猫澤
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ショッピングモール
「あ! いたいた〜。司先輩!」
「む。遅いぞ暁山。先輩であるこのオレを待たせるとは……
「ゴメンね〜。ちょっと作業が立て込んでてさ。お詫びに今日はとことん先輩の買い物に付き合うから許して?」
「ぬ〜……まあ、それは助かるがな」

「たしか衣装用の布が欲しいんだったよね。司先輩、見かけによらず多才だよね〜」
「見かけによらずとはなんだ。見かけ通りだろうがっ」
「やだなあ、言葉の綾だってば」

「えーっと……今回の劇のテーマはピーターパンだっけ?」
「ピノキオだ。『ピ』しか合ってないぞ……
「あはは。でもなんか似てるじゃん、ピノキオとピーターパン」
「そうか?」
今回は類が脚本 司は衣装と小道具担当 手芸屋うろうろ
「これとか、あとこの布もオススメだよ。破れにくいから物持ちいいし」
「なるほど。さすが、類と寧々の衣装を作っただけあるな。参考になる」
「ふふーん? お礼に後でクレープ奢ってくれてもいいよ? 司せ、ん、ぱ、い?」
「お前は……。ええい、まあいいだろう! クレープくらい奢ってやる!」
「わーい先輩だあいすき!」
ぎゅっ
――ねえ、あそこのカップルかわいい〜」
「む」

「ありゃ……ゴメンね先輩。ボクがカワイイせいで」
「ふむ。オレのスターなオーラが眩いあまり目立ち過ぎてしまったのかもしれないな?」
「スターなオーラって……

「気にするな。一過性の他人の評価なら言わせておけばいい」
……でも司先輩、類と付き合ってるのに」
「げほっ」

「あ、暁山……なん、なぜ、」
「いやあ……バレバレでしょ。特に類がね〜」
「ああ……暁山は類と昔馴染みだったか……

「昔の類、気になる?」
……正直、気にならないといえば嘘になるが……あいつにとってあまり良い記憶でなかったことだけはわかるからな。類が話したいと思えるようになるまで、オレは触れないでおこうと思っている」

「ふーん。でもまあ、正解かな〜? 昔の類ってずーっとぼんやりしてて何考えてるんだかよくわかんないヤツだったし」
「よくわかんないのは今もじゃないか?」
「あ〜、そうかも!」

……どうせなら、暁山から見た今の類のことを聞きたい」
「今の類? ……楽しそうだよ」
「そうか」
「うん。本当に……司先輩のこと大好きなんだなあって伝わってくる」
……
「あはは。照れてる〜」

「お前、先輩をからかうのは――

――……司くん?」
「ん?」
「あ。類だ。やっほー」

「瑞希も一緒なのかい? 珍しい組み合わせだね」
「デートだよ。ね〜? 司先輩?」
「ん? ああ……そうだな……?」
……デート……?」

「司くん。僕浮気はあまり許せない方の人間なんだけど、一応君の申し開きを聞こうか」

「いや違う。間違えたんだ。咲希のやつが一歌――友達と遊ぶことをデートと言うから、若い子はそう言うものなのかと……
「若い子って。ひとつしか変わらないんだけどなあ」
「暁山も紛らわしい言い方をするんじゃない」
「え〜? ボクのせい?」

「暁山には今度のショーで使う衣装の布選びを手伝ってもらっていただけだ」
「そうそうそれだけ。まあさっきちょっとカレカノに間違えられたりもしちゃったけどね〜?」
「待て待て待て待て。おい暁山、なんでこのタイミングで余計なことを言った.? ややこしくなるだろうが!」
……
むっすーとした顔の類 ぎゅ
「へぁ……るっ、るるる類! おま、あ、暁山が見てる前でっ!」
「司くんの恋人は、僕だよ」
「っ」

「そんなの、……当然だ……
……え」
まっかっか ぎゅむぎゅむ
「むぐっ、るい、くるし……
「どうして君は、瑞希がいる前でそんな可愛い顔するんだろうね……
類も大概かわいい顔をしてると思うが
ぎゅうぎゅう
「むむむむ、むぐぐ、しぬ、ぎぶ、ぎぶ……
「あー……。類〜? そのままだと司先輩窒息死しちゃうよ〜?」
「あ」

「あ……危うく三途の河を渡りかけたぞ……
「すまないね。愛しさ余って憎さ百倍というやつだよ」
「絶対違うだろそれ!」

「まあ、言うほど心配はしてないんだけどね。相手は瑞希だし。……それで、良い布は見つかったのかい?」
「ああ! 早速今夜から作り始めるから、期待しててくれ」
「楽しみにしてるよ」

「と。すまないが少々お手洗いに行ってくる」
「いってらっしゃい」

「心配してない――の割に、結構本気でヤキモチやいちゃってなかった?」
「だって彼は、僕の司くんだからね」

「やっぱ類、変わったよね。昔は……この世界に存在する全てがショーの登場人物だ〜みたいな感じだったのに。司先輩は違うんだ?」
……
「ま、わからなくもないか。あの人意外と、結構ちゃんとしてるもんね」

「今は類と付き合ってても、うかうかしてたら逃げられちゃうかもね〜?」
「ご忠告どうもありがとう。ちゃんと繋いでおくから大丈夫だよ」
……え〜? こわ〜い」
「おや? 何を想像したのかな。手のことだよ?」

「すまないな、待たせた」

「じゃあ待たせた罰として司先輩は、類にもクレープを奢ること!」
「なっ……待たせたとは言ったが、それほど待たせてはないはずだぞ!?」
「瑞希……。クレープくらい自分で払うよ。というか、司くんと瑞希の分も僕に奢らせてほしい」
「え? いいの?」
「は? おい、別にオレ達の分まで類が奢る必要は……

「君が僕以外の誰かに優しさを向けるのは……ちょっとだけ、つまらないんだよ」
こそ
……もしかして、ヤキモチか?」
「もしかしなくてもヤキモチだねえ」
…………そ、そうか」
ぎゅ
……オレはお前以外に目移りするつもりも、予定もないぞ」
「司くん……

「おふたりさーん? ボクがいること忘れないでほしいなあ?」
「はっ……すまん!」
「別にいいけどね〜? ホラ早く行こ行こ。ボクもうおなかすいちゃった!」

いつもはコーラだけど、今日はノンシュガーの紅茶にしようかな?