ちゃび
2025-02-01 03:03:00
1292文字
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暁月ラストの自機ヒカセンの話

暁月ラストバレあり

力を比べて戦うこと、それ自体は好きだった。

こんな時でなかったなら──、命の奪い合いではない、手合わせという形でならば、再戦を望むゼノスの望みには応えようとオミローは考えていた。
そうしなければゼノスは止まらず皆を危険に晒すだろう……、という理由だけではなく、確かに自身の望みとして、彼との再戦には興味があったのだ。

だが要望は殺し合いだという。
負けるつもりは決してないが、万が一にも死ぬわけにはいかない。

今まで、この背にいくつの希望をのせただろう。

数えきれない程の願いを、悲しみを、憎しみを……、そして命をのせてきた。

自分の命は今や世界の命なのだと、ともすれば傲慢な、しかし自惚れでも誇張でもない静かな決意としてオミローはそれを認識していた。

実家にいたあの頃、命について深く考える機会はなく、兄が危険な仕事から守ってくれていたのだと、無邪気な自分を思い返す。
第七霊災で集落の仲間が帰らぬ人となった時も、その後も生き延びることに必死で、死を見聞きしてもそれを哲学的に想う余裕などないまま、許しを得て旅に出た。


命が奪われる悲しみ、奪った命の人生が戻らないこと、自分が奪ったことで救えた他の命に対する歓び……
その全てを託された時に踏み出す足の重さ。
全て「英雄」と呼ばれてから知ったことだ。


知ってしまったからこそ、それらの命を無駄にしないことがオミローの生きる指針となった。
あの地下水道では苦しみにも思えた筈の、希望の灯火たれとの仲間の想いが、いつの間にか己が希望になった。

皆のために、自分のために、灯火は消さない。
そのために、殺し合いや命運をかけた戦いは手段として考え、いつだって嗜好の枠におさめることはなかったのだ。

だけど、今。

「なあ……『冒険者』よ。」

ああ、希望の灯火は続いていくだろうか。
絶望は希望の唄を歌い、青い鳥も羽ばたいた。
駄目だと叫んだアリゼーの悲痛な顔を思い出す。
あの顔を自分が見る日がくるなんて!
きっと無事に転送されていると信じる。

今まで、力で自分に敵う人などいなかった。
師匠も先輩も兄弟子も、気づけば追い越してしまっていた。
だから、面と向かって手も足も出ないような相手がいる可能性のことなど、考えることもなくなっていたのに。
知ってしまったから、その期待をここまで持ってきてしまった。

英雄が戻らないことを、皆が悲しむだろう。
そして怒って、自分を責めるかもしれない。
オミローが幾度も抱いてきた、やるせない憤りと共に、この先ずっと生きていくのかもしれない。

それでも、今はこれが自分の「やりたいこと」なのだと思った。
「やりたいことをなさい」と、言い続けてくれていた人の言葉が、今だから分かる。

世界は救った。
灯火も渡した。
じゃあ、次にやりたかったことをしよう。

本当に、そのとおりだ!」

この欲求がゼノスの言う「愉しみ」なのかどうか、考えるのは面倒だ。
詳しいことは、いつか星海でまた皆に会ってから相談してみればいい。

もう一度、力比べをしたいだけなんだから。