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ssblast_is
2017-12-02 03:11:02
2123文字
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ひみつの豚汁
※捧げものの楽環
きゃあきゃあ。漫画ならそういう効果音がつくだろう声を上げて女子たちが机を取り囲んでいる。
購買で買ってきたジュースを飲みながら席に戻るついでにそれを覗くと中心に広げられた雑誌。
冬のデート特集。
女子ってこういうの好きだよなと思っていると、見慣れた銀髪がそこに写っていた。
「十さんコート姿めっちゃかっこいい」
「天くんのマフラー同じの欲しい」
「楽さんにこうやってエスコートされたい」
口々に言いながらページをめくる彼女らは三人がそれぞれ考えたデートコースに夢中だ。
夜景の見えるレストラン、イルミネーション。
「トリガーって絶対いいもの食べてるよね」
「そこ?」
「だってこの写真めちゃくちゃ様になってんじゃん。普段からこういうの食べてんだって」
「豚汁」
ついうっかり声に出してしまった。
「え?」
「なに?どうしたの四葉くん」
やってしまった。が、声にしてしまったものは仕方ない。
皿にちんまりと盛られたサラダとスープ、手にシャンパンを持ったその男が昨日食べていたのは。
「がっくん、豚汁とか食うぞ」
「とん、じる
…
?」
「豚汁」
何故俺がそれを知っているかというと何を隠そう、いや隠さなきゃならないんだけど、俺も食べたからだ。
あれは昨日の帰り道、一人で帰っていた俺に近づいてきた一台の車。
「おい」
「あれ、がっくんじゃん何してんの」
「仕事の帰り」
「おー、お疲れ」
「和泉弟は?」
「仕事で昼から早退した」
「そんで一人で帰ってる訳だ」
乗れよ、と開けられた助手席に乗り込みながらうっせーなと返すと仕事はと尋ねられた。
「俺は今日はオフ」
「じゃあ寮まで送ってってやるよ」
それとも俺の家来るかと聞かれれば返事は一つしかない。
寮とは反対方向に曲がった車に揺られながらオーディオに自分のスマホを繋ぐ。
スピーカーから流れだしたのは最近ハマってる曲。
「これ何て曲だ?」
「らいず?ばい、うぉー?うぉ、うぉーたー?」
「は?」
「読めねえんだよ!」
「
…
誰の曲だ?」
「知んない」
そーちゃんがおススメだとか言うのでスマホに落としてもらったのだ。
バンドの成り立ちだとかロックがどうだとか、編曲がどうとか言ってたけど難しいことはバンド名と一緒に全て忘れてしまった。
「歌手名くらい画面に出てるだろ」
「読めない」
「わかんないのに好きなのか」
「このサビんとこのメロディと、最後ウォウウォウ言うのが好き。そこ聞いて」
そう言えばがっくんも静かに最後まで聞いてくれて、いいなと言ってくれた。
好きな物を誰かと共有できるのは嬉しい。
きっとそーちゃんが俺に色々教えてくれたりするのもそうなんだろうな。
「今度逢坂に俺にも貸してくれって伝えといてくれよ」
「うす」
夕飯はいらない旨をグルチャに打ったあと、忘れないようにがっくんが貸してって言ってたとそーちゃんにラビチャを打つと十倍ぐらいになって返信がきたのでそのまま既読スルーした。
「夕飯なに」
「豚汁」
「おー」
「寒くなってきたからな」
そうして二人でスーパーに寄り、材料を買ってがっくんの家に帰った。
大きいと俺が嫌な顔するから人参を細かく切るがっくんを見ながら宿題をして、わかんなくなったので宿題は途中でやめてがっくんの手伝いをする。
宿題はいいのかと言われたのでがっくんが教えてくれるならと答えたら、がっくんは五秒ぐらい考えて俺に皿を出すように言った。
「いー匂いする」
「肉いっぱい入れたからたんと食え」
「ふは、なんかみっきーみたい」
炊き立てほかほかのご飯にこんがり焼き目をつけたほっけ。
そしてあつあつの豚汁。ちなみに上にネギを振りかける係をしたのは俺だ。
一緒にいただきますをして、火傷しないように気を付けながら一口啜る。
優しい味噌の味に肉の旨味が溶け込んで、喉から全身へほわっと温かさが一気に広がった。
「はぁ
…
うめえ
…
」
「俺が作ったんだから当たり前だろ」
どや顔すらせずに豚汁を啜る姿は俺から見ても清々しい。
実際がっくんの作る飯は美味い。
本人が言うには身体に気を使って自炊するうちに料理にハマったそうだ。
普通のスーパーで買い物をするし特売品や値引き品もチェックする。
まあ時々よくわかんない何とかオイルとか外国の野菜のサラダとか出されるけど。
寮で食べるのとはまた違った味でこれはこれで俺のお気に入りだ。
そういう訳で俺はがっくんの食事情について、ちょっとは詳しいのである。
「ちなみに朝飯に納豆も食う」
「なっとう」
「味噌汁は豆腐とわかめ」
「とうふ」
「わかめ」
でも大根とネギの味噌汁も好きなことは教えないでおく。
「目玉焼きは醤油派」
ここまでは教えてやるけど後は秘密。それを知ってるのは俺だけで良い。
じゃーなと手を振り呆然としている女子たちを置いていおりんのところに戻ると、何ニヤニヤしてるんですかと眉を顰められた。
「なーいしょ」
今度がっくんの家に行ったら何が食べれるかな。何作ってもらおうかな。
俺だけの秘密が増えるのが楽しみで、へへっと笑うといおりんに気持ち悪いですと言われた。
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