ssblast_is
2017-10-09 21:58:50
1039文字
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無題

診断メーカーの、腹が減ってしょうがない大和×たまには甘やかしてやる環


腹が減った。
人間腹が減るとそれ以外のことが手につかなくなるのは何故だろう。
どこぞのお子様のように食い意地が張っている訳ではないのだが、どうにも腹が減って台本の内容が頭に入ってこない。
一度途切れてしまった集中を繋ぎ直すにもエネルギーが必要で。
そのエネルギーがないのだから繋ぎ直すこともできないのだ。
「おれはさいしょからそのつもりでしたよ」
何がどうそのつもりなのか。
わかっている。場面としてはわかっている。
俺の演じる警察官が復讐のため悪徳上司の元へ潜入し、起こっている一連の殺人事件に見立ててそいつを殺すところだ。
ありったけの憎悪と復讐心、これから先の人生への一抹の寂しさを滲ませた大事な台詞。
これを理解し構築するだけのエネルギーが今、足りない。
身体がカロリーを欲している。
こうなっては仕方がない。役作りのために最近は控えめにしていたがあれを作るしかない。
大和はそっと台本を置き、台所へと向かったのであった。


向かった先で遭遇したのは前科何犯か数えきれないほどの罪を犯したプリン常習者の環であった。
「違えって!このプリン四個目なんかじゃねえって!」
聞いても居ないのに自ら白状したこの正直者の手に、しっかりと握られた瓶はもう半分ほどになっている。
「はいはい、ソウには黙っててやるから」
「うっほんとだろうな
「本当だって」
冷蔵庫の前で猫のような唸り声を上げる環を背に戸棚を漁り、貯蔵の袋麺を取り出す。
ちらりと後ろを見ると先程までの眉間の皺はどこへやら。
きらきらとした視線を感じて、もう一袋追加で取り出した。
「ラーメン作んの」
「そ。どーにも腹が減ってな」
「ダイエットって言ってなかった?」
「背に腹は代えられないっていうか、ダイエットは明日からって言うか
「ふーん」
鍋に規定量の水を入れ、火にかける。
すると顔の横にスプーンを突き出された。
「ダイエット、明日からなんだろ」
食っていいの?」
はい、あーん。と言われて口を開けるとずぼっとスプーンを突っ込まれた。
甘くとろけるそれを舌で味わい飲み込むと、もう一さじ追加で出てくる。
「ん?」
「ヤマさん疲れた顔してたから。とくべつ」
「サンキュ」
いつもなら絶対に譲らない二口目が疲れた脳と心に沁みわたる。
思考能力を奪うほどの空腹感も少し和らいだ気がする。
環の分、少し多めによそってやろう。
頭を撫でながら大和は自らが笑っていることには気づいていなかった。