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かいえ
2025-01-26 00:01:54
3467文字
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【タケミチ愛され】東京卍會の不文律 ③
本誌第277話を見て堪らず書いたお話
総長代理だから相談役みたいな代理みっちを書こうと思ったのですが、出来上がりは全然違うものに…
幹部からのみっちへの愛が重過ぎて、モブが近寄れず相談役にするのを断念しましたやつです
モブ視点
3,464文字
「この間は、ごめんね。怖かったよね」
俺の前にココアを置いた花垣さんがいきなり謝ってきたから「いえ、とんでもないです!」と、即座に返した。ちなみに、花垣さんの言うこの間というのは、学校帰りに怖い幹部連中に連れ去られ、もっと怖いマイキーさんに「どうやって死にてぇ?」と、凄まれた件のことだ。花垣さんは申し訳なさそうに謝ってくれるけれど、俺のピンチを助けてくれたのは花垣さんなので、お礼を言うなら俺の方だと思っていた。
俺は花垣さんの部屋にいた。
というのも、俺が花垣さんの直属の部下になったので、懇親会をしようと誘われたからだ。花垣さんの部屋に通されてすぐに「楽にして」と言われたけれど、総長代理の部屋で楽になんて出来るわけがない。この部屋に入れるのは幹部と一部の人間だけだと聞いていたから、余計に緊張していた。
そういう訳で、がちがちになって正座して座るオレを見て「真面目なんだから」と、花垣さんはクスリと笑った。
この間もそう思ったけれど、花垣さんの微笑みは本当に花が綻ぶように可憐で可愛らしい。直属の上司に可愛らしいはないかもしれないけれど、本当にそう思ってしまうのだから仕方がない。
「熱い飲み物は苦手だった?」
花垣さんに話しかけられて、俺の身体が勝手にびくっと反応した。俺がココアに手を付けないので、気にしているのだとハッとする。
「すみません。全然大丈夫です」
俺は慌ててココアに手を付けた。ココアは程よい温かさになっていて飲みやすかった。
「旨いです」
「そっか、じゃあ良かった」
花垣さんが自分の向かいに座っていることが信じられなかった。しかも花垣さんのプライベート空間に足を踏み入れているのだ。これがドキドキせずにいられるだろうか。
「キミは何か趣味がある?」
「俺ですか? 言えるほどの趣味はないです」
「そうなんだ。俺はね、ジグゾーパズルをするのが趣味なんだ」
「ジグゾーパズルですか?」
「そう、やってみる?」
机の上に置かれたのはやりかけのジグゾーパズルで、結構大きいサイズのものだった。返事をする前に「はい」と、ピースと完成図を手渡された。パズルはしたことがあるけれど、幼児の頃で、しかも100ピース以下のものしかやったことがない。花垣さんの勧めてくれたパズルは1000ピ-ス以上の大作で、渡されたピースと完成図をじっくり見ても、どこに置くものか全く分からなかった。他のピースを見せてもらっても形は違うけど同じ色のものがあったりして、やはりどこに置いて良いのか見当もつかない。
知らず知らずの内にでた唸り声を聞き「難しい?」と、花垣さんはにこにこしながら尋ねてくる。俺は正直に「はい。全然分からないです」と答えた。
「それで大丈夫。だんだんコツがつかめてくるから、ゆっくりやってみてよ」
そう言って花垣さんは、持っていたピースをすっと嵌めた。俺は何度見ても分からなかったけれど、花垣さんが次のピーを悩みながらも比較的早い時間で台の上に置いていくのを見守った。机を挟んで向かいあってパズルを一緒にしているいう行為が、自宅デートをしているみたいで、俺の胸をドキドキさせる。目の前にある癖毛の金髪は艶やかで潤いがある。花垣さんと同中で美容師志望の千堂さんが染めていると聞いた事があったが、だとしたらかなりの腕前のようだ。市販のカラー剤が買えずオキシドールを使用した髪とは違い、全然ダメージが無いのだ。
「そういえば、どうして東京卍會に入ったの?」
花垣さんは視線を上げずに、入隊理由を尋ねてきた。俺がパズルではなくて、花垣さんを見ていたのがバレたのかとドキドキする。
「あ
…
それは
…
」
言えなくて口籠る。憧れの本人を前にして「マイキーさんの横で戦う花垣さんを見て憧れて東京卍會に入隊しました」なんて、恥ずかしくて言える訳がない。
「内緒にしてるの?」
花垣さんが顔を上げた。目と目が合って、心拍数が上がるのを止められない。
