猫澤
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 これはオレが体験した、本当にあったこわい話だ。

「こっくりさんをしよう、司くん」
「は?」

「こっ……なんだって? こっくりさん? 誰だそいつは」
「こっくりさんを知らないのかい? 巷では有名な話だよ」
「聞いたこともないが……
「おやおや……君は存外、真面目な人生を送ってるねえ。そんなにヤンチャな見た目をしているのに」
「なにー!? お前にだけは言われたくない台詞ランキング堂々の一位にランクインだ! おめでとう!」

「こっくりさんはね……有り体に言えば降霊術さ」
「こーれーじゅつ」
「霊を呼び寄せるんだよ」
「れい……霊!? こわいやつか!?」

「駄目だ断る! こわい話は天馬家NGだ」
「一家揃ってダメなのかい?」
「もし呪われたり祟られたりしたらどうする! オレの華々しいスター人生がめちゃくちゃになってしまうだろうが!」
「呪いや祟りを信じてるんだね……

「まあまあ。こっくりさんはきちんと順序を踏めば呪いも祟りも起きないから安心して」
「む……だが霊は霊だろう?」
「ところでここに紙とペンがあるんだけどね?」
「話の進め方がいつにも増して雑だな!? なんだなんだ何を始める気だ……!」

……五十音表?」
「うん。あとは『yes』『no』の文字と……鳥居を足して、できあがり」

「司くんも十円玉に指をのせてみてくれるかい?」
「こうか?」
「それじゃあ始めるね」
「待て待て待て待て」
「あ、指離すと呪われるよ」
「本当に待て!?」

「こっくりさんこっくりさん、どうぞおいでください……
……おわっ、十円玉が勝手に動いた!?」
「どうやら無事降霊術に成功したみたいだね。さ、司くん。こっくりさんに何か質問して」
「質問だと?」
「聞きたいこと、知りたいこと、何でもこっくりさんが答えてくれるよ。たとえば『次のショーは成功しますか』とか」
「そんなもの、こっくりさんに聞くまでもなく大成功だ!」
「うんうん。僕もそう思うよ。さすがは司くんだね」

「そうだな……『類の野菜嫌いは克服されますか』でどうだ「『no』だね」……おい! 今のはお前が動かしただろう!」
「まさかまさか。そんな不正はしないよ。ほら、僕のこの純粋な瞳を見てごらん。嘘をつくように見えるかい?」
「そうか。不正じゃないならいい」
「今のは君がチョロすぎて心配になる台詞ランキング七位ぐらいに相当するね」
「半端だな。……いやオレはチョロくないが!?」

「じゃあ次は僕が質問しようかな」
「好きにしてくれ……休み時間ももうじき終わってしまうぞ」
「こっくりさんこっくりさん、『司くんに好きな人はいますか?』」
「は?」
「おや。『yes』だ」
「は?」
「こっくりさんこっくりさん、『その相手は誰ですか?』」
「は!? 待て待て待て、待て、待て! お前っ! 類! 動かすな!」
「『か、み、し、ろ、る、い』……
「待てええええい!」

「不正だ!」
「不正じゃないよ。いやあ、うれしいなあ。両思いだね、僕達」
「違うぞ!? お前のことは友達として好きって意味だぞ!?」
「一生幸せにするよ」
「やめろプロポーズをするんじゃない!」
「とりあえず今日、僕の家に来るかい?」
「絶対に行かんわ!」

「はっ、予鈴! おい類、こっくりさんはどうやって終わらせるんだ。早くしないと先生が来てしまう」
「さあ?」
「素っ惚けるなー! このまま指を離したら呪われてしまうだろうが!」

「こらー! 天馬! 神代! またお前達か! 休み時間はとっくに終わってるぞ!」
「先生! これには深い事情が……! あっ!? 類のやついつの間に逃げ……って結局どうやって終わらせればいいんだこれは――!?」

 これはオレが体験した、本当にあったこわい話である。

モブ(あいつら教室の真ん中で何やってんだ……