ちゃび
2025-02-01 02:51:42
4248文字
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グリダニア出身エレゼンとアラミゴ人の解放軍モブと自機ヒカセンの話

墓地の話など捏造しています
ヒカセン→オミロー・フワフワ(シェーダー集落出身のハーフのエレゼン)



「暁」という組織はずいぶん少人数らしい。
少ないうえに子供まで連れている。
流石に今、遠くに見えている彼らで全構成員ということはないと思われるが、本当に戦力として期待できるのか、と疑問が浮かぶ。

まあ、あの組織には偉大なカーティス様の娘さんや噂の英雄様が在籍しているのだから、他の者はその付き添いなのかもしれない。

「おい、見たかい相棒!あの、ひときわ背の高いお方が光の戦士様だぞ」

「背丈はお前だってそう変わらんだろう

人の背中を気安く叩くエレゼン男、ジョルランの決まり文句は、暁御一行がこのキャンプに滞在するようになってから飽きる程聞いたものだ。

隣国グリダニアからはるばるやって来たジョルランというこの男は、光の戦士に憧れて解放軍に志願したのだというから、感動も一塩なのだ……、と少々うんざりしつつ受け流すことにしている。

「それで、光の戦士とは挨拶のひとつでも出来たのか?」

それを言うと、きまって肩をすくめて「俺達はそんな身分じゃないだろ」とカラカラ笑うのがなんとも気が抜ける。

この男の話を聞いていると、自分は生粋のアラミゴ人だ、と思わされる。
アラミゴに生まれ、幼い頃からアラミゴ解放軍の両親のもとで育った自分は、アラミゴの解放のために戦うのが当然として生きてきた。
アラミゴ人であることは俺の誇りだ。

グリダニアにも軍隊があることは知っている。
今度の戦いに至ってはエオルゼア同盟軍として参戦もするというのに、なぜ自国の軍に入隊しなかったのか、と聞いたことがある。
後から聞いたところによると光の戦士も冒険者部隊に所属しているという話だ、その方がお近づきになれるのではないか、と。

それを聞くなり彼は「いいやハンフリッド、君」と、片眉をわざとらしく上げた。

「フワフワ様は私の憧れだが、そればかりが志願の理由じゃないさ。グリダニアの民間人がアラミゴの戦火をどう思っているか知っているかい──自分達に被害が及ばないか気にしているものばかりなんだよ。挙句の果てには去る紅葉戦争の遺恨を持ち出す者までいる始末!双蛇党も同じような者が多いんじゃないかと思ってね。私のような、過去にしがらみのない若者が立ち上がらなくては……、と思ったのさ」

素直に感心したものだ。
俺がもしアラミゴに生まれていなくても、他人の国のために剣を取ることが出来ただろうか。
正直な話、自分とて今まではグリダニアに良い印象を持ってはいなかった。
そういった国のために身を呈して戦う選択を自分はしないだろう。

「もちろん、グリダニアには私の母がいるから、戦火が黒衣森を越えてやってくる前に防げたら……という心もあるがね」

「お前、何も考えていない優男かと思っていたが、骨があるんだなあ。あの英雄様がどこの出身かってのは知らんが、暁ってのはあちこちの国の問題を助けているんだろ? お前も英雄の素質があるんじゃないか?」

「おお!それは本当か!?ああ、いつかフワフワ様と同じ戦場で戦えたらいいなあ」

急に飛躍する彼の話をやれやれとやり過ごしているうちに休憩を終え、任務へ戻った。

結局、我々がかの解放者と同じ戦場で戦ったのは最後のただ一度だけだった。



かつてアラミゴ王族が闊歩していただろう王宮に、砲弾によりズドンと揺れる地響きと、いくつもの発砲音に剣を交える音、叫び声……
戦況はどうなっている?
随分前にフワフワさんが率いる冒険者部隊が突破して行くのを横目に見た。
決して押されてはいないはずだ。

辺りを見渡し、王宮の奥より駆けてくる者の姿が視界に入り、神経を尖らせたその時。

「聞けェ──ッ」

「敵将ゼノス・イェー・ガルヴァス、オミロー・フワフワに敗れたり──ッ」

「帝国の者は降伏せよ!!!ゼノスは死んだ!帝国は降伏せよ!ゼノスが死んだぞォ──ッ」

──勝った。

勝利だ!俺たちの!アラミゴの!!
スゲェ!本当にやっちまった!
誰からとも分からぬ雄叫びをあげ、みな一斉に王宮の奥へと駆け出す。

駆けながらも勝利の報に気が緩んだのか、ふと、傍に倒れている敵味方入り乱れた身体のうちの一体が気になった。
負傷者がいれば先に治療をしなくては──そう思ったのかもしれない。
何故あの時あの熱狂の中で立ち止まれたのか、俺は今でもよく分からない。

「──ジョルラン」

そこに横たわっていたのは、あの気安く陽気なエレゼン男の血まみれの身体だったのだ。

「お前!大丈夫か!」

……ハ、ハンフリッドか?戦いは、どう、なった……

「俺達の勝ちだ!フワフワさんが、お前の英雄がゼノスを討ったんだ、俺達アラミゴ解放軍の勝利だぞ!」

「最高、だ……!さすが、さすが光の、……ッ!!」

咳き込んで吐き出された血が、胸元のスカーフを濡らしていく。
腹をやられたのか。俺の力で止められる出血か?いや、止めなければ。

「おい、もう話すな、傷に触るから」

「いや……、もう、駄目だ」

「何言ってる!俺達が……、フワフワさんが勝ったんだぞ!一緒に戦ったんだって、声をかけたらいい!」

「そうだ……、解放だ、お前、良かったなあ……お前の、お母上は、誇らしいだろう……

血が止まらない。
喋るなと言ってるじゃないか。

「私も、か、母さんに……あの方と、ともに戦ったって言ったら、ふふ、どんな、顔……

「そうだ、そうだぞ、報告しに行かねば! お前の怪我が治ったら俺も一緒にグリダニアへ行くからな、だからお前──」

「はは、それは楽しみだ……ッ」

「待て!」

目を閉じるな。
なんで血が止まらないんだ!

