こꯓレ)ろ🌟🦄🌈🌟
2025-01-29 13:06:08
7406文字
Public コノチャ30×16♀
 

いつか恋人のキスを。④

結婚した!
金銭感覚ド庶民チャ♀は貧乏生活が染み付いてるので生活水準のすり合わせに時間がかかりそう。

 ⑩

 アスハ代表との通話でいつ結婚するのかと問われたのでコノエが可能な限り早く。と答えたところすぐに入籍出来ることになった。
 急ぎたかったのはチャンドラが告白されるところを見てしまったからで、誰かにとられる前に一刻も早く法的に囲い込む必要があると痛烈に感じた。我ながら余裕が無くて笑えるが人生何が起こるかわからない。また十年離ればなれにならないとも限らない。躊躇は禁物だ。
 折よくラミアスがミレニアムに乗り込んでいた為、留守中の艦長を任せることができた。二日の引き継ぎの間に結婚に必要な法的手続きを済ませるとそれらが処理されるまでの間に新婚休暇に入る。

 オーブの新居が準備できるまで、休暇の前半はアプリリウスのコノエの家で過ごすことにした。自宅は郊外にあり敷地が広めで、周りには家が少なくセキュリティもしっかりしているので家の中に居ればチャンドラの安全は確保される。
 どうせ家に閉じこもって出ない予定だ。

