akinoshiroihana
2025-01-28 18:53:06
3006文字
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枕経(ずっとWIP)

サーガ竜馬はなぜどんな感じで隠遁したか仮説
(道場は最初やってなかった、完全な世捨てのつもりだった説とか、もっとしんどかろうよ派)
謎の修行僧用食器は、そういうのが幼少期いたお寺に本当にあったんですね……

土産の葡萄は洗って粗末な皿に乗せられ返って来た
マスカットじゃねえんだなとのからかいと共に
陶製の平たい、しかし脚らしいものが付いていない分底の厚い

「ここに元からあった食器だよ
坊さんが旅先で座禅する合間には、これ二枚か三枚組の、これっぽっちの深さ分だけ粥や汁を恵んでもらって、これをキレーに洗ってまた懐に戻して旅すんだとさ―――どう思う無理だろ?」

ゲッターから降りた後、
ゲッターから逃げた後、
それでもあいつに抗い生きてみせるためにできるだけ遠くへ離れようとして、親父の道場を処分して誰をも巻き込まないようにこの世の果てまでと誓ったつもりが、
ベテランの熊撃ちだって街には下りなきゃ生きていけねえと諭され
米を自力で食いたきゃ栽培できる気候の土地で、最低三町の田んぼを管理しなきゃならないと知り
修行僧の真似して生きるのだって飯を恵んでくれる相手が必要だ
それに人々の幸せを祈っているのだ恵んでくれと伝えることができるのは、俺の場合、このちっぽけな島国でだけだ
ただのど田舎に引っ込んで、なるたけ人には会わず世捨て人ぶって慎ましく生きるのがせいぜいだったと知ってぽかんとなった

ダム開発により廃村になった土地の山の上に残る廃寺
自殺者の遺体を発見したら遺族に礼金をもらったり、
この世を儚んだやつをばかこんなとこで静かに死ねるかと思いとどまらせたりしてたらまた町との縁ができた。
いい若い者がゴロゴロしていてどうする、目の前に手伝ってほしいもの助けてやれるものいくらもいると
しゃんと立てと言われて何かしてみれば、自分の中で捏ねられ纏まって形を成しているものがいくつかあることとそれぐらいしかないこと、それが戻るまいと決めた世界に容易く繋がること
インフルのニワトリの処分を養鶏場で手伝ったときなど、殺しまくるのが初めてって感じじゃないねといわれたものだ。

俺はとんでもない何かと目が合ってしまって、呪われ、呪いを解く方法はないから、それが追い付いてこられない所まで逃げるのが無理なら、せめて見付けにくい場所で息を殺して生きる他なかった。俺の手には、いや俺まるまるがどこか金庫みてえな分厚い門扉のついた古びた土蔵のやや曲がった鍵のひとつかなんかで、鍵が集まらず、その蔵の扉の話が誰もから消え去る時を待つ以外なにもすることできることがない。
自分が自分であることを殺しつつ用心深く生きてみせる矛盾は酒毒への吐き出し甘えになり、楽しい夢といえば荒唐無稽なものではなく過去のあれこれ、あの地獄のような戦いの日々、その合間に得た掛け替えのないものであったとたまらなく寂しく思い悔い、ときに情けなさに泣きもした
あまりにたりない、さみしい、心が飢えて罅割れそうになる
世界は大きい俺は小さいそれでもそこに愛する者がいること
愛せるものが間違いなくいること、それはせめてもの救い
それがひとりだった俺の学んだこと本当のひとりとは違うこと
だからあのただただ圧し殺しむさぼり腹が裂けても喰い続ける無感動の宇宙へなど行ってたまるかと
庭先にはめったにやらない残飯目当ての猫と、烏と鳩と雀と、他に行くところのない者たちがぱらぱらといるのを、目覚めるたびに数え
門扉に看板を掲げたのはその後だっただろうか。

お前があの力と共に善き未来を探す日々を
そうならない未来に至るけちな鍵かネジの一つであろう俺は行くべき道から外れてみせ
遠く遠く何百哩も離れてそれを阻止してやろうという覚悟は
諦めてはいけない受け入れてはいけない、そのために俺本来の持つ何かの形になってもいけないというのは

ああ、だが人は人間は ボンヤリ生きるために生まれてくるわけじゃない!