「いや
……
その
……
」
「なになに? 」
ずいっと身体を机の上に乗り出してきた花垣さんの瞳は悪戯っ子のようにキラキラと輝いていて、とても直視出来るものではない。
「気になるじゃん。教えてよ」
そう言って、小首を傾げる花垣さんは可愛いが過ぎた。
この人、小悪魔過ぎる。マイキーさんを始め、幹部の大半は花垣さんの魅力にやられてしまって、まともな意思決定ができないほど骨抜きにされているのが、その証拠だ。俺はその魅力に耐えられず後ろ向きに倒れ、後頭部を本棚にしこたまぶつけた。
「大丈夫?」
「いてて
……
」
後頭部を撫でながら起き上がろうとしていた俺の元に花垣さんが駈け寄ってきていて、優しく背中を支えてくれた。
「ケガしてない?」
「そんなにひどくぶつけてないですから」
俺がそういうと、花垣さんはホッとして息を吐いた。花垣さんにの甘い吐息が顔に当たり、俺は花垣さんに抱き留められていることに気が付いた。さっきより遥かに近過ぎて、頭にカッと血が上った。
「あのですね、マイキーさんの横で戦う花垣さんを見て東京卍會に憧れて
……
入りました」
恥ずかしかったけれど、その場の勢いで伝えると、花垣さんは一瞬驚き、すぐに破顔した。それは、魂を肉体に留め置くのは難しいレベルの笑みだった。
「マジで? マイキー君じゃなくて、俺なの?」
俺がこくこくと頷くと、花垣さんは「嬉しいけど、めちゃくちゃ照れるちゃうね」とはにかむ。なにもう、この可愛い生き物。存在が罪だと思った。
「オイ、タケミッち!」
そこへバンと勢いよく扉を開けて現れたのは、副総長のドラケンさんで、手に可愛い紙袋をさげていた。そのあまりの突然の登場に、俺は息が止まりそうになった。
副総長ともなると、好きな時に総長代理の部屋にやって来て、ノックもせずに入ってこられる関係なんだとびっくりしたのだけれど、それはドラケンさんも同様だったみたいで、冷静沈着なドラケンさんが、見たことがないくらい驚いた表情を浮かべていた。
「
……
そいつは誰だ?」
俺は急に間男のような心持ちになった。この人もやっぱり花垣さんに夢中なのだろうかとドキドキする。こんな大型巨人みたいな人に殴られたら一発で死んじゃいそうだと、さっきまで真っ赤だった俺の顔は、一瞬で蒼ざめていた。
「この子は俺の直属の部下だよ」
「直属の部下? ああ、この間マイキーたちが拉致ったヤツか」
「そうそう。みんながうるさいからそうしたんです」
「悪かったな。幹部連中が暴走しちまって」
ドラケンさんが俺に向かって頭を下げたから、俺は畏れ多くて立ち上がって背筋を正した。
「いえ、そんな。俺、何とも思っていないので!」
本当は色々思っていたけれど、東京卍會のナンバーツーであるドラケンさんに、そんな風に謝られたら座ってなどいられなかった。
謝り方も堂に入っていて、さすが、東京卍會の心と称されるドラケンさんだと思った。こんな下っ端の人間にもきちんと頭を下げてくれるその潔さは、不良が憧れる仁義の男の姿そのままだ。俺は感動して泣きそうになっていた。あのイカレタ幹部の人たちと同じ分類に入れてそうになってすみませんでしたと、心の中で土下座する。
「そうだ、ケーキを持って来たんだ。食べないか?」
ドラケンさんが持っていた紙袋を花垣さんに渡した。あの中身はケーキだったのだと知り、そういう俺は何も持って来なかった事を恥じた。
「やった!」
無邪気に喜ぶ花垣さんを見るドラケンさんの眼差しは優しく、俺は見ているだけでドキドキしてしまった。
「じゃあ、準備してくるね。ドラケン君も楽にして待っててよ」
そう言って花垣さんは立ち上がり、階下にお皿などを持ちに行ってしまった。そうして、部屋にはドラケンさんと俺だけが残された。途端、その場の空気がグンと重くなった気がした。まるで地球の重力が変わったみたいに重い。
「おまえさ」
ドラケンさんの声は、先程より一オクターブは下になっていた。その眼光は鋭く、こんなドラケンさんと遭遇したら、拳を交わす前に回れ右をして一目散に逃げだす不良の気持ちが良く分かった。
「直属の部下になったからって、タケミっちとダチみたいな距離感でいたら、殺すから」
ドラケンさんは苦々しそうに、眉間に皴を寄せそう言ったから、ドラケンさんも他の幹部と変わらないのだということを俺は思い知り胃の辺りがぎゅっと痛くなった。
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