つまるところ血鬼術とは(2)

前回よりヤマもオチも無いですが、考察したことがちょろっと書けて嬉しいです。



 それは、月の明るい晩だった。ただでさえ鬼狩りなど恐ろしくて仕方ないのに、その日は善逸にとってほとんど厄日であった。
 任務先が夜の学校だったからだ。必ずと言っていいほど怪談スポットになる場所である。善逸はこれまでに聞いた怪談やお化けの話をぼんやりと何度も思い出してしまい、いつも以上に周囲の全てに敏感だった。
 死ぬ死ぬ、死んでしまう、今日こそ鬼やらお化けやらに殺される、いやもう鬼なんてお化けとほぼ同義なのでは、やっぱり死ぬよ死んじゃうよと、一緒に任務に参加する三人がいっそ無視を決め込んでしまうほどに善逸はずっと怯えて震えていた。
 しかも、校舎に入ってからずっと音がする。鬼の音も微かに聞こえるけれど、それとは別の、鬼ではない何かの音。善逸とまではいかないが耳のいい宇髄も感じ取ったようで、やっぱり何かいるんだと善逸は泣きそうになっていた。
「善逸、お前、いい加減に───」

ぱ り、ん

「ギャア!!!!!!」

 とうとう善逸は頭を抱えてしゃがみ込んだ。善逸を叱り飛ばそうとしていた宇髄も、さっと表情を変えて周囲を見渡す。
……いま、なにか」
「割れた!!! 割れたよォ、何もいないはずなのに!!! 何もしてないのに、地震が起きてもいないのに割れたよォ!!!!! ヒッ、ダァンっていった!!!! ダァンって!!!!」
 誰かいる、と善逸は尚も喚いてがたがた震えている。恐怖が十割全身に来ていた。本当に怖いのだ。
 直後、三人が立ち往生し一人がうずくまる廊下に、甲高い女性の声が反響した。

「四人!? ハァ、ふざけんじゃないわよ!!」

 張り上げられた怒声に、善逸が悲鳴をあげて文字通り飛び上がる。
 宇髄は瞠目して、咄嗟に言葉を失った。煉獄が小さく「よもや」と独りごち、炭治郎は鼻をひくつかせて、匂いを嗅ごうとしているようだった。
 突然四人の目の前に現れた彼女は片手に金槌を持っていた。頭を抱え、顔を空いている手で覆い、天を仰ぐ。
 まさか自分たち以外の人間が夜の校舎にいるとは思っていなかったので、四人は言葉を探しあぐねた。やがてこちらが何か言うより先に、彼女の方が先に復活したようである。
「ちょっと、あんた達!!」
「は、はいっ!!」
 反射的にだろう、炭治郎が元気よく返事をした。
「いい、なんでこんなとこに来てんのか知らないけど、今すぐこっから出て行きなさい!!」
 彼らは再び言葉を失った。それはまさに自分達が彼女にこそ伝えようとしていた内容だったからだ。
 その中でも炭治郎は即座に切り返した。
「そういうわけにもいかないんです、すみません!!」
「、は、はぁ!?」
 お前のそのまっすぐさがいっそ羨ましいよ、と宇髄はとうとう遠くを見はるかした。煉獄などはよく言ったと言わんばかりである。善逸はどん引いていた。とんでもねえやつだとその口が小さく動く。
 だが、炭治郎の言う通りに、そして「此処に鬼を斬りに来た」と堂々宣う煉獄の通りに、四人は引くわけにはいかなかった。
 その後、彼らは、善逸の機転と彼女の勘違いで、鬼に対して共闘する事となる。