 ♦︎

 アプリリウスの自宅に到着して、家の中を案内するとチャンドラはずっと「きれい」「リゾートホテルみたい」「広い」「天井が高い」「デカい」「庭広すぎ」「プールもある」「いやバスルーム何個目?」「家がデカすぎる」「ワインセラー」「えぐい豪邸」「金持ってるって本当だったんだ」「嘘だろ」と呟き続けていた。最終的に少し顔色が悪くなっていたのは何故なのか。
 ひと通り案内してからリビングに戻ると、深刻な表情を浮かべるチャンドラに聞かれた。
「あの、正直に言ってくれて全然構わないんですけど本当に結婚歴無いんです? ここってファミリー向け物件ですよね。結婚はしてなくても誰かと暮らしてました?」
 チャンドラの不安の理由が理解できた。家が広すぎてあらぬ誤解を招いてしまったようだ。チャンドラの腰に手を回し引き寄せて抱きしめてから額にキスをして説明する。
「結婚歴も誰かと暮らしたことも無いよ。この家はストレス買いしたんだが、買ってから殆ど放置していた」
「は? ストレスで家買うとかあります?」
 確かにチャンドラの言う通り、LDKにバスルーム付きの寝室が三つと、客間が四つある。庭はプール付き、地下一階地上二階建ての家は一人暮らしするには広すぎる物件である。価格もそれなりにした。
 戦争が始まってそれまで当たり前に利用していた通信網が途絶え、一次大戦後に少しずつ回復してもチャンドラの連絡先は繋がらなくなっていた。全く消息がつかめなくなってブレイク・ザ・ワールドが地球に暮らすナチュラルの総人口の三割を減らした。赤道に近い地域は特に被害が甚大でチャンドラが住んでいた地域は地図から消えた。
 もう二度と会えないのかと悲嘆に暮れてメンタルが荒れていた時に金でも使えば気が晴れるかもしれないと思ってむしゃくしゃして買った家である。皮肉にも株を買っていた企業が戦争特需で莫大な利益を出し、コノエも随分と儲かった。
 だが、いくら金があっても、使っても、本当に大切なものが手に入らなければ満たされることは無いと思い知っただけだった。
 虚しくなって、家を買った後も軍の官舎に入っていたのでメンテナンスだけ入れてほとんど使っていない。
 その間、自棄になって婚活をしてみたり、いっそ忘れたいと恋人を作ったり、ワンナイトの相手もいたが家に連れてくるまでの関係になったことはない。
 コノエの他にこの家に入ったのはハウスキーパーくらいだ。おそらく、家主のコノエよりハウスキーパーが家にいた時間の方が長いまである。
「この家はどうかな?」
「どうとは?」
「ダリダが気に入らないならこの休暇が終わったら手放すつもりだ」
「こんなすごい家を⁉︎」
「気に入ってくれたのか?」
「いや、すごいけど毎日住んだらこの広さ慣れるのか? 慣れるか? 掃除できるかなぁ
 吹き抜けになっているリビングの天井をぐるりと見回し呟くチャンドラ。
「オーブの家が準備出来たら必要ないし、気に入ってくれたならバカンス用の別荘として残しておくつもりだが」
「そんな、愛着とか思い出とか無いんですか
「無いかな。あまり帰ってこなかったし」
「帰ってこなかったんですか?」
「帰っても寝るだけの家だよ」
「そ、うなんですねははよくわからないんでアレクセイさんにお任せです。それにしてもこんな家に住んでたら自分の最初のアパートは本当にボロくて狭くて汚くてびっくりしたでしょ。その日のうちに強引に引っ越ししたの納得です」
「あぁあのアパートは確かに古い物件だったな。間取りや築年数というより街の治安が悪すぎてダリダを一秒だってあの家に置いておきたくなかった。ろくなセキュリティも無かったし」
 当時は自覚していなかったが、あの時点でチャンドラのことが好きになっていたのだろう。大切な人が危険な場所に暮らすより、安全な場所にいてくれた方がずっと気が楽だ。コノエの安心の為に引っ越してもらったようなものである。
 指の背で頬を撫でると、コノエの意図を正しく読み取ってくれたチャンドラが顔を上げてくれた。唇に触れるだけのキスを落としてから嬉しそうに細められる青い瞳を見つめる。無事に大人になってくれて本当に良かったと思う。
「その節は本当にありがとうございます」
「いや、私を信じて引っ越しに同意してくれてよかった。君が無事に大人になってくれて嬉しい」
「あ〜……
 チャンドラは両手で顔を覆ってコノエにもたれかかってきた。急にかわいいことをしてくるのでどうしたのかと思いつつ、したいようにさせているとムギュッと抱きつかれ、腹の辺りに押し付けられる胸の感触が気持ちいい。この距離感も夫婦になればこその気がして新婚を噛み締めていたらチャンドラに謝られる。
「ほんっとにすみませんでした!」
「え、何が?」
「自分が無理矢理迫ったからアレクセイさんがラミアス艦長やフラガ大佐に責められる事になってラミアス艦長があんなに怒るって思わなかったなぁ
「ああ
 チャンドラを心配するあまりラミアスにクズ呼ばわりされたがそれはそれ。ナチュラルの倫理観に反する行いをしたのは確かだし未成年と知った後も関係を持ち続けたのだから責められて当然だ。むしろチャンドラがラミアスやフラガに大切に想われていると知れて嬉しかった。
 部下をあんなにも真剣に案じてくれる上官の元で働けるのは幸運なことだ。
「私が悪かったからそれは良いんだ。未成年と知った後もダリダに触れるのを我慢できなかったのは確かだ」
「自分だって我慢できませんでした。あなたに抱いて欲しかった。誘惑したのはこっちなのにアレクセイさんだけが責められて」
 熱烈な告白である。そうか、チャンドラも自分に抱かれたかくて誘惑してたのか。まんまと誘惑されていたなと思うと感慨深い。
「あまりかわいいことを言わないように」
「え?」
「君の誘惑に私は完全に篭絡されてたよ。今もだが」
「あっ、すみません
「謝る必要はないな。ダリダが責任を取って結婚してくれたからどうでも良いことだ。今更やっぱりオジサンは嫌だと言われても離婚には応じないからそのつもりで」
「嫌なワケない!」
「良かったよ。では荷解きをしてきてくれないか。まずはゆっくり紅茶でも飲もう」
 家に入って何度目かのキスをして話を終了させ、チャンドラの背中を押して寝室へと向かわせる。
 小さなスーツケースひとつ分の荷物なのでさほど時間はかからないだろう。



