awase
2025-02-01 02:34:42
1627文字
Public ナルサス
 

蕎麦拉麺

2025年新年ナルサス
特に姫はじめとかではなかったふたり

 
 細く息をつき、重だるい身体を起こす。
 台所からぐつぐつと湯の沸く音と出汁の香りが流れてきて、ちゃんと蕎麦にしたんだな、というようなことを思いながら、全身に残る倦怠感を拭うように腰を捻った。
「お蕎麦できた」
 ふたつのどんぶりを持ちながら居間に戻ってきたナルトに軽く返事をしながら、ティッシュで股の間を拭う。呼吸に合わせて溢れてくる白濁を拭い、ある程度のところで切り上げティッシュをゴミ箱に投げ捨てると使用済みのコンドームが捨てられており奇妙な気持ちになる。
 床に落ちたスエットと下着を拾い身につけ、ちゃぶ台を囲むようにして定位置に座ると、かき揚げを持ってきたナルトが一枚サスケの丼の中に入れた。
「別皿がよかった」
「え!はやく言えよ。オレのと交換する?」
「する」
 かき揚げがふやふやになり衣が出汁の中を泳ぐのが嫌なのだ。それがうめーのに、と言ったナルトはサスケの丼と交換し、皿に乗せたままのかき揚げを寄越してくる。
 なんとなくつけっぱなしにしていたテレビには0時40分の表示。昨年年明けに放送していたドラマの再放送を観るわけでもなく流しながら、とっくにタイミングを逃した年越し蕎麦を前に手を合わせる。
「あけおめ〜」
「おう」
「今年もよろしく」
「だな」
 さく、とかき揚げを齧ると、スーパーで揚げられている馴染んだ油の味がした。ナルトのことだから蕎麦を水切りせずにそのまま出汁の中で茹でたに違いないと思いながら麺を啜ると、やはりねちょねちょと粉の重みがあった。しかし何もしていないのでわざわざ言うまいとつゆを啜れば、醤油ベースの鰹出汁の奥に味噌を感じる。
「これ、昼間のラーメンと同じ鍋で作ったか?」
「バレた?」
「ふざけんなよ……
「作ってねー奴が言うな」
 ずるずると麺を啜るナルトが手持ち無沙汰にチャンネルを変える。新春お笑いや娯楽番組ばかりで、やはりどれも興味がない。
 結局大掃除もしなかったし年末らしいことを何もしなかった。部屋は昨日までと全く変わらない状態で新年を迎え、畳んでない洗濯物がカゴの中に詰め込まれ洗っていない食器が洗い場に溜まっている。
 蕎麦を啜った際に飛んだつゆを拭き取ろうとティッシュ箱に手を伸ばせば、先ほど使い切っていたようで面倒な気持ちが湧いた。寒い台所までストックを取りに行くのが億劫で、吹っかけてナルトに取りに行かせようという算段を考える。
「お前途中でゴム取った?」
 さっさと蕎麦を食べ終えたナルトの青い瞳がこちらを向く。
「取った」
「断り入れろよ」
「入れたって。いいって言ってたじゃん」
 そうだっただろうか。
 うまい具合に責めて詫びにティッシュを取りに行かせようと考えていたのに、記憶にないことまで持ち出されて逆に恥ずかしい気持ちにさせられた。
 食器を重ねたナルトが台所に戻しに行く。水に浸す音が聞こえ、それだけだったため洗い物は明日に持ち越されそうだ。
 元旦も2日も3日も大差ないな。お腹がいっぱいになってきて、ほんの少し残した蕎麦とかき揚げをナルトの定位置に押しやる。未開封のティッシュ箱を持って戻ってきたナルトが空箱を潰してゴミ箱に押し込み、いつもの場所に置いた。
「食わねーの?」
「なんか腹いっぱいになった」
「残飯食わしてくんなよ……
 そう言いつつも食べている。サスケは新品のティッシュを開けてテーブルを拭きつつ、かき揚げをつゆに浸しふやかしながら残りを平らげるナルトを見つめた。
 お前のそういうとこ好きかも。そう言いかけて、今日じゃなくていいかと思いやめた。別に明日でも明後日でもいいし、この先も言わなくても大丈夫かもしれない。真冬の冷たい風がどこかの隙間から紛れ込むことに身を縮めると、寒い?と言いながらすぐさまストーブをつける様子に、やはり今言っておこうかと考えて、結局やめた。
 
                     

end.