 この晩はまさしく転機であった。











 渇く。

 飢える。

 どうしようもなく、欠落を埋められない。

 忌々しい、忌々しい。

「面白い事になったな」
 ケヒ、とソレが嗤う。後に鬼舞辻無惨と名乗る事になった男は、不快そうに眉を顰めた。
「その【青い彼岸花】とかいう薬草か何かで、お主の血肉が髪の一本、肌の一欠片に至るまで、変わったのだろうよ」
 男の肉体は、先の時分からは考えられないほど健康的になっていた。肉の隅々に至るまで神経ならびに力が行き渡り、活動的になったようだった。瞬発的に増強させるのも伸縮させるのも、問題なく行える。
 致命傷を負ったとて、それが生死に関わることはなくなった。
「お主の血筋に、加茂の血流が幾分か流れておるのではないか」
……
 男は、ふいと視線を外した。そんな事、一家全てを惨殺して喰ってしまった今となっては確かめる術も無い。ソレは変わらずにやにやとこちらを嘲笑っていた。
「血が変わったのだ。つられて肉も変わった。爪が鋭く伸びるのも、お前の血が何やら不可思議な術もどきに仕えるのも、それをどうにもできないのも、薬師を殺したお前の身から出た錆だ」
 きゃらきゃらと、ソレは嗤う。やんぬるかなと、男を嘲笑う。
 少しはそれらしく振る舞え、という言葉は、血反吐となって吐き出された。











 産屋敷家は平安の御代から続く旧家である。始まりは貴族であり、階級制度が無くなった現代では一種の富豪として存在している。
 この家に、正しくはこの家の当主の血筋に呪いがかかっている事を、呪術界の御三家はきちんと認識していた。それでもこの千年、何も手を出さずに声すらかけなかったのは、産屋敷が神職を頼ったからである。
 呪いは返すものであり、紐解くものであり、祓うものだ。当時の神職は、産屋敷の一族から出ているこの世の理に反する者をその手で消さぬ限りは呪いは解けぬと告げたらしい。
 呪いをどうにかする方法は様々あるが、返して紐解くのは陰陽師の得意とするところである。神職ができる事と言えばせいぜい呪いそのものから生まれる穢を祓う事くらいだ。

 では、呪いそのものを祓うには?

 簡単な事だ。
 古来から、毒は薬と転じた毒で以て制される。
 呪いは、呪いを以て制すしか、方法は無い。

「けど、これは無理だと思うな」
 広い武家屋敷の客間で、五条悟はあっけらかんと告げた。その口端は吊り上がっている。
 話を聞いていた産屋敷家当代の主である輝哉は「そうか」と微笑みを崩さずに相槌を打った。
「千年前ならいざ知らず、時間が経ち過ぎたね。返す先はもう無いし、紐解くにしたってどういう呪術か詳しく調べ切る前にあんたが死ぬ」
 その声音はどこまでも軽薄だった。口元の笑みがそれに拍車をかけていたが、五条は馬鹿にするのでもあげつらうのでも無く、ただ淡々と事実を述べているだけだった。
「祓うにしても、ここまでとなると緻密じゃ言い切れないくらいの作業が必要だ。それが可能な術式は現在に伝わってないし、あったとして特級レベルの腕前が要求される」
 そして、呪術界が規定に基づいて定めている特級術師は、五条悟を含め四人のみ。
 内一人は呪詛師として野に下り、呪術界と敵対していた。一人は海外で修行中。残りの一人は何を調べているのか世界中を奔放に飛び回っている。
 思い返してみて、あれ、僕ってばめちゃくちゃ働いてんじゃん、超偉い、と五条は自分で自分を褒めた。後進の育成に留まらず方々へ任務に赴き、若人の青春を守り……さすが最強である。
「では、やはり無惨を倒すしかないか」
「それで呪いがすぐ消えるわけじゃないだろうけどね」
 何故なら、産屋敷一族に呪いをかけたのは鬼舞辻無惨とは断定しきれないからだ。
 確かに、呪いの発生源、大元を断てば呪いは消える。その効果は徐々に薄れていく。けれどもそれは呪いをかけた本人とその術式が明確に判明している場合だ。
 産屋敷はそれでもいいんだよと穏やかな声音で続けた。
「きっかけを作ることが出来るのならそれだけでも価値はある───私達にとっては」
「どこも地獄だね」
 五条は心底楽しそうに言った。産屋敷も笑みを深める。
 かたや呪術界が千年かけて祓えなかった特級呪霊、呪いの王。
 かたや千年かけて一度しか追い詰めることができなかった人を喰らう鬼。
 放っておけば被害を受けるのは自分達のみならず、一般にまでそれは拡がっていく。
「それじゃ、せいぜいよろしくね」
「こちらこそ」
 初めての会合は、にこやかに締め括られた。
 上弦の伍である玉壺が高専の生徒と鬼殺隊士によって葬られた夜から二日も経たない昼下がりの事だった。産屋敷邸の庭には季節でも無いのに見事な藤棚が咲き誇っていた。











