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ssblast_is
2018-05-25 01:30:23
1983文字
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『虹』
※ヤマタマワンライより
にじのねもとにはすてきなすてきなたからものがあって
みつけたひとをしあわせにしてくれるんだって。
子供の頃の他愛ない噂話。
それは右だか左だかの三番目の個室に住むという女の子や、知られずに使い切れたことのない消しゴムに書いた名前と同じようによくある不思議。
御伽噺として諳んじられるには少しファンタジーが足りなく、都市伝説として闊歩するにはリアリティがない。そんな中間の話。
虹を見たことは何回もあるが根元を見たことは一度もない。そもそも根元なんてあるのかと、手元の端末で検索をしてみたら簡単すぎるくらいにいくつも画像が見つかった。
「コンクリートから生えてる虹ってどうやって根元掘り返すんだろうな」
「hm、ショベルカー出動ですか?」
「掘り返した分と元に戻す分の費用を賄えるだけの宝物なのかな」
「この画像のように道路だったら交通規制する分の費用もかかりますよ」
「もーみんな夢がないなー」
「大人になるってこういうことなのよリク」
久しぶりに施設へ顔を出したという環がもたらした話題。今施設では虹探しが密かなブームになっているそうだ。俺の時も流行ったいう彼の口ぶりからして何年かに一回起こることのようだった。少しだけ遠い目をして話す環はどこか寂しそうでちくりと胸が痛む。
もしも宝物があったなら彼は何を願ったのだろうか。
もしも宝物があったなら彼は何を願うのだろうか。
一生分食べても食べても減らない王様プリンがいいと笑った環は嘘を吐いているようにも見えず、そのまま生産性のないいつもの会話に紛れて大和も笑った。
あの日の自分は何を願っていたっけ。
晴れた空の下、学校を抜け出して探しに行った。
本当に宝物があって、見つけた人を幸せにしてくれるのなら。
どうしようもない願いを胸に駆ける。
嘘を本当にして。本当を嘘にして。傷つけたいのに傷つきたくなくて。泣かせて、謝らせたいのに、泣かせたくなくて、謝られたくなんてなかった。
どうしようもない気持ちをどうにかしてくれるんじゃないかと、尻尾のない猫を追いかけるように走った。
走っても走っても近づけなくて、少しずつ少しずつ空に溶けて行く。
上ばかり見て走っていた自分に浴びせられたクラクション。
何処かで見たように形だけ謝って、空を見上げるとそこにはもう、七色の屈折は消えていた。
「
……
ッ」
嗚呼。所詮は御伽話。都市伝説。子供の呪い。噂話。
小さなこどもじゃないのだから信じて走るなんてどうかしていた。
「
……
!」
オトナニナルッテコウイウコト。
「
…
マさんッ
…
ヤーマーさん!」
「うわびっくりした!」
「こっちの台詞。みんなもう行っちゃったし」
「え、ああ、もうそんな時間か」
「急がなくてもいいけど五分前には来てくださいねってマネージャーが」
「タマは」
「ヤマさん動かなくなったから」
「悪い。ちょっとぼーっとしてた」
「なんだっけ。しろ、ひる
…
」
「白昼夢?」
「それ」
「あー、そんな感じ」
本当はもっと現実的で、背後に迫って、そっと首元に手を回されたような。
「ほー。それって良い夢?悪い夢?」
「
……
良いも悪いもないよ。自業自得」
「ぼーっとしてみんなに置いてかれたもんな」
「あはは
…
」
「でも、俺いるし」
腰かけていた椅子から立ち上がって伸びをした環の袖から白い手首が覗く。
「ヤマさんがぼーっとしててもだらだらしてても俺も一緒にぼーっとするしだらだらするし。頑張ってる時はがんばれーってしてやんよ。ダメな時は半分くらいなら王様プリン分けてやってもいい」
「タマ
…
」
「
……
虹の根っこ、何にもない。ミミズとかダンゴムシとかいただけ。だからヤマさんも気にしない方がいーよ」
「見つけたことあったんだな」
マイペースなのに人のことを良く見ている。まあ会話の流れからすれば道理か。心根は優しい奴だから自分が出した話題で大和に何か異変があったことを気にしたのだろう。
「宝物も幸せもなかった。つまんねー、くそーって思った。裏切られた気がした」
「うん」
「チビにもみんなにも何もないからつまんねーぞって教えてやろうと思ったけど、楽しそうだったからやめた。
……
宝物って、必死に探すもんじゃないんかもな」
「はは、そうかもな」
探して、走って、見失って、裏切られて。必死に探さなくてもいいと言いながら、環も大和も宝物の為にきっとひた走ってしまうのだろう。何度転んでも傷つけられても。そこに何もなかったとしても。走らない方がよかった、なんて。思いながらも走らない方がきっと後悔すると知っているから。
「
…
そろそろ行こうぜ。みんな待ってる」
「よし、今日も頑張りますか」
もう一人ぼっちで走らなくていいと知っているから。
七色の光の中で隣り合うそれのように大和と環は顔を見合わせて笑った。
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