ssblast_is
2016-03-20 13:08:56
1704文字
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好きなもの

大環ワンライ



ビール、つまみ、ビール、ビール、つまみ、タマ、ビール、つまみ
だらだらと特に面白い訳でもないテレビを見ながら、さっきからこのローテーションで俺の両手は動いている
タマはリクライニングチェアに座る俺の隣で、持ち込んだ王様プリンクッションを抱きしめテレビを見ながらゲーム中だ
画面が面白くなくなるとゲームをし時々俺につまみを強請り、口に放り込まれるとそれを咀嚼しながらテレビを見るというローテーションをしているらしい
あー、といいながら幾度となく大きく口を開けてくるその姿に飼育員ってこんな気分なのだろうかと思いつつ晩酌の友であるチーズ鱈を放り込んでやる
ついでに頭を撫でてやるとフードについた耳が揺れますます大型動物を飼育している気分にさせられた

「ねー、ヤマさん」
「ん?」
「今度いおりんとりっくんが出るのってこれ?」
動物園に思いを馳せている間にどうやら次の番組になっていたらしい
告知のため近々一織と陸が出演する番組が始まったところだった
「そーそー、これ」
ゲストをペアで招き、お互いについてのクイズを出題
その正解数に応じて告知できる時間が変わるというバラエティだ
「いおりんとりっくんもこれやんの?」
「そりゃあな」
「相手の名前くらい書けるくね」
「んじゃお前ソウの名前ちゃんと漢字で書けるか?」
下の名前は書けるし」
まずはお互いの芸名を正しく書けるか、など視聴者への自己紹介を兼ねた質問から始まり徐々に踏み込んだ質問になっていく
今日のゲストはドラマの告知できた若手俳優ペアだ
日頃から仲が良いと言い、順調に正解していく
イチとリクは不正解になることで司会に美味しくイジってもらうパターンだろうかと考えながらビールを一口流し込む

『それでは相手の好きなものを3つお答え下さい!』
そこでCMに切り替わりタマが物欲しそうにこちらを向いて口を開けた
今度はカシューナッツを口に入れてやるとすぐに咀嚼音が聞こえてくる
自分もポリポリとつまみながら流れているビールのCMに、そういえばストック無くなりかけてたなあとぼんやりと脳みそにメモをしているとナッツを食べ終えたタマが口を開いた
「俺ヤマさんの好きなものわかるよ」
「俺よりソウの好きなもの当てろよ、MEZZO"の方がこの手の番組呼ばれるだろ」
「そーちゃんの好きなものは、ダグラスのおっさんとトリガーと説教」
「説教はタマにだけだろ」
「んじゃ辛いもの」
「あとTRIGGERってのは公に言うと色々あれだから音楽とか無難なのにしとけ」
「めんどくせー」
タマがそっぽを向いたところでCMが終わり、再び好きなものを3つお答え下さいと出題部分からだ
互いの好物をフリップに書きそれが正解しているかどうか事前アンケートの答えと照らし合わせていく
回答の中に正解に近いものがあるのか一生懸命理由をこじつけ司会の芸人もそれに便乗し笑いを誘っている
最後の一口になったビールを飲み干そうと大きく缶をあおった時、いつの間にかこちらに向き直っていたタマが言った
「ヤマさんの好きなものは、楽なこととビールと俺でしょ」
「っ、ぶは!」
予想だにしないタマの言葉に最後の一口は大半が哀れな霧になった
「うわおっさん汚ねえ」
誰のせいだ誰の
あまり残っていなかったおかげで被害は少ないものの辺りを拭おうと椅子から立ち上がる
「いきなり何言うかなお前は」
「間違ったこと言ってねーだろ。それともヤマさん俺のこと嫌い?」
「最後の一口をダメにするような子は嫌いかな」
ティッシュで拭いながらタマを見ると画面にはもう興味を失ったようでスマホをいじっていた
「あと片付け手伝ってくれない子も嫌いかな」
手伝えという意を込めて言ってみたが効果はないようで、既にスマホに夢中だ
番組は既に終盤に差し掛かり、クイズの答えについて回答を振り返りながらあれこれ詳しく掘り下げている
ティッシュをゴミ箱へ投げ捨てると後ろからカサリと音がした
「俺はヤマさんのこと好きだけどな」
振り返ると勝手に袋の中のカシューナッツを頬張りながらタマはにへらと笑った