ダーリンランデヴー!/カミッラ

 彼女はよく、星が瞬くように瞳を輝かせて笑っていた。
 機嫌を損ねるとつんと唇を尖らせて、それでも機嫌を斜めのままに保つのが下手で、ふとしたときに鈴のように笑ってそれまでの不機嫌を水に流してしまう。
 いつだって人の美しいところを見つめようとしていた、可愛い可愛い、俺の妹。
 澄み切った緑色の瞳はいつも、俺の心の一番深いところを見透かして、そして優しく微笑んでいたのだった。

 俺の、たったひとつの宝物だったのだ。
 鏡の前に立つ。薄汚れてひびの入った姿見には、妹が写っている。もちろん正確には妹などではない。天国にいるはずの妹の肉体を引きずり下ろして、そこに俺が入り込んでいるだけ。
 柔らかな金髪は少し傷んでしまった。瞳に星のような輝きはなく、ただそこには仄暗い現実が写るだけ。唇は乾燥していて、おまけに、なんと胸元には大きな穴まで開いている。
 冒涜だ。これは妹に対する冒涜だ。
 俺にとっての一番の罰だから? もしもそうなら、神ってやつは残酷だ。地獄の責め苦であればいくらでも堪え忍べたのに、妹の体を借りてしまったのでは、責め苦を受けることすらできやしない。
 冷たい鏡に指先で触れ、そっとなぞる。窓から差し込む夕日が反射して眩しかった。顔を近づける。妹がいるようで、それでもそこには、誰もいない。ただ喉が焼けるように傷んで、それを心配そうに覗き込む人など誰もいなくて、それが当然だった。
 吐き気がする。同時に舌先に鮮やかに味が蘇る。蕩けるような味。痺れるような罪の味。そうだ。忘れるはずもない。
……天使みたいに優しい、俺の宝物。俺のたったひとつの宝物、俺の……
 空気を震わせるのが妹の声でも、縋り付いているのは俺でしかない。縋る資格などない。喉を掻きむしって傷をつけるわけにもいかず、ただ姿見の縁を握りしめ、苦痛が去ってゆくのを待つ。

 たったひとつの宝物。その血肉の味を俺は知っている。かけがえのない妹。最上の食材!
 吐き気がする。それすら妹へと冒涜な気がして、何も写したくなくて、緑色の瞳を閉じた。