haruon1018
2025-01-25 22:18:56
4302文字
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第154回お題「交換日記」

現代パロディー
有名文学賞作家兼乙女小説作家のmr君(+謎のコメント主)✕少女漫画家のtksgさん
ペンネームはどうにかひねり出しました。
抹茶♡モナカ→侘び寂びこれしか思いつかなかった
綺羅星麒麟→なんか中性的な感じにしたくて
#長晋ワンドロライ

前略、高杉晋作は少女漫画家である。
 晋作という名前の通り男ではあるが、少女漫画を書いている訳は単純に可愛い女子を描きたいからだ。
 女の子を描きたいといっても高杉が描きたいのはあくまで可愛い女の子が恋をして結ばれる甘い話が描きたい。
 世の中には美少年萌え、男女問わずメカクレにしたいなのど己の癖を極めた多様な漫画家がいるのでその中の一部だと思って貰えれば良い。
 女の子が格好いい男にキュンとして恋に落ちる、そして結ばれるとオーソドックスな話を描いてきた高杉だが実を言えばここ二年ほどスランプに陥っている。
「高杉社長、いい加減、連載とは云いませんが短編でも描いてくれませんかね」
「ネタがない、いや、ネタならあるのだけど、どうもね」
 歯切れの悪い返事に編集者の阿国はため息をつく。
「どうせネットでこんな話はどう? とか聞いて、マンネリ乙とか云われたんでしょ」
「どうしてそれをああ、そうだよ僕の描くヒーローはいつだってワンパターンだよ」
 高杉のスランプの原因は、ヒロインは性格も見た目も様々な女の子が描けるのに、ヒーロー、彼女たちが恋する男がいつもワンパターンなのだ。
 月刊誌で連載を三回、中堅漫画家の仲間入りを果たした高杉に求められるのはヒロインは勿論、意外性のあるヒーローなのだ。
 男だから友人などをモデルに描けるのではないかと思うかもしれないが、某歌劇団を筆頭に夢見る乙女は理想的な男性を求めるので、リアリティーがありすぎるのもダメだ。

 そもそも高杉は月刊誌デビューを狙っていたわけではない。元々はインディーズ、ネットを使って細々と漫画を公開していた。
 今はSNSや複合型イラストサイトで漫画やイラスト、小説を公開するのが主流だが、その前は個人でサイトを持ちそこで自分の作品を公開していたものだ。
 そんな高杉がデビューしたきっかけは、「謎の天才少女がアラハバキを乗りこなし敵をやっつける」という少年漫画と少女漫画を混合させた作品が、たまたま出版社の目にとまり、雑誌で掲載、そのままその作品はアニメ化となり、高杉は一躍トップ漫画家となるはずだったが、デザインや脚本に監修することはあっても基本的にはアニメ会社任せだ。
 それでもデザイン修正や同時に別の漫画を描いていて多忙なときに、納税と言う言葉が高杉を襲ってきたので、面倒くさくなり会社を立ち上げた。
 アニメ化した作品が続く限りは安定した収入があるが、描かない漫画家を置いてくれるほど出版社は甘くない。
「春風ちゃんのときは勝蔵君とうまくお付き合いできたのに、自分のヒーローになるといまいちヒロインを生かしきれてなのですよね」
「あれは勝蔵君のリードがうまかったから、阿国君も読んでいたの」
「編集者として作家の作品を読むのは当たり前のこと……実を言えばファンでした」
 三回目の連載の途中で担当になった阿国はその前までは可愛らしい顔に似合わず歌舞伎雑誌の編集をしていたようだ。
 どうやら実家に縁があるらしい。
「そうか、懐かしいな」
 春風ちゃんとはデビュー前、サイト内の作品のヒロインの一人で天真爛漫なピンクの髪をした少女だ、高杉は春風ちゃんになりきって彼氏を募集してみた。
 週に一度ブログで春風ちゃんになりきって、あれこれ趣味の話などを盛り込むと読者が反応し、コメントをくれた。
 その中に一人、春風ちゃんに律儀に毎回コメントをくれる人がいた。
 それが勝蔵君だ。
 そんな彼とのやりとりがいつしか人気となり、ブログとは別に掲示板を作り二人で交換日記のような形でやりとりをすると、いつしか人気のコンテンツとなった。
 そんな春風ちゃんと勝蔵君であったが、突然勝蔵君が「受験があるから、春まで待って欲しい」と別れを告げられ終演した。
 本当に勝蔵君が受験生かはさておき、高杉も丁度、アラハバキをきっかけにデビューが決まり、忙しくなったのと丁度サイトと複合型イラストサイトとの入れ替わり時期だったので、心機一転、引っ越すことにした。
 勿論、勝蔵君が続けたいと思えば続けるつもりだったが、あれは別れの挨拶だったようで自然消滅した。
「そういえば、ティーン向けの小説部門の方でどうしても高杉社長に挿絵ではなく、漫画を描いてほしいという方がいらして」
「よくあるコミカライズ?」
「ではなく、自分はあくまでストーリーを考えるだけで後は先生が好きにしていいと」
「へぇ、変わった先生だね、名前は?」
「森……いえ、抹茶♡モナカ先生です」
「可愛い名前だね」
「社長だって、綺羅星麒麟でしょ、盛りましたね」
 本名でも別に良かったのだが、なにかペンネームをと頼まれ付けたのがこの名前だ。
 サイン会は病弱を理由にしてない上に、懇親会にも参加してないため阿国と一部の関係者以外、高杉の性別を知らない。
 中性的な名前から時々、性別についてネットで議論を交わされているが高杉は何かあるまで秘匿にするつもりでいた。
「いや……それで抹茶、なんだっけその先生の作品を読んでみないことには答えられない」「そう思って何冊か先生の作品を持ってきました」
 準備が良い、どうせスランプ中だと高杉は件の小説家の本を読むことにした。
 *
 結論から言えば、抹茶♡モナカ先生は勝蔵君である可能性が高い。
 漫画家に癖があるように、小説家にも癖がある。
 その癖が二人ともよく似ていた。あと一人、有名な作家も彼らに似ていたがジャンルがあまりに違いすぎるから偶然だろう
とにかく、勝蔵君となら面白い作品が描けそうな気がする。
 しかし、問題は、性別だ。
 ネット時代を通して高杉は性別をあえて公開していない。どうしても性別を後悔するとフィルターがかかる物なので、クリーンな状況で楽しんでほしいという高杉の願いからだった。
「抹茶♡モナカ先生のコラボ、引き受けたいがその先生は僕の性別を知らないだろう。もし僕が男だと知っても描いてほしいなら、喜んで描くと伝えてくれ」
 勝蔵という名前は男そのものだが、抹茶♡モナカは女性的だ。男か女は高杉には関係ないが、向こうにはあるはずだと高杉は阿国にそう伝えた。
 四年年間、メッセージがないのに何故という疑問よりも高杉は単純にまた勝蔵君に会えるかもしれない嬉しさで一杯だった。

