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桜霞
2017-08-02 18:02:36
2792文字
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【創作審神者】気付くとどうにかしたくなるのが人間である【二次創作】
※腐った要素がちょっとだけある。
※なるほむだけじゃなくなってしまった。
※説明なんてない身内向け。
※大阪城は30階まで以下略。
※遅くなってごめんなさい。
※お待たせしました
あら、久しぶりねと笑った彼女に、お久しぶりですと返した時。
自分は、上手く笑えていたのだろうか。
「いいですか、何より重要なのは殿方の視線を常に自分に引き付けておくこと!そのためにはどんな努力でも推してするべしなのですよ!!」
聞いているんですかと目の前で母親役の藤崎尋位が熱弁する。聞いてますよと穂叢は片手で顔を覆いながら答えた。
横からは「あれは結構いじめるのが好きよ」ととんでもない爆弾を氷雨が落としてくる。顔に集まる熱に冷静さを悉く失いながら、何の話ですかと悲鳴を上げた。
「穂叢くんは肌も綺麗だし、どんなお化粧でも似合うと思うけど。妖艶なのよりは、可憐のがいいかもね」
「あの、おばさま、僕こう見えても男なんで、可憐とかそういうのは、」
「氷雨さま、私の子ですよ? たとえどんな化粧でも施されればそこらの生き物などころっと、こう、ですよ、こう!」
尋位は、手の中に見えない球でも持っているのだろうか、勢いよく手を動かしている。
氷雨はころころと笑って、そうですねぇと相槌を打つ。今日の母さん元気だな、と穂叢は何かを悟って諦めた。
久しぶりに彼らのペースに巻き込まれては、疲れがたまり恥ずかしい思いをする一方だ。わかっていたはずのことなのに防げなかったのはやはり年の功というものなのだろうか。言うと絶対に怒るので言わないが。
そろそろお昼の時間だから、と氷雨は報告書を置いて帰って行った。
今朝発生した緊急事態
———
一昔前では頻繁に起こっていたが、最近ではすっかりなりをひそめていたそれに、若い世代はすっかり慌ててしまったのだという。
以前のように「氷雨嬢に任せとけ」という穂叢の祖父の言葉により、八重畠家に連絡が入ったのが今朝のこと。
氷雨は特に驚きもせず、はいはいと頷いて、こんなのも久しぶりねと、少しだけ楽しそうに出陣したらしい。
相変わらずお元気だ、と穂叢は呆れに近い感情を抱いた。
まだまだ現役よと戦に出る彼女の姿は凛々しくもあるが、時にひやりとしたものを感じることがある。
以前よりも細くなった母親を見た時に感じたものと似ていることに、穂叢はとうに気付いていた。
有為転変は世の習い。時は容赦なく進み、絶対的に逆らえないそれは、ただ淡々とすべての時を進めていく。
変わっていなかったかと問うた時の成希の不自然な沈黙を思い出す。
穂叢は失うことに慣れていない彼の危うい心を想った。
八重畠家にお邪魔して、成希と一緒に藤崎家へ戻る。一通りの挨拶を済ませると、もはや恒例になった恋人いじめが始まった。
穂叢をからかい、成希を試して楽しむという、趣味の悪い大人達の遊びに数時間ほど付き合って、ふたりは再び八重畠の家に帰った。
「おかえり、ほむにい、成にい」
「姫ちゃん
…
!」
ふわりと笑う姫佳が、それまで蓄積されていた精神的負荷を霧散させる。ただいまと、穂叢は思わず姫佳に抱き着いた。
「わ、ちょっと」
「俺も」
「お前もか!」
引き剥がすかと思えば穂叢ごと抱き着いてきた兄に、さしもの姫佳も声を荒げた。
屋敷が山側にあって夜はだいぶ涼しいとはいえ、今は夏なのだ。それなりに暑い。
