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ssblast_is
2016-05-24 00:45:37
1405文字
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キスの日
※楽環
「なぁ」
ソファから半分ずり落ちそうになりながらスマホをいじっていた環は、液晶画面を見つめたまま隣に座る楽に話しかけた。
「んだよ」
浅く腰かけながら台本を読んでいた楽も顔を上げることなく短く返す。
「今日キスの日なんだって」
すいすいと画面に指を走らせ、目に留まった記事をそのまま追っていく。
どうやらキスシーンが含まれた映画が日本で初めて公開されたことに起因しているようだ。
そう説明すれば、知ってると隣から返され同時にぺらりと紙の捲れる音がする。
そこまで長い記事ではなかったそれをさっさと読み終えてしまった環はもう手持ち無沙汰だ。
一織や壮五にはスマホでできるのだからニュース記事を読めと言われるが、政治経済は環には難しく内容が理解できないしそもそも興味がない。
芸能ニュースもゴシップばかりでうんざりする。
そのかわりこういう雑学めいた記事は好きだった。
SNSの書き込みから手軽に飛んで読めるところもいい。
今日もSNSのトレンドに入っていたところから、この記事にたどり着いた。
時々こうやって得た知識を披露してみても大抵隣の男に知ってると返されて終わってしまう。
つまらないと口に出すとティッシュでも詰めとけと返されるのもお約束だ。
「なーあー」
「
…
今度はどうした」
それでも話しかければ必ず返事をしてくれる。
その優しさが嬉しくて邪魔をしてはいけないとわかっているのに話しかけてしまう。
「ちゅーしよ」
「は?」
やっとこっち向いた、と環が笑えば楽は少し呆れた顔で台本をテーブルに置いた。
「今日キスの日だろ。だから、ちゅーしよ」
「キスの日じゃなくたってすんだろうが」
環の方へ向き直った楽はせがむ唇に小さくキスを落としてやる。
「これで満足か」
「んー
…
もっと?」
「お前な
…
」
続きを読むことを諦めた楽は環の頭をくしゃりと撫でると何かを思い出したように、はたとその手を止めた。
「がっくん、どしたの」
急に撫でる手を止められて環は同じ目線にある楽の顔を見つめる。
先程まで若干うっとおしそうにしていた顔から一転。
いたずらを仕掛ける子供のような目をしている。
頭に置かれた手が離れ今度は両手で頬を挟まれた。
「なあ、身体のどこにキスするかで意味が変わるって、知ってるか?」
言うが早いかそのまま引き寄せられ、瞼にキスを落とされる。
「わ、」
「瞼なら憧憬、額は友情、」
ちゅ、ちゅとキスの雨とともに意味を告げる言葉が環に降り注ぐ。
思慕、誘惑、親愛。
「ちょ、がっくん、くすぐったいってば」
愛玩、欲求、執着。
「唇は愛情」
他にも背中とか胸とか全身あるけどな、と言いながらぺろりと環の唇を舐めた。
「それで、お前はどこにキスしてほしい?」
それぞれの意味を教え、その中でどれを選ぶか。
楽は環に選ばせるのを、環がそれを口にするのを楽しみにしているのだ。
遊ばれている気がして面白くない。
環が顔に出せばそれすらも計算の内なのか唇は弧を描いて催促をする。
選べと言われたところで、はなから答えは決まっているのだ。
「口も目も鼻も髪の毛も、首
…
は痕残されるとそーちゃんに怒られるからほどほどで」
指折り数えて環は言う。
「だから全部」
仕返しとばかりに首に腕を絡めて至近距離で笑った。
「ぜんぶしてほしい。がっくんのぜんぶ、ちょーだい」
「ふは、お前ほんっとわがまま」
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