 それから三日後、勝蔵君こと抹茶♡モナカと会うことが決まった。
 今時はネットでやりとりできる、何より勝蔵君だとしたらネットが初めてだったはずだと思いながら、会議室の一室で高杉は待たされた。
 珈琲を飲みながら勝蔵君のことを考えていると、屈んで部屋に入ってくる屈強な男に高杉は思わず不躾にも彼をじっと見つめてしまった。
 その後ろに阿国が付いてきているのをしばらく気づかずにいると、二人が座る。
 まさかこのタイミングで担当替え、いやそこいる筋肉質の男性は編集者よりもバスケや野球で活躍していそうなほど良い身体をしているぞとぐるぐる頭を回していると、男性が自己紹介してきた。
「初めまして、抹茶♡モナカ、」
「あっ抹茶♡モナカ先生のお兄さん?」
「最後まで紹介させろ、本人だ、です」
 そう言って頭を下げた男性に高杉は声を出さずに驚いたことを褒めて欲しい。
 性別で作家の作品の善し悪しを決めるのはナンセンスだ。
 だが、ペンネームの間にハートを入れるようなキャラだとは思えず高杉が戸惑っていると、ふと思い出した。
「森長可先生? なんとか川賞取った、」
「ああ、そっちで名乗った方が早かったか……ですか」
「敬語は良いよ、そうかなんか似ていると思ってはいたが、なるほど」
「あっ高杉社長、どうか内密でお願いします……失礼、コールが」
 阿国が部屋を出ると、出逢ったばかりの作家と二人きりになった。
「分かるものなのか」
「どうだろうね、ジャンルが違うからバレないのじゃない」
 森長可は最高文学賞を最年少で取った高校生で一時話題になった。
 雌蝶に目を灼かれた毛虫が蛹、蝶と変化し最後は蝶と一緒に蜘蛛の巣に落ちるというグロテスクかつ官能的な話は、高校生が描くべきではないと批判する評論家もいたが高杉の評価は、自分にはない才能がある、後正直、雌蝶になる夢を見た。
「ほーん……どうした?」
「いや、その君が僕のかつてのパートナーでないかと思ったのだが若すぎるなと思って、」目の前にいる森君は確か、十八か十九歳の大学生だ。
 彼の文才なら森君=勝蔵君という数式も成り立つが、だとすれば春風ちゃんを口説いていたのは、中学生ということになる。
「そのパートナーしか知らないことをきいてみろよ」
「パスワード……八桁の数字」
「15581839」
「即答かよ、正解だよ、勝蔵君……
 二人にしか分からない他から見たらデタラメそうな数字を森君はさらりと答えた。
「おう、本人だからだ、で、綺羅星、高杉先生はオレの話描いてくれるんだよな」
「描きたいが、君これだけ才能あるんだ自分で書いた方が早いだろ」
「春風ちゃんは高杉先生しか描くことは出来ない、オレは勝蔵しか動かせねぇし」
……そうかもしれない、けどなんで今更」
「高杉先生の作品全部読んだけど、春風以上の女がどうしても見つからないで、何でかと思って勝蔵がいないからだと思った、それに……
「春風のこと好きでいてくれるのは嬉しい、僕も勝蔵君が好きだよ」
「先生って本当に聞かねぇな、けど、春風もそそられたけどそれを描いてるのは高杉先生だろ。で、どっちが好きか考える時間が欲しくてモヤモヤしていたときに大殿が重いの丈、作文用紙にぶつけたら解決するぞと描いたら、しらねぇうちに応募されていた」
「ん? 君を推薦したのって織田先生だっけ」
「おう、親父の知り合いでな。けど、分かんねぇままだけど、すっきりはしたから今度は、春風のこと思って描いたら、面白いペンネーム付けられていた」
「え? 抹茶♡モナカの作品が春風のことなら、君自身の名前で描いたのは」
「テメェだよ、先生」
 嘘だろうと今度こそ高杉は声を上げて驚いた。
「なんでそこで驚くんだ」
「だって君あんなの告白しているようなものだぞ、」
「告白、オレ先生のこと好きなのか」
……いや落ち着け、いいか森君、まずは交換日記から始めよう」
「なんだよ、それ」
「春風と勝蔵君はそうやって知り合ったのだから。まずはそこからだね」
 高杉はどうにかこの面白い青年から逃げようか、それとも蝶になろうかは交換日記で決めることにした。