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みずあめ
2025-01-31 23:21:51
1907文字
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レイサク
あさちゅん🐣
パチッと目を覚ました瞬間から、オレは心臓がドキドキとうるさくて布団から顔を出すことができなかった。
手触りの良いやわらかくて高そうな布団が素肌に当たって、吸い込む空気が脳みそを溶かすような少し甘いオレの好きな匂いで、弟たちの声もメンバーの声も聞こえないとても静かな部屋の中で隣のヤツの寝息だけがオレの鼓膜をくすぐっていて、全部が全部、昨日の夜の記憶を裏付ける証拠のようだったから。
でも、このままここでじっとしていたって隣で眠っているコイツが起きてしまえば余計に恥ずかしくてしょうがないことになるんだから、むしろ今のうちにパッと起きて顔を洗ってなんでもない顔でおはようって言った方がいいかもしれない。うん、絶対そうだ。よし起きよう。
そう決めて布団から顔を出し体を起こそうとしたオレは、突然ビキッと割れるように腰が痛んで「うっぐ
……
!?」と呻き声を漏らし、持ち上げかけた上半身を布団に落とした。マットレスは衝撃を吸収して静かにオレの体を包み込んだけれど、うわあこのベッドおいくら?なんてふざける余裕もなくオレは眉間に皺を寄せる。
え、オレの腰、大丈夫? いつも通りになってる? 変なところで曲がってないよな? 恐る恐る腕を伸ばして手のひらでそっと腰をさすった。表面上はいつもと変わらない、はず。あれか。昨日、普段しないような姿勢で、あれして。
「ん
……
」
「っ!」
「
……
ぁ。
……
、
……
おはよう、さくや」
「
………………
」
一人で騒がしくしていたから起きてしまうのも仕方がないとは思うけれど、まだ起きないでいてほしかった。
思ったよりも近い距離にあった枕の上で目を開けたレイは、オレに気がつくとパッと目を見開き、それから少し掠れた声で甘くオレの名前を呼んだ。ばか。いつもムカつくあだ名で呼ぶくせに。
避けようもなく昨夜のことを思い出してしまい、俺は枕に顔を半分ほど埋めて隠しツンと唇を尖らせた。おはようくらい返してあげたかったけれど、今は腰の痛みのせいで恥ずかしさが勝っている。
「
……
?」
「
……
、
……
はよ」
「
……
体は大丈夫か」
「っ」
「どこか痛めたのか。見せてみろ」
「まっ、まった、まって、布団めくんのナシ!」
「
……
着替えを持って来させる」
「森屋さんに?」
「
……
私が持ってくる」
「うん。ごめん、お願い」
タイミングが悪かったのもあるけど、二人で過ごした夜の次の日の朝の態度として今のオレありえないよな。おはようの挨拶もちゃんとしないし、パシリにしようとしてるし、マジで全然可愛げない。昨日の夜で恥ずかしいって感情全部使い切っちゃった気がしたのに
……
。自己嫌悪が止まらず、ため息を吐き出した。
「さくや」
「
……
」
「
……
おい、チャラ男」
「え。あ、うん、なに?」
「
……
」
「いひゃ、へ
……
? にゃに
……
?」
「
……
おまえは自己評価が適切ではない。今日くらい私の言うことだけを聞いて、私の言葉だけを信じろ」
「
……
?」
体を起こして何も身につけていない上半身を惜しげなくさらけ出したレイは、枕に埋まっていない方のほっぺたを軽くつねり真面目な顔でオレを見下ろした。突然なんの話を始めたのかわからず首を傾げ、それでもオレは目を逸らすことなくレイを見上げた。
「私はおまえのことが好きだ。とても愛おしく思っている。おまえは無駄にかっこつけたがりだが、怒ったり泣いたり照れたり、どんな顔を見せたってそれでおまえの魅力が損なわれることはない。それに適当に笑って誤魔化されるよりむき出しの感情を向けられる方がよっぽど好ましい。おまえはもっとこの私に好かれている自信を持て」
ほっぺたをつねる指先は心地よい冷たさなのに、オレを見つめる瞳は光を閉じ込めたように輝いて熱い視線が心臓を貫いた。レイが触れているのはほっぺたの一部だけなのに、全身が熱を持って吐く息の温度が上がる。
腰は痛いし、昨日だって今だって恥ずかしいって感情は消せやしないけど、でも、そんなことよりもっと、レイの全部をオレにちょうだいって、わがままな自分が顔を出す。
おずおずと伸ばした手でほっぺたをつねり返すとレイはふっと優しく笑った。オレをつねっていた手が開いて手のひらがオレの頬を撫で、指先は耳たぶを掠めて首を這う。思わず息を止めると顔が近づいてきてなんでもないことのように唇が重なった。やわらかくて、きもちよくて、これがあれば他になんにもいらないってくらいの優しいキスに目を瞑る。
ごめん、着替えを持ってくる前にもういっかい、布団よりも滑らかなその肌に触れさせて。きっともうすっかり朝だけど、部屋のカーテンはまだ閉まったままだから。
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