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awase
2025-02-01 02:36:38
3556文字
Public
ボルト
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更地
クラブで女遊びしてるカワキとボルト
他意のないナルト←カワキ
ふんわりとボルト→サラダ
鼻の先をかすめる甘ったるい香水。
最近どの女の子もつけている、モテ香水と名高いアンバーバニラの香りは体温があがるほどバニラが強くなって色っぽい、だっけ。服の袖を引かれ、背伸びをしながら耳打ちしてくるその子から絶えず漂う甘い香りに、公式サイトの謳い文句を思い出しながら耳を傾ける。
「なに?」
周囲の音が爆音すぎて聞こえない。右肩を下げ、身を寄せると女の子のパンプスのヒールがフロアの床についた。酔っている指先が首に伝う。
「どこから来たの?」
近すぎて耳に触れた唇からそのように言われ、正直に答えるかどうか迷う。このような場所にまで来れば、誰一人として木の葉の里の火影の息子だとは気づきはしない。
火影も大したことねーな、と思いながら、やはり素直に答えるのはやめた。
「内緒」
同じように耳打ちをすれば、ボルトの顔を正面から見た女の子の表情に好意的な色が浮かぶ。この遊びに意味はないとわかっていても、自分のことを知らない人ばかりの空間で暇を潰すことと、僅かな好意を釣り上げることで満たされる自尊心が癖になりなかなかやめられずにいた。
火の国からふたつほど国を跨いだ場所にある辺鄙な国。東側にある国とはほとんど交流がないせいか、このように近代的な街並みがあることをボルトは半年前まで知らなかった。雷車で遥々訪れるには遠すぎるので、最近はもっぱら飛雷神で飛んでいる。もっとも、こんな場所に来ようという気は日中は少しも浮かばない。夜中、なかなか寝つけない時にゲームにも飽きて突発的に遊ぶくらいだ。
「VIPつけてる」
女の子がボルトのリストバンドの色を見て言う。眠くなったら寝たいという理由でいつもVIPを取っている。夜中に抜け出したことがバレてエイダが追ってくることもあるため、ソファがいいだのドリンクを自分で取りに行きたくないだの、なにかとうるさいあいつを黙らすためにも。
「うん」
「いいなぁ」
「一緒飲む?」
そう言うと、わかりやすく喜ぶ。やっぱ忍じゃない女の子はかわいい。軽く肘に触れバーカウンターに誘導すると、ちょうど外から戻ってきたカワキがそのあたりにあった灰皿をカウンターに擦らせながら無言で隣に並んでくるので、たかってくんな、と言えば全く無視をして適当なアルコールを頼んだためげんなりした。
あーやだ。女の子の視線を一気に奪われたことに気持ちが萎える。20センチも背の高いカワキに並ばれると、これまで自分が引けていた好意を横取りされることが多々だった。
「この人も一緒に来たの?」
「そぉ」
耳打ちに頷けば、女の子が下のフロアで遊んでいたツレらしき子を手招きする。その子もその子で別の男と話していたが、カワキを見るや否や階段を上がってきたので、やっぱハズレかも、と思う。
ここからはお決まり、カワキの独壇場だ。女に全く興味を示さないカワキの振る舞いがまた妙にモテて、取り合いが始まることは目に見えている。
で、オレはまたお財布係ねー。面倒で、万札を渡し集まった4人をバーテンダーに向かって指し示す。いちいちドリンクが欲しい時に呼びつけられるのが嫌なので、同じ顔なら金額が尽きるまでは出してほしいことを伝えると、興味なさげに頷いたバーテンダーがフリードリンクのコインを4人に渡した。
「また女遊びしてんのか」
新品の煙草を開けたカワキが、静電気で指に張り付いたビニールを鬱陶しげに払う。
こいつもこいつで、なんで速攻で好感度下げてくるわけ?提供されたドリンクをひとくち飲むとテキーラサンライズだった。カシオレかと思って油断して口にしたため、しっかり混ざっていなかったテキーラがややきつい。
「女遊びしてるんだぁ」
最初に声をかけてきた子がぴとりと寄り添いボルトの顔を覗き込む。曖昧に首を傾げながら、カワキの方がいいならどうぞ、と落としたい気持ちが完全に失せた。
カウンター前に溜まっていたせいで、あっち行って、とバーテンダーに言われ場所を移動する。1階のフロアは禁煙のため、カワキは2階から動かない。元いた場所にぞろぞろと戻り、なんとなく会話がなくなって、結局こういうとき話題をまわすのはボルトなのだ。
