お掃除しましょう

意外(?)にも家事全般はジグさん担当です。
エット君は私生活がいい加減な子なので、ジグさんが定期的に掃除という名のチェックをしてます。
エレゼンって両極端(潔癖が極まってるか汚部屋製造かの2択)な気がするのです。

事の始まりは、相棒兼恋人の部屋着だった。
仕事柄、長期で家にいないことが多いアイツが、部屋着で長時間 くつろぐのは まれだ。だというのに、なんだか薄汚れてくたびれている。しかも心做 こころなしかほんのり汗臭い。
……なあ、それ洗濯したの何時だ?」
「え?」
読んでいた本から顔を上げ、顔をしかめる俺に小首を かしげる。
「えぇと……、いつ、だったかな?」
予想どうりの返答に ひたいをおさえる。
そういやここ一ヶ月くらい、仕事が立て込んでいて、家事らしい家事が出来なかった事を思い出した。流石 さすがに飯は作っちゃいたが、掃除までは手が回らず、家の中は荒れ放題だ。
んでもって、目の前の男の ていたらく。
……嫌な予感がする。
不意に沸いた不安に、己の直感の鋭さを呪いたくなった。

今日は掃除の日、と決めて取り掛かった現在。
案の定、二階の部屋の扉を開けた先には、汚さを通り越した魔境が広がっていた。
「お前なあ……。」
思わず部屋の主である、隣のヤツをジト目でみる。流石にバツが悪いのか、深緑色の目がふいっとそらされた。
片付けが苦手なのも、掃除がいい加減なのも分かっちゃいるが、さすがにコレはナイ。かろうじて動線 どうせんはとれちゃいるものの、どこで寝てんだコリャ、どうやって部屋で生活してんだコレ、のレベルだ。
本は出しっぱなし、服は放りっぱなし、オマケに武器まで置きっぱなしで、マジでどうしようもねえ。やっぱり週一、長くても二週に一度は確認しねえとダメみてえだな。
……よくコレで生活できんな。」
深くため息をついてこぼした言葉に、ねたような返事が返ってくる。
「別に片付けてなくても死なないし。」
「死にゃしねえが、病気にはなんだろが。」
変な虫とか、わいてきそうだしな。
そんな心配半分で言や、とんでもねえ反論が返ってきた。
「死体に囲まれてるわけじゃあるまいし、病気になんてならないよ。」
ギョッとして固まる俺を無視して続ける。
「衣服だって着っぱなしってわけじゃない。血の臭いがするわけでも、血や泥で汚れているわけでもないし、体臭が変わる程臭うわけでもない。これくらい許容 きょよう範囲だよ。」
そう のたまうアイツの言葉はどこかやけっぱちで、自嘲気味だった。
確かにな。確かに言いたいことはわかる。だけど。
「ここは戦地じゃねえし、戦だって終わっただろ。言い訳すんなっての。」
軽く握った拳で赤銅色の頭を小突くと、ムッとした視線が向けられた。
まったく、育った環境ってのは厄介 やっかいだ。だけど、いつまでもそれで良いわけじゃねえ。コイツだって気付いている はずだ。
だから小言だと解っていても言う。
「それに、お前は良くても俺が嫌なんだよ。もうちっと何とかしてくれな。せめて脱いだ服はすぐに洗濯へだしてくれ。」
汗くせぇ服のお前なんざ嫌だからな、と付け加えつつ指先で ほほ辿 たどれば、こころなしかむくれていた表情が、元の無表情に戻った。
……なるべく、気をつけるようにするよ。」
小さな声でねたようにそう答えた部屋の主に苦笑い、手近にあった本を拾い上げる。そうして一ヶ月サボった部屋の片付けと掃除に、今日一日を ついやした。

後日、別件で知り合いの部屋に通された おりのこと。
本人から「最近使ってないから荒れている」と言う話を聞いて覚悟した。……が、確かに片付いてはいないものの、そこまでじゃねえな、と思っちまった。
うん、ぶっちゃけアイツん部屋の方がひでえわ。
慣れって怖ぇな、なんて思いながら思わず口に出せば、部屋の主はギョッとした顔で振り返る。
そんな褐色の美丈夫に向かって、ぬるい目で うなずいた。

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