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桜霞
2018-02-13 17:39:49
1994文字
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#魔女集会で会いましょう
こんなの(通い系)があってもいいと思ったんだ
お絵かきできなかったので誰か描いてください
それはいつの日だったのか忘れてしまった。
半袖に半ズボンだったから冬ではないはずだ。けれど、少年と呼ばれる、あの年の頃ならば、冬でもあんな恰好をして走り回っていたような気もする。
住んでいた場所の近くにある山の中にいつも通りに走って行って、友達と駆け回って遊んでいた。
…
のだと思う。
いつの間にか一人だったので、詳しいことは覚えていない。
とにかく走り回って、転がってはけらけら笑っていた。それだけで楽しかった。
木漏れ日にきらきら光るホコリも、少年にとっては目を輝かせる存在としては十分だった。
その時は、少し疲れていたのだ。
昼食を食べてから家を飛び出したから、もうすぐおやつの時間のはずだ。そろそろ帰ろう。でも走りすぎて、転がりすぎて、何より笑いすぎて疲れてしまった。
一人だったが、さして不安はなかった。木々に隠れて見えにくいが、ここからでも住んでいる場所の様子は窺えた。ここは森の中だが、そこまで奥まった場所でもないのだ。
下草の生えていない場所へ寝転がる。息を整えて、疲労から来る眠気に任せて何度か目を瞬いた。
しかし少年の目は、次の瞬間に見開かれた。
ぬ、と音を立てずに、気配も感じさせずに、少年の狭い視界に何者かが侵入してきたからである。
驚きで固まってしまった少年と同じくらいに目を見開いて、それは静かな声で「何してんの」と言った。
「
…
へ」
「何してんの、こんなとこで」
「
……
」
特に何もしていなかった少年は、言葉を失って何度か口をもごもごさせたが、結局は黙りこくった。それは「ふ」と口端を吊り上げて、よっこらせ、と言いながら立ち上がった。
少年も起き上がる。それの髪は長かった。住んでいる場所では見たことのない格好をしている。
「
…
だれ?」
「さて」
それは首を傾げて見せた。母にも、妹にも似ていない顔の造形だ。村一番の美人と称される娘ともまた違ううつくしさがあると思った。
「夕暮れまでだよ」
「うん」
それは踵を返すと、少年の背後にある小さな小屋へ入って行った。そこに小屋があることに、少年は初めて気が付いて、再び驚きに固まった。
少年は再びそこを訪れた。
「また来たの」
「うん」
それは以前とはまったく違う服を着ていた。以前は住んでいる場所では見たことも聞いたこともかけらもなかった服装だったが、今日来ているのは近所で一番厳しいおばさんが来ているものに似ていた。
色鮮やかなショールもそれの肌の白さを引き立てていた。以前は闇のようだった黒髪が、少しだけくすんで見える。
「暇だねぇ」
「うん」
家の手伝いも、遊びもひと段落ついてしまって、暇なのだ。少年は小屋の周りをきらきら光りながら飛ぶ得体の知れない何かに釘づけだった。
「夕暮れまでだよ」
「うん」
煙を口から吐きながら、それは言った。少年が小屋の周りで遊んでいる間、それはずっと小屋の入り口の傍にいて、暖かな木漏れ日に目を細めていた。
少年は青年になった。
「また来たの」
「うん」
それは最初に出会った時と似たような恰好をしていた。小屋の入り口に置いた背もたれも何もない切株の椅子に腰かけて、膝の上にしろがねに光る細長い鉄を置いていた。
包丁を細く長く伸ばしたものに見えた。きっと切れるのだろう。青年はそれに興味を持ったが、訊ねることはしないでおいた。
「暇だねぇ」
「うん」
本当はやらなきゃいけないことがある。指定された本を一冊、読みきらなければならない。けれどどうにも部屋では読む気になれなくて、少年はわざわざ家を出た。
しかし暇であるという言葉に間違いはないのかもしれない。他にやることもなくなったので、暇を潰すためにここに来て、本を読む。
きらきらした不思議な光に子供の頃のように目を輝かせなくはなったけれども、青年はこのふわふわした光が好きだった。
「夕暮れまでだよ」
「うん」
細長い指が刃の上を揺蕩うように通りすぎる。ひどく魅惑に満ちていて、どこか禁欲的だった。青年は活字に視線を落としたが結局集中できなくて、途中からいつものようにふわふわと漂う光を目で追って、ぼんやりと過ごした。
青年は老いた。
「また来たの」
「うん」
それは真っ黒な衣装に包まれていた。まるで宵闇をそのまま切り取ったかのようだった。
「暇だねぇ」
「うん」
それは呆れたように笑った。
「夕暮れまでだよ」
「うん」
今日も彼は、小屋の外でぼんやりと過ごす。それは気まぐれに外にいたり、中にいたりする。
不思議な光はいつものようにふわふわと漂っている。
それはいつの日だったか忘れてしまった。
いつもてきとうな服を選んでいたから、季節感などとうの昔に失ったのだ。
けれども不意に、もうあれは来ないのだなと悟った。
ただその日だけは、あの光がふわふわと漂わなかったのだ。
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