ピエロすぎだろ、という気持ちで毎度後悔するのに、なぜか毎回やってしまう。カワキのようにまるきり受け身で空気を読まない行動は性格上できなかった。
「ここよく来るの?」
別に聞きたいわけでもないことを尋ねる。女の子たちは決して本当のことを言わない。
「今日はじめて来た」
「ね、あんまクラブ来ないよね」
それ、意味あるのか?遊び慣れてない方がよいはずだ、という方程式から導かれているらしい答えに、最早これを聞くために自分はこの場に来ているのではないかと思う。どれだけたくさんの「今日はじめて」を収集できるかのゲームをしている気分だ。
「そうなんだ」
「お兄さんたちはぁ?」
案外ボルトの隣から離れないその子が再び耳打ちをする。さっきまでかなり萎えていたが、こっちの子は気があるのかも?そう思うと悪い気はしない。
「週7で来てる」
「やば」
あはは、と女の子が笑ってボルトの腕に触れる。
これ、いけんじゃね⁉︎カワキの隣にいる女の子も、特に自発的に喋るわけでもなく、友達とボルトの会話を聞きながら笑っている。
勝機きてんな。カワキがクラブでモテなかったことなど、この半年で一度たりともなかったのに。
カワキはカチ、とライターを弾くと煙草に火をつける。店内の風の流れをぼんやりと眺めたあと、隣の女の子と場所を代わる様子をボルトは見逃さなかった。
「え、なに?」
「煙そっちに流れてそう」
肩を掴まれ移動させられた女の子が、カ、と顔を赤らめる。暗い室内、照明の灯りが一瞬白っぽくなった時にわかった。かましてんじゃねー!ボルトが睨みつけると、カワキは素知らぬ顔で全く無視をした。
「めっちゃ飲み会っぽいこと聞いていい?」
顔を赤くしている女の子が、両手で頬を包みながら上目で言う。こういう所作も見慣れているのに、やっぱ一般の子はかわいいな、という気持ちにさせてくれる。
「女の子のタイプ知りたいな。ピアスのお兄さんから」
今日はピアス部分がピックアップされたのか、とボルトはグラスを傾けながら思う。日によって、ツーブロのお兄さんだったり顔タトゥーのお兄さんだったりするカワキだが、今日は眉ピアス部分に注目されたらしい。
そして、この質問はあまりよくない。度々聞かれるが、その度ボルトが発狂し暴れる羽目になっている。カワキは灰皿に煙草を押しつけながら、「短髪」と切り出した。
「短髪?ショートってこと?」
「いや、短髪。で、金髪。身長180センチくらいの人」
「キッッッッ」
ッッッッショ!突然声を上げたボルトに隣の女の子がなに!?と驚く。
キモすぎる、こいつ!ぶわっと鳥肌が立ち、毎回新鮮な嫌悪感をくれるカワキに感心する。鳥肌の治まらない腕をさすり睨みつけても、自分語りチャンスを得たカワキは止まらない。
「白が似合うとより好みかもな」
「へー
……
ピンポイントだね」
「名前3文字とかだと、最高」
意味不明だしキモい。ガタガタと震えながらグラスを傾けると、カワキは満足したようだった。本心かどうかは置いといて、ボルトをこのように満身創痍状態にするのを近頃のトレンドにしている。
「お兄さんは?」
もはやカワキを狙うことは諦めたのか、さっきまで期待十分だったその子がボルトに狙いを定める。
どんな子が好きなの?と隣の子に腕を組まれ、アェ〜という気分になる。きみみたいな子♡と言いたい気持ちは山ほどあるのに、何故かこの口は一切嘘をつかず、澱みなく本音を語り出す。
「ベリーショートの黒髪で眼鏡かけてる太ももむちむちな子」
早口で言うと、場が冷める気配をありありと感じた。対面のカワキが、「キメー」と呟く。
そうなんだ〜と微妙に離れて行った女の子たちに悪口を言われている気配を感じながら、結局カワキとふたりで飲む羽目になった。
「お前、ほんとにキモいからやめとけ」
「お前だろ!?人の父親性的に見てくんじゃねえってばさ!」
「テメーも、師匠の娘のこと性的に見てんじゃねーよ」
やはりこいつは家から追い出すべきかもしれない。
そう思いながらポケットで震える携帯を手に取ると、エイダから毎秒メッセージが入っていた。すぐ帰ってこないならそっち行くから、というメッセージに、印を結んで自宅に戻れば、我が物顔で部屋にいたエイダが「寂しかったんですけど」とカワキの袖を引っ張って、こいつもこいつでどっか行けよ、と思った。
end.
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