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桜霞
2017-08-02 17:58:19
3347文字
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【創作審神者】しばらく見なかったものを改めてみると気付かされることがある【二次創作】
※審神者詐欺です
※腐った要素がちょっとだけある
※なるほむかと思ったらなるほむだけじゃなくなってしまった
※ちゃんとした説明なんてない身内向け
※遅くなってすいませんでした
※大阪城は30階まで行ったよ
最寄駅から、バスで30分。そしてさらにそこから徒歩で15分。
都市部と呼ばれるそこから少し離れた土地に、八重畠家の屋敷は居を構えていた。
和風の門構えは、この時代となっては本当に珍しいものになっている。とはいえ作られたのがごく最近のため、指定文化財などには登録されないと知って少しだけ残念だったのは自分だけの秘密だ。
インターホンを押すと、聞き慣れた声が「はーい」と返事をするより早く、玄関の向こうからどたどたと賑やかな足音が響いてきた。
ぱぁん、と勢いよく擦り硝子の引き戸が開け放たれる。
「なる!!」
「坊!!」
「おかえりなさいっ!!!」
とんでもない勢いで突撃したり、飛びかかってきた短刀達を何とか受け止める。
「薬研、久しぶりだな!」
「おう。元気にしてたか、厚」
がしりと手を組んでじゃれるふたりは、見た目に反してとても男らしい。
一方成希には、彼がそう簡単に倒れなくなったのをいいことに、肩には今剣が、懐には信濃が、腰には五虎退がとまとわりついており、大人気だ。
「成にい、おかえりー」
「おぉ」
顔だけ出した姫佳が、少しだけ笑って、すぐに引っ込んだ。少し見ないうちに、随分大人っぽくなったものである。
「こら! お前たち、そろそろ離れんか!」
眦を吊り上げて怒鳴る長谷部に、何人かはきゃぁと悲鳴を上げて飛びのいた。ついでに成希から鞄をかっさらい、それを盾にしながら屋敷へ駆け込む。
「履物は揃えろ!!」
「ぼくがそろえてあげましょう!」
得意げに、今剣が成希から飛び降りた。ようやく身軽になった成希は、小さく嘆息する。
「申し訳ありません、若。どこか痛めたところなどは」
「ない。ただいま」
「はい、おかえりなさいませ!」
ぱ、と長谷部の顔が明るく輝く。
成希は、ようやく、およそ半年ぶりの実家に足を踏み入れた。
楽な浴衣に着替えて、成希が広間に戻ると、すでに昼食の準備が整いつつあった。
「あぁ、成にぃ、おかえり。あれ、さっきも言ったか」
「言ったな。ただいま」
「はいこれ」
「おう」
成希に器を押し付けて、姫佳は慌ただしく勝手場に戻っていった。以前よりも、体がすらりと引き締まっている気がする。
これ以上見ていたら小狐丸にどやされるなとふと思い立ち、成希は器を空いている場所に置いた。
「おゥ、帰ってたのか。おかえり」
「あぁ、ただいま」
「穂叢はどうした」
どっこいせ、と定位置に父親が座る。久しぶりに見るその姿に、成希は内心で首を傾げた。
「あいつはあいつの実家に帰ってるが」
「後で行くのか?」
「まぁ、行くには行くが。先にこっちに来ると言ってたからな」
「そうか。母さんがいつになく楽しみにしてたぞ」
「嘘だろ」
「本当だ」
赤い隻眼は伏せられ、手元にあった新聞をばさりと広げる。
なるにい、と姫佳の声が響いた。短刀達が自分の分の皿をもって広間に入ってくる。
入れ替わって勝手場に入った成希は、ガラスのコップが並べられた大皿を持たされた。
「それで、ほむにいはいつ来るの?」
「明後日だ」
「母さんが楽しみにしてたよ」
「
……
親父に聞いた」
げんなりとした表情を気配で感じたのか、火を止めていた光忠が吹き出して、肩を震わせた。成希はため息をこらえられない。
母が穂叢を歓迎してくれるのは喜ばしいことだ。素直に嬉しいことだし、感謝すべきだと思う。
しかしそれとこれとは話が別だ。母は突拍子もない方向に物事を楽しむ傾向がある。直接的に言って、他人に恥をかかせることに躊躇が存在しないのだ。
「まぁでも、お父さんが止めてくれるんじゃない?」
「だめだ、あれは嫁に甘い」
「うん、だからね、なるにい」
光忠の言葉を、成希は即座に切り捨てた。最後にお茶を注ぎ終わった姫佳が、空のペットボトルを豪快に潰す。
