2025-01-25 19:16:53
1137文字
Public 小説ネタメモ
 

夜の市(草稿)【pixiv公開済み】

最終日
夜1時まで帰らないエリオット
他には誰もいない
故郷って言っていたのは必ずしも場所を指しているんじゃなくて、人(牧場主)と出逢えた、人のことを指してるんだろうなと思う

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24466435

やあ、まだ居たのかい?いや、何も帰れって言っている訳じゃないよ。自分一人だと思っていたから驚いたんだ。

夜の市は今日で最後だからね。名残惜しくなる気持ちはよく分かる。僕ももう少しだけ、この冬の風物詩の煌めきを目に焼き付けておこうと思っていたんだ。邪魔でなければ、君の隣に居ても良いだろうか。
……ありがとう。

君は三日間、欠かさず来てたのかい?
そうか。寒い中大変だったろう。
ああ、確かに、ルピニが直々に絵を売りに来ていたし、他にも掘り出し物がありそうだ。僕も色々と見て回っていたよ。


明日から、この船団はどこに行くんだろうね。この町で開かれる催しは今日で終わりだけれど、彼らの旅は続いていくんだ。フェーンギルやゴトロだけじゃなく、もっと広い世界を旅するんだろう。そして、来年またペリカンタウンに来るまでの間途切れること無く、停泊した先々からまた次の町へと旅立っていく。

僕の家はすぐそこにあるのに、何故だか置いて行かれるような気分になるよ。外からこの町に来ているのは彼らの方なのにね。


君より1年長くここに住んでるのに、置き去りにされると思ってるなんておかしな話だと思うかい?
……実を言うと、ずっとそんな気でいるよ。何処にいても落ち着かなくてさ。

僕の出身はスタデューバレーでは無いから当然かもしれないが、ズズシティに住んでいた時も、地元に居た頃もそうだった。言い様の無い居心地の悪さを感じて、
「自分がいるべき場所はここなのか?」
常に自問していたように思う。

まあ、自分なりの答えは出ているよ。詰まるところ、自らの望みが果たせていないと全く違う場所に行きたいと願う、逃避への憧れがあるんだろう。世界を旅する彼らを羨ましく思うのも同じ。
ペリカンタウンに来たのも、誰も知らないところに行きたいと思って引っ越してきた覚えがある。

今は、前よりはだいぶマシだね。慎ましい暮らしだけど、小説家になる夢を追えているから。

でもきっと、この思いは一生付き纏うんだろう。彼らの生活はとても自由に見えるけれど、何ヶ月も海の上を漂う生活は、僕に言わせれば人生と同じだ。決まった終着点なんて……どこにも無い。

君は、おじいさんの牧場を引き継いだんだったね。僕にもそういう縁があれば良いんだけれど、なかなか難しいね。
いつか、命が尽きるその時までに、どこか拠り所になるような場所を得られるだろうか。


ああ、もう船の灯りを消し始めてるね。君もそろそろ帰るといい。あのローブの男が家に返してくれると言っていたよ。
……これで足りるかな。いや、受け取ってくれ。遅くまで付き合わせて悪かったよ。


またこうして話してくれたら嬉しいよ。
夜道には気を付けて。