人と関わりすぎるまいとして救えなかった何人目かの奴が
麻薬に手を出して死んだ道場に通う子供で
学校のいじめから登校拒否、中途半端な逃げ場と力を与えたらもっと良くない所に行ってしまった
あまたの生贄が捧げられてからようやく怒り動けるのが俺だった何も変わっていねえと
何度目かの幻滅とともに暴れて来たのはお前が號を寄越す前の日だった
そうそう、そうなんだよ。

帰り道、やたら耳や鼻から血が止まらねえので、年って奴かなそれとも酒で内臓がボロボロにってやつかなとまた酒を呷り寝転がったらそのあと
怒鳴りつけてやろうと思ったお前が真ゲッターから顔を出した瞬間、まだ新しい固まりもしてねえお前の血の匂いがぷんとして、
まあなんてことお前もそっくりそういうザマで
何だこりゃあお前の血かと自分の顔を撫でた
なんだお前が痛かったのか
お前が痛ければ俺も痛いのかなんて迷惑な話だよってのが
たまらなかったさ、だからいよいよ叫んだのさ。

お前との再会に心が揺れ動いたのは、
お前も傷だらけなのに驚き、ひやりとし、あわてたあとで、なんだお前もと
納得、おかしみ、安堵がもっと順当な気持ちを押し退けて出るのがこそばゆく

むかし俺達は同じ時の死でとなりあっていた
どれだけ過去と、もしも死ななかったときのこの先の可能性が違おうと、そこでだけは間違いなく繋がっていた
だがどうだ
『愛する者がいる限り』戦って守ろうとした研究所のみんなは、俺の最良の数年間は消え失せ
「愛する者」を守るために共に戦ったお前一人が、『愛する者』の中のたった一人だけが俺の手の中に残った
俺が守れる者などその程度だよと、なのか
俺が守りたいのはそいつだよ、だったのか
だからいよいよ、本当に、二度と会えないと思ったお前

俺が辛いのはお前が辛かったのかもしれない、それとも
俺が痛いのをお前も感じてくれていたのかもしれない
俺というケチな歪んだ鍵かネジクギはどこかのよくねえ扉でなければ
お前がまさにその錠前で鍵穴で、どっちかが血でよごれてりゃいっしょに血まみれになる道理だったから
違うと思っていた生き方に同じ賽の目が出ていて、
俺のこの、これは、おれひとりのものではなく
おれはまだひとりではないのかもしれないといいやそうじゃない
あの時から俺はけしていちども一人ではなかったのだという馬鹿みたいな結論!
信じようと、感じようとするのではなく、信じる他ないではないか、感じていたではないか
俺の孤独空虚痛み諦めすべてお前のものでお前のせいで俺のせいだ、

あのときお前をゲッター1の中に入れ、大きすぎるGと漏電にままならない身体を馴染ませ
目を閉じてゆっくり息をしろとなだめたあれは
俺もお前も雄の形を保ったまま、心だけでなく肉感もまたひとつになったあとまた離れたのだから

いま凍てつくばかりに燃えてかなしいのは、この星の大地かお前の裡か
どうだ、今こうなっても俺達は繋がっていると夢見る気はあるかい
いまの俺がいまのお前に触れるとしたら

火星からの中継を終わり黒い鏡となっていたモニターに
一瞬映り込んだ赤い戦神は、正しく神隼人と見交わした。
ゼロコンマ数秒の幻の中、隼人はポンプの水で洗ってきて露を含んだ葡萄の厚皮を、糟糠の妻のように剝き竜馬に差し出してやり、畳の上胡坐をかいたままの竜馬は待ちわびたように嬉しそうに笑い
皿の上高く積まれた果実は二人の渇きをじゅうぶん潤したので


「きっと……すごいものを発見するよ」
ゲッターロボが飛び立ったあとで、
この時隼人は初めて笑った。