 荷解きを済ませ、部屋着に着替えたチャンドラはリビングのソファーにちょこんと座り、新しくなったコンパスのIDカードを両手で持ってじっと見つめて動かない。
 コノエは紅茶を淹れたマグを持って来て、テーブルに置いてからチャンドラの隣に座った。
「そんなに見てたらIDカードに穴が空きそうだ」
「いや、だってこれ
 チャンドラの手の中のIDカードに記載された名前はダリダ・ローラハ・コノエ。
「ほんとに結婚したんだと思ったらなんかじわじわきてるっつーか結婚出来ると思ってなかったんで」
 チャンドラの指先がIDカードの名前の「コノエ」の部分をスッと撫でる。
「これからよろしく、ダリダ」
「まさかこんなにあっさり結婚できるとは」
「確かになぁ
 もっと煩雑な手続きに追われるものかと思っていたがオーブ方面ではアスハ代表が直々に、プラント側ではクライン総裁の口添えがあり、ラメント議長が動いてくれて、特別な措置を受けられコノエの市民権は速やかにオーブに移されてチャンドラとの結婚がかなった。
 チャンドラが結婚式はしたくないとのことなので、オーブに住むようになったら親しい人を招いて食事をして写真を撮ろうということに決めたので新婚休暇の予定はオーブへの引越しくらいのものだ。
 現在、アスハ代表の部下がオーブで新居を探してくれているので、コノエらはまったりとリビングのソファで差し込む陽光を浴びながら庭の緑を眺めて穏やかな時間を過ごせている。
「ラミアス大佐のおかげでこんなに長い休みが取れた。彼女には感謝しないと」
 チャンドラの腰に手を回して引き寄せくっついておく。
 コノエが休む間、ミレニアムはラミアスが艦長として乗ってくれている。地上部隊用旗艦が無いからこそ出来る特別人事である。
 アークエンジェルが沈んだ時はチャンドラも死んだと思って絶望したが状況は悲しむ余裕を与えてくれなかったし、信じたくなくて情報収集に奔走した。
 結果、ラミアスらがミレニアムをハイジャックしてくれたのでチャンドラの生存も知ることができたわけで。安堵と共にもう一度チャンドラに会うまでは死ねないと思った。
「ラミアス大佐もミレニアムでの勤務は大変だろうから早く新しいアークエンジェルが出来るといい。いや、戦艦がなくても平和な世の中が一番良いのだが
「本当に、平和が一番。戦争って最悪ですよ。突然十年会えなくなることもある」
「そうだな。君は戦争の混乱で死んだと思っていた。もう二度と会えないのかと」
「自分はなりゆきですが連合軍に入ったのがたまに辛くなるときありました。あなたと約束してたのに」
「約束?」
「ナチュラルとコーディネイターのために働くって約束してたから」
「コンパスに参加してくれたじゃないか」
「だからコンパスでやっと約束守れたなぁって思いましたよ」
「約束なんかより、生きていてくれたことのほうがずっとありがたいよ。また会えて本当によかった」
「うん。好きって言う前に死ななくてよかった」
 チャンドラの告白が嬉しくて手を握ると指を絡めて握り返してくれた。しばらくチャンドラの手のぬくもりを楽しんでからタイミングを見て切り出した。
「ダリダ、遅くなって申し訳ないが、指輪を受け取って欲しい」
 作っておいた指輪の箱をポケットから取り出すと、コノエはチャンドラの手の中に握らせた。ついカッとなってミレニアムの食堂でプロポーズした事で想定外の急な結婚となり順番が前後してしまったがやっと渡せる。
「おっ、これがオーダーしてたってやつですか」
「プロポーズに間に合わなくて悪かったね。それから、食堂でプロポーズすることになったのも申し訳なかった。つい焦ってしまって」
「ははっ、何で焦るんですか」
 チャンドラは冗談かと思っているようだが、コノエに余裕がないのは事実だ。十四も年下のナチュラルの彼女が若い男に目移りしてしまわないかは常に不安に思っている。
「自分もアレクセイさんに指輪買いますから! オーブに帰ってからで良いですか?」
「私も貰えるのか。嬉しいな」
 朗らかに話すチャンドラが指輪の箱を開けたが、見た途端に黙り込んでしまった。
「ダリダ?」
「ダイヤ?」
「そうだが」
「デカいな
 チャンドラはぽつりと呟くとパコンと指輪の箱の蓋を閉めてふーっと息を吐いた。
 箱の中から指輪を取り出して左手の薬指に嵌める流れになると思ったが、取り出す前に蓋を閉められてしまうし、喜んでもらえるどころか思ったより反応が悪くて焦った。もしかしてデザインが好みではなかったのだろうか。チャンドラの瞳の色をイメージした宝石にしておけば良かったか。
 チャンドラはそっと指輪の箱をテーブルに置くと膝の上でぐっと拳を握って目が泳いでいる。
「気に入らなかったかな? 好みのデザインがあるなら作り直すが
「いえ! ありがとうございます。指輪はステキなんですが、自分がアレクセイさんに買える指輪は、あなたが思うよりすごく安いかもしれなくて
「うん?」