 東京都心から車を走らせて一時間弱。
 山間に囲まれるようにして設立されている呪術高専に、一台の車が姿を見せた。
「ここでいいんすかね」
 駐車場らしきスペースに車を停めてギアを下げたのは鬼殺隊にて事後処理部隊として活躍している後藤である。彼は黒いマスクに黒いキャップを被って顔が分からないようにしていた。
「うむ! どうやら学長らしき人物もいらっしゃっているな!」
「え、どこですか? あっあれ? めっちゃ遠いのによく見えますね」
 助手席に座っていた煉獄は「まあな!!」と答えて車を降りた。その後に後藤と、煉獄について来た炭治郎も続く。二人は手分けしてトランクと後部座席に分けて積んだ木箱を外に運び出した。
「鬼殺隊炎柱、煉獄杏寿郎だッ!! よろしく頼む!!」
「夜蛾正道だ。こちらは加茂憲紀。京都校の生徒だ」
 狩衣を着た男が丁寧に頭を下げる。
「竈門炭治郎です」
「えー……後藤です」
「後藤は【隠】……事後処理部隊ゆえ、名を全て名乗れない。失礼を許してくれ。炭治郎は俺の継子……弟子のようなものだな!!」
「はい!!」
 炭治郎は元気に頷いた。二人のやりとりが微笑ましい。夜蛾は意識して表情を引き締めたが、加茂は微笑んだ。
「詳しい話は中で聞こう。少し歩くが」
 夜蛾は一行を学長室に案内した。途中いくつもの神社や仏閣があり、炭治郎はきょろきょろと周囲に視線を彷徨わせた。まるで迷路のようだ。
「それで、二人が抱えているのが……
「あぁ、【日輪刀】だ。特殊な玉鋼で鍛刀されたもので、才ある者が持つと色が入る」
「色?」
「文字通り、刃の色が変わるんです。それが理由で、色変わりの刀とも呼ばれています」
「色が入るのと入らないのでは、何か違いがあるんですか?」
 炭治郎に重ねて訊ねたのは加茂だった。「ええと、」炭治郎は少しだけ眉を寄せた。
「日輪刀の、刀としての機能に違いは無いとされているんですが……
「これまでの鬼殺隊に、色が入っていない刀を持つ者は居ない!」
 突然、煉獄が大声で言った。加茂は驚いて思わず瞠目した。
「故に、色の入っていない刀が鬼の頸を斬った事例は無い!! 日輪刀はそもそも普通の玉鋼とは違うもので出来ているので、鬼を傷つけることはできる筈だが、頸が斬れるかどうかは保証しかねるな!!」
 夜蛾と加茂は思わず顔を見合わせた。後藤は手で額を押さえ、炭治郎は苦笑している。
「鬼の頸は、本当に硬いんです。ただの刀では歯が立ちませんし、傷を付けたとしてもすぐに修復されてしまいます。『日輪刀』で、『呼吸法』を使った上でなければ倒せないんです」
 そして、それが出来る人達の刀は全て色が入っています。
 炭治郎の補足に、なるほどと二人は頷いた。
 呼吸法を習得して日輪刀を持っていても、鬼の頸を斬ることができない場合があるということなのだろう。
 この原因は刀に色が入っていないから、という証明は成されていないが、普段の戦闘のように呪力で先日の戦いを凌いだ虎杖のような者ならば、色があってもなくても太刀打ちできるだろうと思われた。
「それじゃあ、計十振りですね。お納めください」
「ありがとう」
 夜蛾はそれぞれ木箱に収納された刀をひとつずつ確認すると、後藤が差し出した書類にサインした。
「刃こぼれや破損などがありましたらこちらで対応しますので、連絡してください」
「分かった」
 ひとつ、肩の荷が降りる。夜蛾は安堵した。
 虎杖が頸を飛ばしても野薔薇が心臓を釘刺しにしても祓えなかった呪霊───正しくは鬼だが、その話を聞いた時は思わず狼狽えてしまった事は記憶に新しい。
 研究を重ね、特別な対抗措置を講じるには人手不足が過ぎる。こうして鬼殺隊を通じて呪具とも取れる特別な刃を入手できたのは幸運だった。
「憲紀、五振りは京都に持ち帰れ」
「ありがとうございます。では、煉獄さんには、これを。産屋敷殿にお渡しください」
「これは……
 加茂が手渡したのは古びた和綴じの本だった。「古文書だな」煉獄がぱらぱらと頁をめくる。
「これには、何が記されているんだ?」
「我が加茂家の術式についてです」
「!」
 頁をめくる煉獄の手が止まる。炭治郎も瞠目して加茂を見やった。
「あの……それって、すごく大事なものじゃないんですか?」
「勿論」
 加茂は頷いた。
「しかし、鬼も呪術のようなものを扱うと聞きました。血鬼術、でしたか」
「悟が産屋敷殿と話した際に、鬼舞辻無惨の鬼の増やし方についても聞いたらしくてな」
 鬼舞辻無惨は、己の血液に含まれる遺伝子を徒人に含ませて、対象を鬼に変貌させる。おそらく鬼舞辻無惨の血液そのものが呪物的な位置付けになるのだろうと五条は推測していた。

