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溶けかけ。
2025-01-29 20:34:50
1192文字
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ほぼ日刊
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恋慕
終幕後すぐのフリーナとヌヴィレットのお話。
※捏造過多、フォカフリ表現あり。
「ヌヴィレット様、フリーナ様が
……
」
「また、居なくなったのか?」
ヌヴィレットの言葉に世話係の女性が頷く。彼は羽ペンをペン立てに戻すと席を立つ。
「ああ。君は仕事に戻っていてくれ。多勢で行ったところで彼女の警戒心を強めてしまうだけなのでな」
女性は、はっとした顔をすると頭を下げる。本当は自分で探しに行きたいのが制服に寄った大きな皺から理解できた。
「
……
お願いします」
「必ず、連れて帰ってくる確約は出来ないがね」
ヌヴィレットは女性の横をすり抜けると外に出た。
「今日はここに居たのか」
まだ日がのぼる前の薄暗いルキナの泉の縁に腰掛けた水越しに歪む影にヌヴィレットは溜め息をつく。傷心のフリーナが向かう先は主に二箇所に絞られる。ルキナの泉かフォンテーヌレイクの砂浜かの二箇所である。
「
…………
」
ヌヴィレットを見つめる瞳には何の感情ものっていない。曇りガラスのような色違いの双眸があるだけだ。
「相席しても?」
返事はない。沈黙は肯定ということにして、返事を待たずに隣に座る。
「また、歌劇場の扉を開けようとしたのか。深夜は閉まっていると言っておいたはずだが」
白い石垣に相応しくない赤をみつけてヌヴィレットが指摘する。彼女の薄い花びらのような爪にも同色の赤がこびりついていた。
「入りたいのなら私に言えば鍵くらい開ける。だから、無理に入ろうとしないでくれ」
ヌヴィレットの言葉を聞いているのか聞いていないのか分からないフリーナの視線の先には石畳の隙間を啄む鳩がいた。
「
……
治療をしよう」
フリーナの手をとったヌヴィレットは眉を顰める。以前は磨かれて艶々と輝いていた薄い桃色の爪は輝きを失い、白い部分は無残にも割れ、爪と皮膚の間には固まった血の塊が詰まっていた。
ヌヴィレットは爪の先に着いた血を洗い流すと水元素を小さな手に集中させる。治癒は不得手だが、彼女の傷を癒すには手っ取り早い方法だったのだ。
フリーナの手から水元素を取り払う。ヌヴィレットの記憶のような艶めきはないものの傷が癒えただけでも及第点といったところだろう。
「彼女
……
フォカロルスはもういない」
フォカロルスという言葉にフリーナの小さくなった体が僅かに揺らめいた。
「君が望むのなら歌劇場の鍵も開けよう。だが、彼女はもう何処にもいないことは頭の片隅にでも入れておいてくれ」
酷なことをしていると思う。ヌヴィレットは彼女の小さな希望すら刈り取ろうとしているのだから。
「わ
……
かって、る
……
でも、あいたい
……
ん、だ
……
」
掠れた声がヌヴィレットの耳を撫でた。隣を見れば曇りガラスの瞳から大粒の涙がぽろぽろと止め処なく零れ落ちては消えていく。
思わず伸びそうになる手をぐっと握り込む。
臆病なフリーナを追い込んだ自分が彼女の肩を抱く資格などないのだと言い聞かせた。
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