「いや、家がすごすぎるからその時点で想定しておくべきでしたよね! 自分、ハッキリ言ってアレクセイさんのパートナーになるにはあまりにも貧乏だと思います! 無駄遣いはしてないつもりなんですけど亡命してきたしこの二年間色々と物入りで貯蓄もやっと始められたところで無いも同然ですし、アレクセイさんの生活水準に合わせられるような給料は貰ってないっていうか、家賃どころか光熱費も払えるかなって感じで
「何の話が始まったのかな」
「あ、別居。別居して週六もやし生活すればいけるか? オーブでは今まで通り軍の官舎に住んでも良いですか。補助も出るしあそこの家賃激安なんで!」
「ダメだが
「ダメ⁉︎ ウッやっぱりちょっと結婚考えさせて貰っても? 二年くらい本気で貯蓄してからじゃないと無理かも。入籍したばっかで離婚したらペナルティとかあるんですっけ?」
「待ってくれ、何を言い出すんだ」
 動揺するチャンドラが早口で捲し立てるのを慌てて止めるが、止まらなかった。
「学生時代に出してもらった援助のお金も返したいしそっちは出来れば二十年ローンとかにしてもらっても? で、できるなら金利はちょっとオマケしてもらえませんか?」
「ストップ。一旦黙って」
 仕方なく、混乱するチャンドラの口を手で抑えて止めた。んぐ。と言葉を飲み込むチャンドラは涙目になっている。
「私たちは結婚したんだ、わかるね?」
 チャンドラはこくりと頷く。コノエはチャンドラの口を押さえていた手を外して今度は手を握る。
「夫婦なのだから私の資産は君の資産でもあるんだ。結婚前に伝えるべきだったかな私には軍人として以外の収入があるし、ダリダが暮らしに困るようなことにはならないから安心して欲しい」
「副収入? ですよね軍人って思ったより給料安いですよねこんなすごい家が買えるってことはそうなりますよね
「そうだね、私は計算が得意で趣味と実益を兼ねた株の売買をたまにやっているんだ」
「あ、あぁなるほど?」
 あまりわかってなさそうな相槌を打ってくるチャンドラに優しい説明をする。
「戦争というものはとにかく金が動く。時世を見誤らずタイミングよく資産を動かせば増やすことはそう難しくはないからね」
「でも、やっぱりパートナーになったからにはどちらかの支出が極端に多いなんて不公平だしそれでなくても自分はここまでくるのにアレクセイさんの援助がなければ大学にも行けなかったし、とっくに病気かヤク中で死んでたかもしれないし。これまであなたにしてもらった事を少しでも返したくて」
「違うよダリダ。不公平なんかじゃない」
 ぎゅ、と手を握りしめる。
「お互いができる事をして支え合えば良いだけのこと。どちらがたくさん金を出したとか、そういう問題じゃないんだ。君も大切な人にはいつも幸せで笑っていて欲しいと思うだろう?」
「それはそうですけど」
「過去の援助は私が愛する人の健やかな生活のためにどうしても渡したかっただけのもので、君が心ゆくまで学べて、美味しいものを食べて、健康を維持し、幸せを感じて笑ってくれたなら渡した援助の額以上のものがもう返ってきてるんだ。改めて返してもらう必要はない」
 チャンドラの手の甲を指で撫でる。暖かく柔らかな小さい手。この手をまた握りしめることが出来ただけで支払った以上のリターンがある。
「大学で学んだからアークエンジェルのCICになれたのだし、オーブの士官となってコンパスに来てくれて、再会出来た。支払った甲斐は十分あったよ」
「えぇそんなことで?」
「ああ、私は経済的に君を支えられる。それも私の愛情の一つとして受け入れて貰いたい」
「愛情
「それに、将来的には子どもが欲しい」
 ピクッと震えるチャンドラ。ほんのり染まっていく頬を見るに反応は悪くない。
「どうかな?」
「自然にってことですか」
「そう。妊娠したらダリダの身体に負担をかける間は仕事を休んでもらうことになるのだしその間は私が家族の生活を支えるのは当然だろう? だから、生活費の支出を公平になんて考えるのはナンセンスだ」
 チャンドラは急に静かになって、コノエの手を握り返してくる。
「ダリダ?」
「自分も、あなたの子どもが欲しいです」
 はっきりと宣言してくれて、嬉しくてたまらない。
ありがとう。男の子でも女の子でもかわいいだろうね。タイミングはダリダに任せる」
「ナチュラルの子どもでもいいんですか?」
「愛する人の産んでくれる我が子だ。コーディネイターだナチュラルだというのはどうでもいいことだよ」
 率直な気持ちを言葉にすれば、チャンドラはホッとしたように微笑んだ。
「ダリダ?」
「実はもう、ピル飲んでないんです」
 突然の報告にコノエは目を見開いた。避妊のための服薬を辞めているということは、チャンドラは妊娠するかもしれない。
「いつから?」
「食堂で、プロポーズしてくれた日から
 チャンドラが既にコノエの子どもを望んでくれていたことが嬉しくて、言葉が出てこない。
 援助の見返りにと身体だけを許された日に味わった絶望が幸福で塗り替えられ満たされていく。
「そうか
「アレクセイさん?」
「嬉しくて。抱きしめてもいいかな」
「ハグだけですか」
「え?」
「赤ちゃんが出来るようなコト、したいです。もう夫婦だし
 すり、とチャンドラの指がコノエの手を撫でた。