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ssblast_is
2016-04-25 00:30:35
2005文字
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「眼鏡」
大環ワンライ
「ただいま」
大和が仕事を終えて寮に返るとリビングの方からうっすらと聞きなれた電子音が漏れている。
「おかえりー」
振り返ることなくソファでゲームに没頭する環の頭をフードの耳ごと撫でるとうっとおしいとばかりに左手が応戦する。
捕まえて握りこんでやると観念したのかスマホを置いてため息をつかれた。
どうやらゲームオーバーになったらしい。
そんな生意気な様すら可愛く見えてぎゅっと握った左手の指を撫でてやる。
ようやくこちらを向いた環の顔に、見慣れているのに見慣れないものが一つ。
「なんで眼鏡してんの」
自分のものとは違ういかにもな黒縁眼鏡をかけた環がそこにはいた。
「ああ、大和さんおかえりなさい」
「ただいま。ねえ、なんでタマ眼鏡かけてんの」
台所から顔出してきた壮五に尋ねるついでに夕飯はいらない旨を伝える。
「今日雑誌の撮影があって、眼鏡をかけて撮るショットもあったんです」
人はギャップに弱い生き物だ。
壮五の話を総合すると、知的なイメージとは程遠い環の眼鏡姿に女性スタッフが大いに盛り上がりそれに気を良くした環が気に入って眼鏡をかけて帰ってきた、ということらしい。
新商品のブルーライトカットの眼鏡らしく宣伝にもなるからとスポンサーが譲ってくれたそうだ。
「僕もかけたんですけど、僕よりも環くんの方が女性スタッフのウケがよくて」
環にかけさせるだけあって学生など若年層をターゲットにしたものでそこまでお高くないらしい。
壮五の表情に憂いがないのはきっとそれもあるのだろう。
「環くん嬉しそうに大和さんとお揃いだって言って
…
」
「あああああもうそーちゃん余計な事言うなって!」
大和と壮五が会話をしている間も大人しく左手を繋がれて手持ち無沙汰に右手をぶらぶらさせていた環が大声を上げて暴れだす。
ひったくるようにスマホを持った環が左手を引っ張りそのままずんずんとリビングを出ていく。
引きずられながら同じくリビングを出ていく大和に壮五は申し訳なさそうな顔をしていたが、心配すんなとだけ返すとまた台所に戻っていった。
集団生活が長いからかその足取りとは正反対に必要以上の足音を立てずに階段を昇った環は自身の部屋ではなく大和の部屋までくると無遠慮に扉を開けた。
部屋の主は相変わらず引っ張られたままだ。
どうにか空いた右手で荷物を床に置くとそのままベッドに突き飛ばされ馬乗りになられた。
「タマ、落ち着けって」
腹筋の力だけで上半身を起こすと自分の顔より上にある猫耳をそっと撫でてやる。
「
…
別にお揃いうれしーとか思って、ねえし」
そういうツンデレ芸は環より一織の方が似合うだろうなと思いながら面倒なことになるので喉元で飲み込む。
「顔ちゃんと見せて」
頭から頬へ手を滑らせてやると素直に顔を上げた環が手に擦り寄ってくる。
そのまま頬を撫でてやると少し機嫌も直ったらしい。
「頭良く見える?」
「そーだな、テストで60点くらいとりそうな奴に見えるな」
からかいのつもりで60と決して高くはない点数を出したのだが万年赤点の環からすれば上出来だったらしい。マジかと喜びの声が頭上から降ってきた。
黒く縁取られた眼鏡が気怠さを増長させて、セクシー担当と評される環の色気を引き立てている。
思わずごくりと唾を飲むと無言で観察していたことを不安に思ったのか目尻を下げて環が問う。
「
…
眼鏡、変?」
「変じゃないよ」
「似合う?」
「似合ってる。眼鏡のタマもいいなって思った」
素直に告げてやると、そっかと嬉しそうな声とともに抱きつかれる。
そのまま顔が近づいてきたので背に腕を回して受け入れてやるとちゅ、ちゅとリップ音をたてて求められる。
バードキスを数回した後、角度を変えてぬるりと舌が入り込んでくる。
かつんと眼鏡が触れた。
「んっ
…
」
今日はあくまで主導権を握りたいのか侵入してきた舌を絡めとろうとすると素早く逃げていく。
そうしてキスを続けるたびにかつんかつんと小さく音を立てて鼻筋に振動が起きる。
何度目かの振動の後鼻を抑えて唇が離れた。
「いたい。地味に痛い」
「そりゃあぶつかってるからな」
「眼鏡同士ってちゅーすんのこんなに大変なの」
「
…
ぶつかんないように、コツがあんだよ」
眼鏡を押し上げて鼻を擦る環にわざと意地悪い言葉をぶつけてみる。
途端に顔をしかめて大和から目を逸らす。
その様が可愛くて、傷つけていることは解っているのにやめられない。
「キスやめる?」
「
…
鼻、痛いから、やだ」
環はむくれた顔を隠そうともせず鼻を擦り続けている。
眼鏡を外さないのは彼なりの抵抗のつもりなのだろうか。
「お兄さんはタマともっとキスしたいんだけどな」
手を掴んでわざと眼鏡がぶつかるようにキスを落としてやると、仕方ねーなと尖らせたままの唇が紡ぐ。
「でも、マジで鼻痛いのはもうやだ」
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