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ヒデライカ
2025-01-28 22:24:00
1136文字
Public
⚖️SS
書きかけ海ター
片思いから不穏な空気を経てハピエンになる海ターの片思い部分
「真冬ちゃんとはどうなんだよ、ター坊」
海藤の問いに八神は眉を顰めた。八神探偵事務所で二人は向かい合うようにソファに座り、依頼人に報告する資料をまとめていた八神が海藤を一瞥する。三人掛けのソファにふんぞり返って座る海藤は煙草を咥えたままニヤニヤと八神を見る。
海藤は時々この話題を八神に振る。いつもなら「どうもないよ」と流すところだが、厄介な依頼が続いて心身ともに疲れが溜まっていた八神は上手くいなすことができず、答えないで手元に視線を戻した。
眉間に深く刻まれた皺を見て海藤は「なんだよ機嫌悪いな」と言いながら煙草を灰皿に押し付けた。根を詰めている八神に気晴らしをさせるつもりだったが失敗したらしいと判断した海藤は、コーヒーでも淹れてやるかと立ち上がった。
湯を沸かそうと水道に手を伸ばした海藤の背に、軽い衝撃があった。首だけ動かして見ると、抱きついてきた八神の傷んだ毛先だけ目に映る。顔は背に押し付けられて表情が窺えない。
「俺さ、海藤さんが好きなんだよ」
「
………
あ?」
八神の言葉を飲み込むのに十秒はかかった。今の話の流れからして、人間としてとかそういう『好き』ではなさそうに思える。
「海藤さんにも分かるように言うと、抱かれたいと思ってるってこと」
「
…………
」
「十代のガキの頃から、ずっと」
齟齬がないように相手にしっかり伝えるのは大切なことだが、海藤は余計に混乱した。二十年一緒にいてそんな素振りを見せたことはなかった
……
と思う。考えたこともなかったから見過ごしただけかもしれないが。
顔を見られたくない八神は海藤の腹に回した腕に力を込めて続ける。
「海藤さんが俺のこと、弟みたいにしか思ってないのは分かってる。こうして側にいられるだけでいい。恋人にしてくれなんて言わない。だから、海藤さんも俺に、他の人と付き合うようなこと言わないで。俺はずっと、
……
ずっと海藤さんしか見てないから」
するりと八神が離れる。ター坊、と海藤が声をかけながら振り返るが、八神は「出かけてくる」とだけ残して出ていった。
八神の言う通り、海藤は八神のことを弟のように思っていた。可愛いし、目が離せないけど、それは別に恋愛感情じゃない。
きっと今まで何度も無意識に傷付けてきたのだろう。その度に八神はのらりくらりとかわし、海藤はそのまま気付かずにいたのだろう。
今こうして八神が吐き出さなければ、この先もずっと。
八神は挫けても立ち上がれるし前を向ける人間だが、変に思い詰める節があることを海藤は知っている。今まで通り接することを望まれているだろうが、ちゃんと様子を見ておかなければ。そう考えながら海藤は再びソファに戻り煙草に火をつけた。
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