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溶けかけ。
2025-01-25 22:59:49
872文字
Public
ほぼ日刊
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黎明
朝が嫌いなフリーナのお話。
終幕後、パレ・メルモニアを出てすぐの頃のイメージです。
朝が来ると嫌でも思い知らされてしまう。
この国
……
いや、この世界にとって、自身が誰にも必要とされない存在であることを。
ぴっちりと閉じられたカーテンからは、それでもしぶとく隙間を狙って、朝日が入り込む。太陽が上へと昇っていくのに合わせて、硝子一枚を隔てた向こう側が騒がしさを増していく。小さな子どもたちが無邪気に駆ける音や暇を持て余した淑女たちの嘘を含んだ囀りがやけに耳に障った。
誰もがみな、自分の役割に忙しく、狭いアパルトマンの一室で胎児のように丸くなる元水神のことなど気にも止めずに日々を過ごしていく。その事実をつきつけられることは、今のフリーナにはとても耐え難いことだった。
こんなことなら、あの部屋にいれば良かっただろうか──。
耳を塞ぎ、パレ・メルモニア最上階のスイートルームを頭に思い浮かべる。喧騒も届かないあの場所は唯一の砦でもあったのだ。
(
……
いや、あそこは僕には相応しくない。そもそも僕が居てはいけない場所だったんだ)
首を激しく左右に振る。神の為に用意された場所も物も人もパレ・メルモニアに存在する全てのものが今のフリーナには手に余る代物だった。だからこそ、逃げ出したのだ。神という役割すら失い、一介の人間に成り下がった嘘つきに絢爛豪華な箱は必要ないと思ったのだから。
また、寝返りをうつ。
寝ても覚めても視界を満たす水の幻覚は消えることはなく、そもそも朝なのか夜なのか曖昧なときすらある始末だ。
意識を水中の海月のように揺蕩うフリーナが唯一、認識出来る時間の境界が朝日であり、人々が立てる大小様々な波のような営みの音であった。
役割も与えられずただひたすら、無為に日々を過ごすことを咎めるために用意された舞台装置のように感じてしまう。
耳栓をした上から耳孔を手で塞ぐと、毛布を頭から被る。幸いにも、役割を持たぬフリーナを訪ねてくるものはどこにもいなかった。
毛布を挟んで明らんでいく光を眺める。そして彼女は今日も呪詛を吐く。
「ああ、もう
……
」
──朝なんて、来なければいいのに。
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