猫澤
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「し、し、しまったああああ――‼︎‼︎‼︎」

「もーお兄ちゃん! そんなに大声出したらご近所さんに迷惑でしょ!」
「す、すまん咲希!」

「お兄ちゃんもしかして……宿題、終わってないの?」
「ギクーッ」

「お芝居で忙しかったのはわかるけど、宿題もちゃんとコツコツやらなきゃ」
「ぐ、ぐうの音も出ん……。そういう咲希はもう終わったのか?」
「ふっふーん。アタシはバンドの練習の後にいっちゃん達とセカ……んんっ、カフェでお勉強会してるから! もうばっちり終わってるよ〜」

「まだ夏休みが終わったわけじゃないんだし、今からでも頑張れば間に合うんじゃないかなあ」
……そうだな。くよくよしても仕方がない! うおおお! やるぞ! オレは!」
「その調子その調子♪ がんばれお兄ちゃん!」
あとでお夜食持ってくるね できた妹だ……
「こんなことなら、オレ達も練習の後に課題の時間を設けておくべきだったか……
類は終わったのだろうか これから数日はショーの練習もない
スマホに手を伸ばす

 ***

「急に押しかけるような形になってすまないな」
「なに、気にしないでおくれよ。僕と君の仲じゃないか」
相変わらず散らかっているな…… だが涼しい
大したものではないが茶菓子だ ありがとう あとで一緒にいただこうか
「いまお茶を用意するね。麦茶でよかったかな」
「助かる。道中ですっかり汗だくになってしまった」
「フフ。この暑さではね」
くつろいでいて
類のにおいがする
「お待たせ」
カラン
甘い麦茶
「相変わらず、類の家の麦茶は甘いな」
「脳の疲労回復にいいんだよ。ミネラルと一緒に糖分が摂取できるからね。効率的だろう?」

「それで、どの課題が終わってないんだい?」
「数学のワークと生物のプリントと小論文だな……
「なるほど。司くんのことだからまるっと全教科忘れている可能性も視野に入れていたけれど、思っていたより少ないね」
「少ないか? ワークは丸っと全ページ白紙だぞ」

「それでもすぐ片付くと思うよ。僕はショーに専念したかったから夏休みの初日に課題は全てさっさと片付けてしまったけれど……ほとんどが基礎問題だし、捻った問題もなかったはずだ」
「そ、そうなのか」
「仮に難しい問題があったとしても、僕がヒントを出すよ。座長の苦難とあれば喜んで力を貸そうじゃないか」

「では今日のところはとりあえず数学からやっつけてしまおうか。応用問題は一旦飛ばして、解けるところまで自力で解いてごらん」
「よしわかった!」
かりかり
「類、ここの問題なんだが」
はた 眼鏡だ
「珍しいな、視力悪かったのか」
「ん? ――ああ、少しだけね。裸眼でも視えるけど、授業中はたまに掛けるようにしているよ」
「お前もちゃんとまじめに授業を受けているんだな」
「まさか。カモフラージュさ」
……
「こうしていると、まじめに授業を受けているように見えるだろう?」
…………
類に教鞭を執る先生が気の毒に思えてきたぞ、オレは。
ちら 真面目な顔 改めてみると整った顔立ちだよな
目が合う
「解き方、わからなくなってしまったかい?」
「どわーッ、す、すまん、不躾に!」
「構わないよ。見て減るものでもないしね」
いつもと違う姿だからか妙にどきどきする
「そこは正弦定理だから……うん、そう、正解だ」
「で、できたー!」
「お疲れ様。ちょっと休憩にしようか」
甘い麦茶が染み渡る 夏の気配
「夏休みももう終わりか……
思えばこの夏、ほとんど類と過ごしていた気がする
いままでの生活では考えられなかった こんなにショー三昧の日々を送れるとは
……楽しかったな」
「僕もだよ」
「! そうか……。そうか」
かみしめる
麦茶 カラン 蝉の音
目を細める類 どき ……どき?
……?)