───まるでゾンビだよね。血液を媒介にして感染する肉体改造ウイルスってところじゃない?

 愉快そうに笑う五条が脳裏によぎる。夜蛾はサングラスの下で眉を寄せた。一方の加茂は、煉獄達への解説を続けていた。
「血液を媒介にする術式は御三家に多い」
 かく言う私も、と加茂は伏せていた瞼を開けた。
 ずるりと、眼球に血の筋が浮かび上がる。
「、」
 微かに血の匂いが強くなる。炭治郎は小さく身を引いた。
「私達は、西洋ほど、術式の秘匿について拘ってはいないんだ。加えて、その本に記されているのは、私にとっては基礎ばかり。とは言え、他言無用だとは言っておこう」
「承知した!」
 煉獄は、くれぐれも丁重に扱うようにと後藤に古文書を預けた。これで鬼舞辻無惨について何か分かることが少しでも増えればいいのだが。
「ところで、夜蛾殿!ひとつふたつ、訊ねたいことがあるのだが!」
 相変わらずどこを見ているのか分からない煉獄の言葉に、夜蛾は「なんだ」と静かに応じた。











 あの衝撃的な夜以来、善逸は毎日を死んだように生きていた。
 夜は勿論、夜明け前の暗さに怯え、昼過ぎの影に震え、夕焼けの空でさえ何やら恐ろしいと目を背ける始末である。誰かと一緒にいればその恐怖は半減するものの、どうしたっておそろしいものはおそろしい。
 善逸は今日も今日とて、死んだように生きている。
 その様子を見て、宇髄は嘆息した。一旦、パレットと筆を置く。宇髄は表向き、画家として暮らしていた。ここは彼のアトリエ件住居である。善逸は宇髄の継子であるので、時間がある時はこうしてアトリエに顔を出していた。
 宇髄が自分の近くに移動してきたことに気付きながらも、善逸はそちらではなく、先日の夜の事を思い出していた。
 上弦の鬼を、しかも̪数字持ちを、ああまで追い詰めたのは鬼殺隊隊士ではなく、普段呪霊と呼ばれる鬼のような化物と相対している呪術師であるのだという。
 呪術師って、なにそれ。めっちゃこわいじゃん。
 いやもう怖いしか言えない。めちゃくちゃ怖い。善逸は世のイケメンは全員滅べばいいと思ってるし嫌いなものは存外多いタイプだが、それでも他人を呪うほどいい性格はしていない。つもりだ。
 呪いを呪いで祓う。鬼が日輪刀か太陽の光でしか倒せないのと同じように、呪いは呪いでなければ祓えない───倒せないそうだ。
「え、じゃあ、俺達鬼殺隊が鬼の討伐任務だと赴いたら実は呪いの被害でしたなんて事が今後起きる可能性があるってことですか」
 ぶつぶつと死ぬだの怖いだの呟いていた善逸は、ふと顔を上げて宇髄に問うた。彼はいつになく真面目に頷いた。
「そうなるな」
 音柱として継子である善逸の面倒を見ている宇髄天元は、絶望を通り越して虚無になった善逸をさすがに心配した。
 普段からぎゃあぎゃあ喧しく騒がしい奴ではあるが、いざとなればやる時はやる男である。しかし今回ばかりはそうはいかないだろう。宇髄は善逸の様子を窺った。彼はどうにか現実から目をそらしながら事実を確認しようとする器用な事をやってのけようとしていた。
