないかとか言って オレの目にはそうには見えなかったが
――「うれしすぎるじゃないか」
うれしすぎる……
世界が青く 澄んでいる
「今日は……
「うん」
「今日は、一段と世界がうつくしいと思ったんだ」
きらきらと光がきらめいて 風が運ぶ草木のにおいが 広がる空が
なにもかも青く感じられる
「いつもと同じ風景が、どこか違って見える。それが不思議で、何故だろうと考えていた」
でも、昨日の自分と、今日の自分で 変わったことといえば
秘めた恋が実って 類との関係が少し変化したくらいだ
「理由はわかったかい?」
「ああ。類のおかげでな!」
並んで昇降口を抜ける 今ならなんでもできる気がする
コツン ぶつかる手の甲
「手を……
「うん」
「手を、繋いでもいいだろうか」
「もちろんさ」
ぎゅ
「僕はそのうち、君とキスもしてみたいと思っているよ」
「そのうちなんだな」
「そのうち。今はダメだね。心臓が破裂してしまうから」
「うーむ……たしかに」
類とキスをする未来 今はあまり想像できないが、いつかそれも当たり前になる日がくるのだろう
手を繋ぐだけでこんなにもドキドキするのだから 当分先になりそうだ
だけど
「楽しみにしている」
きっと類の唇のやわらかさを知ったその日、また一段と世界は青く輝くことだろう