「はー、やっぱり女の子って癒されるねぇ、成くん」
「つかれた
……
」
「えっなにそれ、ちょっとなるにいマジで疲れてんの? 嫁さんの実家行くのってそんなに疲れるの?」
「もはや僕たちを癒せるのは君だけだよ姫ちゃん」
「はー
……
」
「だめだ相当参っちゃってるよこいつら」
仕方ないなぁとされるがままの姫佳に、ふたりはぐでんと寄りかかる。
しょうがないからしばらくはこのままでいさせてやろうかと嘆息しかけて、あ、と姫佳は声を上げた。
「ねえ、今から花火なんだけど」
「あ?」
「花火。短刀達が久々に実家に帰省する私達をだしにしてねだりにねだって買ってもらったんだって」
もう晩御飯の時からすごく楽しみにしてて、と姫佳は若干遠くを見た。どれだけ楽しみにしていたのだろう。あの蒲桃が果てには呆れる程である。
「まぁ、うちは娯楽が滅多にないからな」
「というわけで楽しみにしてたことにされてる花火をしに行こう」
「そうだね
…
短刀達の笑顔に癒されに行こう」
「ほむにい私の話聞いてた? ねぇ大丈夫? 大丈夫じゃないね?」
二人が腕を離さないので、姫佳は彼らをそのままに、重いなと文句を言いながら広間を通って縁側に出た。
庭では既に花火大会が幕を切っておろされており、短刀達が突然足元を走ったネズミ花火にきゃぁと歓声を上げた。
絶対鶴丸だな、と三人は同時に同じことを思った。
「あら、仲良しさんね」
浴衣を着た氷雨が、お帰りなさいと笑う。それまで短刀に袖を引っ張られていた蒲桃が、やれやれと言った体で三人とすれ違った。
「あっ坊、おかえりなさい! しゅうとめいびりはいかがでしたか?」
「今剣!」
わはは、とどこからか盛大な笑い声がする。短刀に引っ張られて、三人はようやくばらばらになった。
穂叢の腕の中には隙ありとばかりに五虎退の虎が群がる。今剣が成希の肩に居座った。姫の手は厚や秋田が引き、それを打刀や太刀が近くで見守っている。
色とりどりの火の粉が、火薬の独特の匂いと共に勢いよく弾ける。わぁ、と歓声がいくつもあがった。
誰かがおどけて、笑い声が響く。こら、と時折怒声が飛ぶ。
不意に、成希はこちらを微笑んで見守る両親を見た。氷雨は蒲桃に体を預け、蒲桃は優しく氷雨の肩を抱いている。
遠くはない。けれど、近くにいるわけでもない。
咄嗟に手を伸ばしそうになって、体が動かなくなる。
二人の眼には、幸せの、優しい、あたたかなものしか映されていなかった。
「成くん」
そっと、呼ばれて、振り返る。
穂叢が、花火を差し出した。
「やっぱり、皆といるのって、いいね」
受け取った花火が、勢いよく輝く。
胸が締め付けられて、成希はそっと目を伏せた。
そうだな、と掠れる声でどうにか返す。
皆がいる。
以前とは、変わってしまった。自分の知るものでは、なくなったかもしれない。
それでも、大切なものが、すべてここにある。
いま、この瞬間には。すべてが揃って、ここに在るのだ。
「
———
そうだな」
苦しい。けれど満ち足りている。
泣きそうだ。けれど幸せで、嬉しい。
そうだなと、何度も何度も噛みしめる。
火花が消える。静かに闇が舞い戻る。
「あーあ、終わっちゃった」
「なんの、まだまだありますよ!!」
勢いよく、今剣が肩から飛び降りた。誰かがまだやるのかと呆れて笑いだした。
なんとも言えない、満ち足りた空間。
いつかは終わる。それでも。いや、だからこそ。
「成くん、どれ選ぶ?」
「ふむ」
難しく考えたところで、意味がないのだ。
にやりと笑う。
色の付いた火が、歓声と共に再び花を咲かせた。
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