ssblast_is
2016-07-31 02:37:47
906文字
Public
 

『夏祭り』

※大環ワンライ



クーラーの効いたスタジオから一歩でれば、それは容赦なく襲い掛かる。
「あーつーいー」
今の気持ちを代弁するように隣に立つ環がはたはたとシャツの裾を持って扇いでいる。
言っても仕方のないことなのに言ってしまうのは何故なのか。
夕方になって幾分かマシになっているとはいえ暑いものは暑い。
この温度差はこたえると大和が思っていると
「なぁヤマさん、なんか聞こえね?」
うん、と縮こまった身体を伸ばしていた環がきょろきょろと周囲を見渡した。
雑踏に紛れて微かに太鼓の音が聞こえる。
「太鼓の音がするな。祭りか?」
そのまま辺りを見ていた環は何かを見つけたのか数軒先のコンビニの軒下へと走っていく。
「ヤマさん!近くだって!」
大声はやめなさいと叱りながら、幼子のようにはしゃぎたてる環の傍へと寄ってやる。
「祭り行きたい!」
「タマ、もうちょっと声小さくしような」
「まつりいきたい」
「わかったわかった」
じっと訴えるその頭を撫でてやると嬉しそうに声を漏らしてふにゃりと笑った。


「ミツに飯いらないってラビチャしといて」
「うす」
祭囃子の音が大きくなるにつれて上機嫌になった環は信号待ちの間にすいすいと指を滑らす。
事務所に入るまで携帯を持っていなかったというが、流石現役高校生。
あっという間に使いこなし、今ではメンバー随一のスマホの使い手だ。
「信号、青になるぞ」
「もー終わった」
他愛もない会話をして歩く間にも祭りへと向かう人は増えていく。
家族連れにカップル、いつもより遅くまで遊ぶことを許されてはしゃぐこどもたち。
待ち合わせ場所になっているのだろう鳥居の前では綺麗に浴衣をきた女の子を前に男の子が緊張した面持ちで喋っている


「夏だなぁ
頑張れ青少年と心の中でエールを送ると隣を歩く青少年はすでに食べ物の屋台に夢中だ。
「ヤマさんヤマさん。りんごあめ、食べたい」
「はいはい」
早くも祭りの熱気にあてられているのは彼らだけではないらしい。
袖を引いてあざとくねだってくる姿すら可愛く見えるのだから。
夏だなぁ」
大和はもう一度呟いてズボンのポケットから財布を取り出した。