「え? でも、呪いって、俺、今まで見た事ないよ」
「一般人には見えないらしいぜ。霊能力者とかいるだろ、そういうやつらにしか視えないんだと」
……じゃあ、任務先でおばけと遭遇したら、俺、死んじゃうじゃん」
…………
 そんなことはない、と言いかけて、その実具体的な対処法が無いため、宇髄は一度開けた口を閉じてしまった。
 すう、と善逸が息を吸う。宇髄は咄嗟に耳を塞いだ。

「ぎゃあああああああああああ!!!!! やだア゛ーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 やはり、これである。宇髄は汚い高音に顔をしかめた。

「見えないじゃん!!!! 見えないんじゃん!!!! いやそれ刀で斬れなくない!? やばくない!? どう考えてもやばいよねなんで!? なんでそういう事実が俺の居る時に発覚してんの!? やだよほんとにやだよなんだよ呪いってめちゃくちゃこわいじゃんただでさえ鬼ってすごく怖いのにこれから鬼だけじゃなくて呪霊とかいうのにも警戒しなくちゃいけないなんて無理だよ死んじゃうよ絶対死ぬよ!!!!!!!!」

 ここまでノンブレス。凄まじい肺活量である。さすが呼吸の使い手。宇髄は妙な所で感心した。

「つーか見えないものに対してどうやって警戒しろっつーんだよ無理があるでしょ馬鹿じゃないの!???!? というかそれならあの人たちはどうなの!!? 日輪刀も持ってないのに!!!」
「あー……
 あの人たち、はおそらく高専の生徒の事を指すのだろう。宇髄は「それなら」と努めて何でもないことのように言った。
「煉獄と竈門がお館様の名義で日輪刀を何振りか提供したらしいぜ」
「煉獄さんと炭治郎、本拠地っぽいところに行ったの!!? 馬鹿なんじゃないの!?!? なんでそんな空恐ろしい所行けるのどういうことなんだよとんでもねえ炭治郎と炎柱だな!!!! というか俺達への救済措置は!!?!? 呪いとかおばけとか絶対見えたくないけど見えなきゃどうしようもないじゃんやだよ死んじゃうよどうすればいいんだよ!!!!」
「あるぞ」

「えっ」

「あるぞ、救済措置」

 ぽかん、という音が聞こえてきそうである。それぐらいに、善逸はぽかんと口を開けて呆けていた。
 しかめつらしく、それでいて重々しく「聞きたいか」と言った宇髄に、善逸は、はっと我に返った。
「き、聞きたい!! ……です」
 そうか、と宇髄は神妙に頷いて、己の車の鍵を取り出した。
「じゃ、行くか」
……どこに?」
 先程の真剣な表情から一転、宇髄はにっこりと微笑んだ。
「呪具とかいうブツを取り扱ってる店」

 じゅぐ。呪。具。

 呪いの、道具。

「ッ」
「あ」

 やべ、と宇髄は素晴らしい反射神経で再び耳を塞いだ。

「ア゛ーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」

 汚い高音、再び。

 その後善逸が宇髄の車に押し込められたのは、かれこれ一時間は経ってからだった。