「はあ、死にたく、ないなあ……



来たれ……彷徨いし同胞たち……
家と炉を……奪われた人々よ……

俺達の歌が聞こえる。
父と母から繰り返し聞かされた、本当の歌だ。

天に輝く……「導きの星」の下……

ああ──、勝ったんだ……

勇者たちの聖域あり……



アラミゴ解放軍は、今やアラミゴ人だけで構成された集団ではない。エオルゼア各地より志願者が訪れてその人数を増やしてきた。

つまり、此度の解放戦争の戦死者の身元もバラバラと言うわけだ。中には仲間の誰にも素性を語らず身元が分からない者もいれば、出身国は判明していれども個々を分けて各国へ帰すには時間がかかりすぎ、腐敗が始まる前にブラッドハウ墓地へ埋葬することとなった者も多い。

ジョルランは後者だった。
王宮から墓地への搬送には自分も協力したし、彼の埋葬は自分が担当した。

今日はそのブラッドハウ墓地へやってきた。
同胞の戦友たちの弔いは当然だが、遺族が三国からアラミゴへ訪れるには未だ来訪手段が混乱しているため、代わりに祈りを捧げたいと思ったのだ。
我々アラミゴ人は、どうしても同胞への想いを最優先にしがちだ。
そうしなければ、こうして生き残ることができなかったのだから、それは仕方がないことだ。
だから、代わりに自分がやろう。
「過去にしがらみのない若い自分が──」と、あいつがそう言ったことを、今度は自分もやれるのかもしれないと思う。

ブラッドハウ墓地は入口の低所から高所へと上がるつくりとなっており、奥にはかつてのアラミゴ王族の墓所を抱えている。
その周りを民間人の墓がぐるりと囲み、空いた場所を利用した非アラミゴ人の戦死者が眠る共同墓地のエリアが点在している。

まずはジョルランのもとへ向かおうと顔を向けると、思いもよらぬ先客があった。
兵士達の墓へ向けて、深く頭をさげて黙祷を捧げるその人物までは少々距離があったが、遠目だからこそ見覚えがあった。

「解ほ……、フワフワさん!」

解放者の顔が、視線がこちらへ向けられた。
思わず声をかけたが、祈りを邪魔したのだ。
何か言わなければ、と冷や汗をかきつつ駆け寄る。

「すみません、邪魔してしまって、俺……

「いや、大丈夫です。解放軍の人ですか」

「は、はい!戦友がここに眠っていて」

そうですか、と文句も言わずに相槌を打つその顔は、キャンプで遠くから見た、人の好さそうな顔とも王宮で横目に見た鬼気迫る顔とも違い、どこか幼く、力なく見えた。

「あの、その戦友……友人は、グリダニアから志願してきたやつで……、貴方に憧れていて、最期は王宮の戦いでもご一緒していたんです」

……はい」

「最期まで、貴方と同じ戦場で戦えたことを喜んでいて」

「はい」

「あ──、なんだ、あの、だから……、ゼノスを倒してくださってありがとうございました!」

「はい」

沈黙が流れた。
あいつじゃあるまいし、英雄と話すことがこんなに緊張するとは。

「名前は?」

「え?」

「君と、君の友達の名前」

「え、あ、友人がジョルランで、自分がハンフリッドです」

ジョルランさんとハンフリッドさん、と復唱して彼は墓へ向き直り、再度黙祷を始めたので、自分も後を追って祈る。

しばしの間、流れる風と風が運ぶ砂や草の音が会話で高鳴った心臓を鎮めた。

深呼吸をして目を開けると、待っていてくれたのであろう、彼は既に顔を上げて遠くの山々へ目をやっていた。

「ありがとうございました」

礼を告げると、英雄は微笑んでもう一度「ジョルランとハンフリッドさん」と俺達の名を呼び、去っていった。

背中を見送りながら、「ジョルランより背が高かったなあ」とか、あいつはそれを分かった上で「あのひときわ大きいお方が……」と言っていたのだろうか、などとぼんやり考えていた。

「なあ、見てたか?俺、あの人と喋ったぞ。はは、羨ましいだろう」

こんなことを自分が言われた時には否定しそうだが、あいつは素直に「いいなあ、羨ましいなあ」と言うのだろう。

さて、遺品は俺が預かっているが、これは返すところに返すべきだ。

落ち着いたらグリダニアへ行く。
あいつは自身の経歴をペラペラとよく話すやつだったので、実家もすぐに探すことができるだろう。

「お前、本当はグリダニアに帰りたいだろうが、我慢してここで待っててくれよ。お前の母さんに活躍をじっくり話してきてやるからな……

ギラバニアの外に出るのは始めてだ。
グリダニア人は森の奥で暮らしているらしい。
同胞たちが迫害を受けたという村の実態も、自分の目で確かめてみよう。