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望月 鏡翠
2025-01-29 13:08:33
860文字
Public
日課
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#1615 「雷雨」「作家」「指人形」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
朝起きたときから、強い風が窓をガタガタを鳴らしている。
天気予報は雷雨の訪れを告げていたが、想定よりも早くやってきたらしい。
まだ雨も雷も鳴り出していない。しかし風が強く、空は嵐の前特有の不可思議な色味に変わっている。
あの子は怖がってやいないだろうか。いつもならせめて身嗜みを整えてから部屋を出るが、先に部屋を覗きにいった。部屋の中は薄明るかった。寝る前に閉したはずのカーテンが開いている。
あの子は、自分でカーテンを開けたらしい。机に登ったらしく、ものが乱れていた。
本人は外がよく見える場所に椅子を置いて、景色を見つめていた。見たこともない空模様がお気に召したのだろうか。それともこれから崩れていく空を見て、不安になっていたのだろうか。
「おはようございます」
「おはよう」
短い返事が返ってくる。
「今日は家の中で遊びましょう」
買い出しはもう終わっている。一週間家から出なかったとして耐えられるが、嵐は二日ほどかけてこのあたりを通り過ぎる予定である。この二日か三日間で何をしたいのか聞いてみる。
手間がかかるお菓子作りに挑戦してみたい。指人形作りの続きをしたい。スケッチブックにお絵かきをしたい。その間、リビングで流しておく映画もちゃんと決まっている。
全ての要望を聞きながら、私は忘れないように一つ一つメモしていく。
この家のことは、隅々まで彼女が決めている。私の名前で世に出ている作品の半分は、彼女が作っている。高名な作家先生なのだ。
成人して、名前と作品を彼女に返すその時まで私が世間からその身を守る壁になるのだ。
その柔らかい心が、今何を受け取っているのか、私にはわからない。言葉にはならない数々を私は強いて聞きだすことはない。いつか、名前を出したら飽きるほど世間の人に聞き出されることだろうから。今は静かに暮らさせてあげたいのだ。
今日見た嵐も、いつか絵や人形になって花開くことがあるのだろうか。
あるかもしれない。しかし、なくてもいい。それを知っておいて欲しい。
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