「私も、超楽しみにすることにしたから!」
「
…………
」
なんともいい笑顔で味方はしねえからなと叩きつけた妹に、成希はとっさに言葉を返すことができなかった。
食べ終わる者がちらほらと出てくるタイミングで、朝から出陣していたらしい母が帰陣した。
ここでも成希は内心で首を傾げた。
先ほどから感じる違和感は何だろう。幼い頃から見知っている刀剣男士は、気持ち悪いぐらいに変わっていないのに。
庭に面する夜の縁側で、両親は夜酒と洒落込んでいる。相変わらずの夫婦っぷりで、成希は部屋に戻ろうかと奥の階段へ向かった。
計ったかのように、固定電話が鳴る。成希は躊躇わずにそれを取った。
「はい、八重幡です」
『あ
…
成くん?』
「、ほむか」
少し驚いた成希は、何度か目を瞬かせた。いつもならスマホに連絡を寄越すはずである。そこまで思い至って、成希はあぁ、と穂叢に謝罪した。
「すまん、今日はずっと下にいたんだ」
『あ、やっぱり、そうだったんだね』
「連絡、忘れてた」
『もー。ちょっとだけ心配したんだからね』
すっかり安堵した声で、穂叢がくすくすと笑う。きっと、いつものように、蕩けるような笑顔を浮かべているのだろう。
そして後で誰かに見られていたのに気付いて、恥ずかしがって真っ赤になるのだ。
すまんと謝りつつ、壁に背を預ける。それで、と穂叢が話を続けた。
『どう? 久しぶりの実家は。姫ちゃんとか、八重幡のおじさまとか、元気だった?』
「あぁ、
…
」
変わっていなかったと告げようとして、ふと言葉が詰まる。
本当に、彼らは変わっていなかっただろうか。
『
…
成くん?』
うかがうような穂叢の声に、目を伏せる。
「
……
そういえば、姫が、化粧しててな。綺麗だった」
『ほんと? あぁ、それで母さんとおばさまがお化粧品の話をしてたんだね。あっそう、おばさまが今日うちにいらしたんだよ。聞いてなかったからびっくりした』
「あぁ、急な出陣だったらしいな」
『すごいよね、おばさま。若いのにはまだまだ負けないわって言われちゃった』
僕も頑張らなきゃ、と穂叢が意気込む。無理するなと言うと、わかってるよ、とどこか拗ねた口調で彼は口ごもった。
きっと唇を尖らせている。容易に想像できて、成希は小さく微笑んだ。
『あ、歌仙に呼ばれた。もう行かなきゃ
…
じゃぁね、成くん。また明後日』
「うん。おやすみ」
『おやすみなさい』
最後にリップ音だけを不意打ちで響かせると、成希は受話器を戻した。
縁側では、まだ両親が酒を楽しんでいた。つまみの量は減っている。
変わったと、思う。
母の目元が優しくなった。父の纏う雰囲気が柔和になった。その動作が、以前よりゆったりとしている。
そして前よりも、小さくなった。
握りしめた拳に、力が入る。
たとえ依然とその実力を保持し続けていても。たとえその強さは変わらず顕在していたとしても。
「
———
坊」
「、」
思わず息を呑む。いつの間にか、岩融が近くで静かに微笑んでいた。
「上に来い。共に飲もうぞ」
「
…
」
「袖にされた者同士、語ることのできる話も多かろう」
岩融の言葉に、知らず、体が強張る。眉間にしわが寄り、俯いてしまう。
彼は苦笑して、嘆息した。
大きな手が、優しく肩を叩く。
「なに、まだ遠い話さ。それに、最期までふたりがいいと互いに望んでいるのは今更な話よ」
「
……
」
「ん?」
優しい声音だった。はく、と口が言葉を紡げず、空気だけを吐き出す。
「
………
おれ、は。
…………
なにも、
……
」
口を噤む。息だけを吐きだして、成希は階段に足をかけた。
「酒は、今度な。ありがとう」
「おう。おやすみ」
「おやすみ」
以前まで使っていた自分の部屋は、どこかよそよそしく感じるかと思えば、そうでもなかった。
多少狭いなと感じる程度で、懐かしさを覚える。
見上げる天井は、いつもより近い。目を閉じて耳を澄ませると、刀剣の部屋から賑やかな声が時折聞こえる。
暗い部屋で、頭の中を巡るのは、両親の姿。そして、それに対してどうすることもできずに、ただひたすら己の感情を持て余している、自分。
「
………
」
こういう時は、彼に会って、楽になりたいのに。
おやすみ、という優しい声音がよみがえる。
「
…
おやすみ」
吐息交じりに呟いて、成希は意識を深く沈めた。
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