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ssblast_is
2017-03-06 03:53:01
1599文字
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ねこのはなし
※お題箱のリクエストより「本気になりたくなかった大和と、恋だと気づいていない環」
「タマ」
ヤマさんが俺の名前を呼ぶ。
ソファでだらだらしているヤマさんの隣に座ってゲームをして、そういう時にヤマさんは時々意味もなく俺の名前を呼ぶのだ。
だから俺は返事の代わりに軽く頭突きをして膝に転がってやる。
そうするとヤマさんが頭を撫でてくれるから俺はまたゲームの続きをしてヤマさんは変わらずだらだらしているだけ。
ヤマさんが俺の名前を呼んで頭を撫でてくれる時、日向を見つけた猫みたいな気持ちになる。
あったかい陽だまりに寝転んで頭を撫でてもらって、喉もかいてもらっての至れり尽くせり。
もちろん俺は猫じゃないからそれが本当に気持ちいいのかはわからない。
けれどそんな気持ちになるのだ。
どうしようもなくあったかくてふわふわして気持ちいい。
だからヤマさんが俺以外の名前を呼んで俺以外の頭を撫でているのを見るときは日陰しか見つからない猫の気持ちになる。
ちょっと冷たくてじめっとしてて暗くて、何てことないことなのに少しだけしょんぼりとしてしまう。
別にヤマさんは誰のものでもないから誰を呼んだって誰を撫でたって構わないのに、今日は俺じゃないのかと思ってしまう。
名前を呼んでほしくて目の前でゲームをしてみたりうろちょろしてみたりがばっと抱き着いてみたり。
なんでそんなことするのか自分でもよくわからないけれど、日陰で寒いよりは日向ぼっこでぽかぽかする方が気持ちいいのだから仕方がない。
俺は猫じゃないけれど首輪がつけられるならご主人様はヤマさんがいい。
高いごはんはもらえないだろうけどきっと一緒にたくさん日向ぼっこができる。
俺もヤマさんも日向に寝転んで二人でごろごろするのだ。
だからもっと呼んで。もっと撫でて。
今日も俺はヤマさんの膝の上でごろごろと鳴くのであった。
猫の話をしよう。
名前はタマ、身体は大きくて、俊敏で、プリンが好物。
「ヤマさんヤマさん」
事あるごとに俺の名前を呼んでは俺の心をかき乱すやっかいな奴だ。
最初は面白い奴だと適当にからかっていたのに、踊るときの真剣な目、歌う時の伸びやかな声、たどたどしいけれど丁寧に感情が込められた芝居。プリンを食べてやるとぶっ殺すと騒ぐ口、ゲームをしている時の独り言。奴を構成する全ての要素に惹かれて、どうしようもなく好きだと認識させられてしまった。
最近は特に懐かれて俺が呼べば飛んできて膝の上で甘えられる始末だ。
年下で男でメンバーの三重苦。
ありえないと否定してみたものの、自分以外の誰かが名前を呼んで頭を撫でられている様を見ると胸が痛んだ。
スキンシップ過剰な奴だからと誤魔化してみても胸の痛みは引かずに、気がつけば用もないのに名前を呼んでいた。
近所の野良猫と遊ぶくらいのつもりだったのに、いつの間にか飼いたくて飼いたくて仕方がなかった。
可愛い女の子ならいざしらず、ごつい男を自分のものにしたいと思う日がくるなんて少し前の自分に聞かせたら卒倒ものだろう。
なのに今はもうこの猫にいかに首輪をつけるかが俺の悩みだ。
今日も俺の隣でゲームをしているこの猫の名前を呼べば、頭突きのように頭を擦り付けられ膝の上にごろりと寝転がられた。
腹を見せて撫でられるのを待っている所を見ると少なくとも嫌われてはいないようだ。
ごろごろと顎の下をかいてやれば気持ち良さそうに目を細める辺りこいつは本当に猫なのかもしれないと思えてくる。
本当に猫だったら暖かい陽だまりで一人と一匹、日向ぼっこでもして転がっていられるのに。
けれどどうしても一人と一人で、二人で陽だまりで寝転ぶには障害が多すぎる。
だから本気になどなりたくなかったのに。
諦めるにはもう遅すぎて、現実はあまりに遠すぎる。
もっと呼んで、もっと撫でていたいのに。
お前が本物の猫だったらよかったのにな。
膝の上でごろごろと鳴いた猫の頭を撫でて俺は一つ溜め息を吐いた。
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