こゆ
2025-01-29 10:39:54
2499文字
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「おれがまとめて幸せにしてやる」

タイトル通りのポラタンでのただの幸せの話です。
幼い頃のペンギン+シャチのプロポーズと、それを聞かされるローさんの話。ローさんはペンシャチに甘いし、ペンシャチもローさんに甘い。ベポが一番その幸せを客観視できてるといいなと思います。



※AI学習転載禁止(こゆ)








「ペンギンとおれ、ちつながってないの?」
しょんぼりとした幼い日のシャチ。
何がそんなに落ち込むことなのかペンギンにはわからなかった。
ただ、目の前で泣きそうなっているシャチにひどく罪悪感を覚えた。
それだけは、はっきりと憶えている。



「おれたち兄弟じゃないから、だからちはつながってないんだよ」
先祖の出自までは知らないからもしかしたら何処かで繋がっているかもしれない。でも、一個下の幼馴染が聞きたい答えはきっとそういうことではないのだと思った。
ペンギンはなるべく優しく、シャチを傷つけないように伝えたかった。しかし、漠然と宥めなければいけないという気持ちより、シャチに正しいことを教えなければならないという気持ちが先を急いでしまった。
「そしたら、ずっといっしょにいられないじゃん!!」
その結果、ペンギンの答えを聞いた途端にシャチの目からはポロポロと涙が溢れて頬を伝い、小さな手はペンギンの服をぎゅうっと掴んでくる。
泣かせてしまった。
ずっとペンギンと一緒にいたいと泣いているシャチ。
この子の涙を止めないと、それは本能的なものでペンギンの使命でもあった。
泣かないで。
ペンギンは、ハっとする。
そうだ、ずっと一緒にいられる方法がある。
「シャチなかないで。兄弟じゃなくてもいっしょにいられるほうほうがあるよ」
ほんとう?」
「うん!おれとけっこんしてくれれば、ずーっといっしょにいられる」
「けっこんってなぁに?」
「やくそくすること。父さんと母さんみたいに」
ペンギンは父と母を頭に浮かべた。
きっと、シャチも。
仲むずましい夫婦の象。大人になっても、ずっと同じ家に暮らすその様子を頭に思い描く。
……する。けっこんする!やくそくするだけでいいの?」
「うん。しあせになるってふたりでちかうんだ」
「ちかう?」
「ちかうもやくそくとおなじだとおもう」
「じゃあ、ペンとけっこんする。……ペンギンおれとしあわせになろう」
ぱぁっとシャチの瞳が輝いた。
その瞳に、きらきらと瞬くペンギン自身の瞳と綻ぶ口元が映るのを見た。
「ペンギン、やくそく」
「うん、やくそく。これでシャチとおれはいつまでもいっしょだよ。でもおとなになったらな?」
「おおきくなったらぜったいおれとけっこんしてね、ペンギン」
ずり下がる帽子を抑え、涙で赤くなった目を潤ませ何の迷いもなくそうお願いしてくるシャチに、ペンギンはにこりと微笑んで返事をした。
「やくそくするよ」
「ほんとだよ。わすれたらぜっこーだからな!」
絶交の意味をわかっていないシャチ。そんな一個下の幼馴染をかわいいなあと思いながら、ペンギンは小指を差し出した。
「じゃあゆびきり。だいじょうぶ、おれはぜったいやくそくまもるから」
そのペンギンの指をぎゅっと握り返す小さなシャチの指。ぎゅっぎゅって指を繋いで。いつの間にかシャチの涙は止まっていて、ヒリヒリと涙で腫れたほっぺたを真っ赤にしたまま。

「やくそく!ぜったいおれとけっこんしてねペンギン」

そう言って幼いシャチは歯を見せて笑った。


***


「ってことがあってさ。かわいかったなァ、チビのころのシャチ」
酒を飲みながら、小さなシャチのプロポーズの話をするペンギン。何回も聞いた、とは言わずに「さすがシャチだな」「その話は知らなかったな」「すごいなシャチは」「プロポーズのセンスがあるな」と相槌を打つロー。
「そうなんですよ。顔真っ赤にして。“おれと結婚してね”って。そのあと結婚の本当の意味がわかってからも“約束は守る。俺たちふたりで幸せになろうな”って。いくつんときだったかなァ。照れながら笑ってさァ」
「そうだな。それは良いプロポーズだったな」
ローは空になったグラスに手酌で酒をなみなみと注ぎ、チビっと舌をつける。
そして。
「さすがシャチだな」
と、すでに10回は繰り返されたであろうセリフを口にする。そして、またチビっと酒を舐めた。

…………ねェキャプテン聞いて。おれとシャチがまだこんなチビだったときの話なんですけど、おれシャチにプロポーズされたことがあって」
と、ここでペンギンの話が一番最初に戻った。
「シャチがさぁ、親に『ペンギンくんはシャチのお兄ちゃんじゃないんだから』って言われたみたいで。飛びついてきたと思ったら目にいっぱい涙溜めてさァ。そんときに初めておれと自分が他人だって気づいたらしくて、」
「その話は知らなかったな」
当たり前のように同じ返答をするロー。
ペンギンはそれを聞いてるのか聞いてないのか、愛おしげに腕の中のふわふわの髪の毛を撫でた。
ぎゅうっと思いのほかきつく抱きしめてしまったようでグェっとかわいくない鳴き声がしたが、それをローは聞こえないふりをする。
その鳴き声にペンギンは笑いながら両腕いっぱいに優しく抱え直すと、思い出より何倍も大きくなったシャチの身体はまるで吸い寄せられるようにその腕に絡まってきた。

「まァ、今でもびっくりするくらいかわいいですけどね」
「すごいなシャチは」





「何アレ?」
寝ているシャチを後ろから抱えるように抱きしめてずっと同じ話を繰り返しているペンギンと、「さすがだな」「知らなかったな」「すごいな」「センスがあるな」「そうだな」と同じ相槌しか言わないロー。
食堂へ入って来たばかりのイッカクが、そんな三人をにこにこと見守るベポに訝しげに問う。
「酔っ払って寝ちゃったシャチと、酔ってないけどくだまいてるペンギンと、予算オーバーな買い物がふたりにバレた全肯定キャプテン」
「あ、そう」
尋ねるだけで「いつものあれか」と、すでに興味が失せてしまったイッカクは、私も飲も〜っとカウンターの奥へ消えていった。
だって、エンディングはハートの海賊団の船員クルーはみんな知っているから。


そろそろローが諦めて謝るころだ。
そして、きっといつものセリフを言うのだろう。







「おれがまとめて幸せにしてやる」